いつもいく床屋さんでの床屋談義。今日の話題は先日の地震についてでした。
「地震で停電になったらお店は開けなかったでしょう?」
「はい、でもこの辺りは地震になったその日の午後には電気が復旧したんですよ」
「へえ、早かったね。僕の所は丸一日停電が続いたからなあ」
「なので、水も出ましたし、地震の翌日からは普通に営業できたんです。そうしたらまだ世間は停電が続いているところが多くて、報道でスマホの電池切れに困った人たちが区役所に殺到して充電していて、しかも何時間も待たされている、というじゃありませんか」
「そうだったみたいだね」
「そんな風で周りも慌ただしくて、『今日はもうお客さんも床屋どころじゃなくて来ないだろうな』と思って、店は開けたもののせめて電池の充電サービスくらいしようと、店の表に『スマホの充電無料でできます』と書いた紙を貼りました。そうしたら以外に、女性のお客様が殺到したんです」
「女性のお客さん?へー」
「皆さん、第一声は充電が目当てだったんですが、お風呂に入れなかったので特にロングヘアのお客様が洗髪と充電をしていかれたんですが、とても感謝されました」
「それは素晴らしいね。それっていつもの常連のお客さんが多かったの?女性って美容院は行くけどなかなか床屋さんって来ないでしょ?」
「そういう女性のお客様は30人くらい来られましたけど、ほとんどが新規のお客様でした。なかにはその女性の旦那さんという方がちょっと後に来られて、『妻から聞きました。お世話になりました』といって新規のお客様になっていただいた、ということもありました。
だから、お客様を諦めていた日に、普段のお客様に加えて充電と洗髪の予期せぬお客様が大挙したので、結構大変でした。まあ一番大変だったのは、普段はないロングヘアをひたすらシャンプーしていた洗髪担当のA君でしたけどね(笑)」
緊急の際に、自分の職分を超えて、「できることをやろう」という姿勢でいられるのは立派です。
僕の通っているこの床屋さんは普段から会話をしていても、どこか清々しさが漂ってくるので、髪を切る以上に心も洗われるのですが、今日も良い話を聞かせてもらいました。
どんな仕事に就いていても、最後はこういう人間力が人を惹きつけるように思います。
今日も張り切っていきましょう。