この週末に幌加内新そば祭りでテントの中から、蕎麦を買っていただくシーンをたくさん見てきました。
そこで思う、モノを売ることの難しさやちょっとしたコツについて書き留めておこうと思います。
実際、蕎麦イベントでたくさんのお客さんが訪れていながら、モノ(蕎麦)を売るというのは実は難しい。
いくら美味しい蕎麦を作っているつもりでも、まだ食べていない人にそれをどう伝えられるでしょう。
いくつもあるお店から我が店を選んでもらうための差別化とは一体なんでしょうか。
《その1》エビ天ぷら
エビの天ぷらはとても面倒です。冷凍のパックエビは、殻も向いてあるし背ワタも取ってあってそこまではとても便利です。
しかしそこから、油跳ねのために尻尾の剣を切り落とし、バットに並べて冷蔵保存しておくのにまず手間がかかります。
エビの天ぷらを揚げるのも、少しは衣を大きくして花をつけて豪華に見せるのには一匹一匹に手間をかけなくてはなりません。
エビは先輩格の方が揚げていましたが、売れていって数が少なくなると私もサポートに回りながら、カボチャ天もエビ天も、揚げ立てを供給できるようにしますが、実質はずっと揚げ続けです。
でも蕎麦にエビ天・野菜天という油ものは合うので、その魅力と差別化はウリになるでしょう。
《その2》受付は女性の優しい声がよろしい
受付は男性の野太い声よりも、やはり優しい女性の方が良いです。
基本的にお客さんはシャイなので、「どんな蕎麦がありますか」というちょっとした会話でも、優しい相手としたいものです。
性差別ではなくて、男性と女性がいれば、女性が有利になるのは世の習いだと思います。
《その3》最後尾を示しながら、通り過ぎる方に声を掛ける
お客さんは、ほとんど蕎麦に関する情報を持っていません。
なので、蕎麦に関するちょっとした豆知識や話題を振りまき、そのうえで我々が出す蕎麦が他とどう違うかをちょっとささやくことで、我が店の列に並んでくれる確率はぐんと高まります。
蕎麦が出るのを待つ列を整然と並べるには、人を一人つけて最後尾とわかる看板を持って、並び場所を伝えるのですが、その作業のついでに、道行く人に
「お蕎麦いかがですか、うちの蕎麦は美味しいですよ」ということを話しかけます。
少しでも聞いてくれるそぶりがあればしめたものです。
ちょっとでも対話ができると、「うーん、後で来るわ」と言って一度は去って行っても、結構な確率で再びやってくると言います。
ちょっとした縁を捨てきれない人が多いというのは日本人だからでしょうか。でも面白い。
《その4》待たせるのも一つの手
蕎麦の券を買ってどの品にしたかを見てから、蕎麦ができるまでにはちょっとタイムラグがあるので、お客さんが多くなってくると列が長くなってきます。
そのことはお客さんに失礼なのかと思いきや、実は頑張って蕎麦を早く出してしまって列が消えると、とたんにお客さんは並ぶことが不安になります。
列ができていないというのは、(美味しくないのではないか)と不安になって、並ぶのに躊躇するのです。
だから列がなくなりそうになったら、少しゆっくりでも良い、ということを皆わかっています。
《その5》ものは言いよう
蕎麦を出してお客さんと触れあうところは、一番コミュニケーションの上手な事務局長が担当します。
列ができるくらいになると、お蕎麦を茹でるのが間に合いません。蕎麦待ちになります。
また、天ぷらの売れ行きが良いと、天ぷら蕎麦を注文されても天ぷら待ちになります。
そんな待ち時間を笑いに紛らせて飽きさせない対話術がコツです。
蕎麦の茹でを待っているときは、「もうすぐ茹でたてで出しますからね、もう少々お待ちを」
天ぷらは、「いま揚げたてで出てきますからね」と言えば、お客さんの待たされている不満も紛れます。
この、最後のコミュニケーションは、「売る」ということに直接つながっていないかもしれませんが、蕎麦を買う事、食べることを笑いと幸せにつなげる効果があります。
売り場全体が楽しげで、「あそこのブースとおじさんは楽しかったね」と感じてもらうことは、イベント全体の成功につながります。
一人ひとりがそういう気構えでいるという雰囲気もとても大切です。
選んでもらうという、相手に委ねられる心をどうこちらに向けるか。
ビジネスの永遠の課題ですね。