このところせっせと読書で現実逃避。 私にはセレブの身の上話なんてひつような~い。
なんて言って、ちょっと前によんだ本は、興味津々の伝記なのですが。。
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『ルイザ 若草物語を生きたひと』(ノーマ・ジョンストン著 谷口由美子訳/東洋書林)
『若草物語』の作者、ルイザ・メイ・オルコットの伝記です。
この本の表紙の絵、、ノーマン・ロックウェルですって。いい絵ですね。。 屋根裏部屋で古いソファとクッションに背もたれて、書き物に没頭するジョー。。いえ、オルコットなのでしょうけど、小説の中の、あのジョーそのもの。
私はウチで掃除する時、、 ソファの上でさんざん使われてぺしゃんこになっている羽毛のクッションを、ぱんぱんと叩いて膨らませる時、、かならず『若草物語』を頭のどこかで反芻しています。。ウソじゃなく、、本当に条件反射的に、、。『若草物語』を読んだ小学生のころには、ウチにはソファもクッションも存在しておりませなかったのですが(笑)、、。 羽毛のクッションが生活に入り込んできたのはいつだったか思い出せませんけど、とにかく、羽毛のクッションをぱんぱんして、並べ直すたびに私はジョーとローリーのことを思い出します。
最初は、ジョーが初めてローリーの屋敷を訪れた時、ですね。風邪ひきのローリーのお見舞いに。。 そこでジョーは、ローリーのお部屋をちゃちゃっとかたづけて心地良くしてあげるのです。
「きみって、しんせつなんですね! そうですよ、こんなふうにしたかったんです」
(掛川恭子 訳)
そうして、ジョーとローリーは無二の親友になり、、、でも、、彼らが成長して、<無二の親友>という間柄にはおさまりきれなくなってきたとき、 この<ソファとクッション>の存在がまた大事な小道具となって物語に出てくるのですね。。それは、『続 若草物語』の第九章「やさしき悩み」につづられています、、
「この由緒ある寝椅子の上にはたくさんのクッションがおいてあったが、、(略)
、、このあまりぞっとしないクッションはジョーの占有物であり、防御の楯とも
なれば防壁(バリケード)ともなり、または午睡の夢を適度にさまさせる予防剤
ともなっていた。」
、、、一体なにからの「楯」であり「バリケード」か?? と言うと、、もちろん、、ローリー。
「、、このごろになっては自分が最もすわりたい場所、すなわちソファのすみの
ジョーの隣にすわることをこのクッションで阻止されることがしばしばだったから
である。」 (吉田勝江 訳/角川文庫)
、、で、、最愛の(はずの)ローリーは、このクッションでかなりさんざんな目に遭うのですよ、、ね。。。 そんなだから、クッションをぽんぽん、としてソファに転がす時、いっつも心のどこかで苦笑してしまうのです。 幼少期の読書の、すごい影響力。
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作者ルイザ・メイ・オルコットの家族は、マサチューセッツ州のコンコードなどで暮らし、ルイザは子どもの頃から、エマソンや、ソローといった超絶主義者の思想家たちや、ホーソンなどの作家たちと親交があった、、ということについては、前に少しだけ書きましたのでそちらを(
>>)。
この伝記では、そういったルイザの子ども時代の生活が詳細に書かれていて、エマソンらとの関連も勉強になります(日本では、幕末!という時代。。ルイザの家族、「若草物語」の家族、って本当に永遠の魅力なのだな、と思います)。、、、それにしても、、、
ルイザの<お父さま>、ブロンソンの破天荒ぶり、というか、異端ぶりというか、ダメ人間加減というか、、は、かなりの予想外でした。みずからの哲学のため、、とはいえ、ここまで生活能力に欠けていると家族は本当に大変なだけ、だろうと。。ルイザは、家族の貧窮を助けるため、退路を絶たれた状況で作品を書かなければならなかったのだ、、と。
にもかかわらず、ルイザの描いた『若草物語』には、自分の家族への思いがいっぱいで、<お父さま>の欠点は全く描かれなかったかわりに、第3、第4若草物語でジョーが運営する学校の様子は、まさにルイザの幼少期に、お父さまブロンソンが目指していた理想の学校を描いたものだったということがわかる。困窮を希望に変え、苦難を楽しみにしてしまうルイザのパワーは、やはり紛れもなくジョーそのひと、そのもの。
ルイザの末妹メイ(MAY)が、欧州留学ののちに画家になり、裕福な人の妻となって愛娘をもうけたのですが、、若くして亡くなってしまったという点は胸が痛みました。物語のエイミーは、MAYを入れ替えたもの(AMY)で、物語ではローリーと結婚したエイミーが一番の幸福を手にしたような気がしていたのですが、、そんな悲しい現実が隠れていたなんて、、。 これからはもうエイミーをうらやんだりしません、、ご免なさい。。
MAYの遺した娘さん(AMYでいえば、きんぽうげちゃん、ですね)のその後も書かれています。 『若草物語』を、ジョーの息子たちの物語まで興味深く読んだ方には、このオルコットの伝記もとっても興味深いものになると思います。 お薦めです。