星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
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ミステリ小説から アイルランド内戦の女性戦士へ思いを…

2025-03-06 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
3月に入ってから お天気も気温も変動がはげしくて、 ぽかぽかだったり 極寒だったり…

体調くずしていらっしゃいませんか…?

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前回の『真珠湾の冬』の後で読んでいた本です。


『真冬の訪問者』 W・C・ライアン著・土屋晃 訳 新潮文庫 2025年1月

1921年 アイルランド独立戦争を背景にした、 殺人事件を追う犯罪小説であり、 愛の物語でもあり、 アイルランドらしいゴーストストーリーの雰囲気も兼ね備えたミステリ小説。

出版されたばかりですので物語の核心に触れるのはよしますね… 

アイルランド西部のある邸宅前で、 自動車へのIRAによる襲撃事件が起き 男性2人と女性1人が死亡した。 しかしIRAによれば射殺したのは男性2名で、 女性は無傷だったという。。 女性を撃ったのは誰なのか・・・

主人公は第一次大戦をフランスの激戦地で戦い帰還した元大尉トム・ハーキン。 現在は保険会社の査定人という表向きの職業のかげで、 もうひとつの指令を受けて襲撃事件の調査にあたる。。 じつは殺された女性は、 ハーキンのかつての婚約者だった…

物語の時代背景が アイルランド独立戦争をめぐる1916年のイースター蜂起から 第一次大戦(アイルランドは英国の一部だったから英国軍のもとで派兵されたのですね)、 そしてこの本の1921年のアイルランド内戦 という時代なので、 IRAの遊撃隊とか 王立アイルランド警察隊(RIC)とか出てきて、 どことどこが闘っているのか、 登場人物の誰がどちらに属しているのか、 読みながら最初はちょっと頭がこんがらかりました。。

アイルランド、 という国のことを 「母犬のそばにくっついている子犬」というような表現をしていたのは 司馬遼太郎さんの本『街道をゆく 愛蘭土紀行』だったと思いますが、 地図をみると本当にイギリス本土とアイルランドは親子の犬みたいな形をしています。。 その母の支配からの独立を勝ち取るための闘争の時代が舞台なので、 取り締まっている警察は〈王立〉 英国側なのですね。 そしてアイルランドの土地を所有している貴族や地主階級も。

そうした歴史を抜きにしても、 自動車襲撃事件で女性を射殺したのは誰か… という犯人捜しとして読めば良いし、、 容疑者も二転三転、、 登場人物それぞれに隠された謎がいくつも明らかになっていく物語として なかなか驚かされます。 IRAとRICとの抗争も報復や内通や、、(みせしめのような報復の記述はちょっとしんどかった…)

その一方で、 アイルランドらしく 幽霊? 妖精? ご先祖さま? 、、そんな不可思議な存在が なにかのメッセージを送ってきたりもして、、。

時代背景も犯人捜しも とても興味深く読めました。。 私の好みから言ったら、、 魅力的な女性の登場人物たちが複数いたのですが 《胸ズキュン》となる切なさというか、 ありし日の思い出の描写などがもう少し丁寧に描かれていたら良かったのになぁ… という感じかな。。 主人公も、 こんなに愛されていた人なのに ビジュアルが想像しにくかったです…

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ここからは 個人的関心の資料編…

王立アイルランド警察隊(RIC)のウィキを見たら この物語に出てくる襲撃や闘争に関係することがいっぱい出てきて(ネタバレになります)、、 著者さんはいろんな史実をモチーフに物語を創り上げたのがわかりました。
 王立アイルランド警察隊 wiki

物語中に アイルランド独立戦争の女性活動家が登場するので、 私が知っているのは 詩人ウィリアム・バトラー・イェイツが愛し続けたミューズ モード・ゴンのことなのかしら… と思ったのですけど、、
 モード・ゴン wiki

アイルランドのジャンヌ・ダルクと呼ばれたモード・ゴンのほかにも、 彼女と共に闘ったこんな女性たちがいたのだと知りました。。 イースター蜂起での女性スナイパー
 マーガレット・スキニダー wiki

伯爵夫人でありながらイースター蜂起に加わり投獄、 そののちもアイルランド共和国側のために闘った
 コンスタンツ・マルキエビッチ wiki


日本でも 幕末の内戦 戊辰戦争の会津藩で戦った新島八重というすごい女性がいましたけれど、 これらアイルランドの女性戦士たちの存在にも驚かされました。。

内戦など 無いのがいちばんですけど・・・

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きょうの『真冬の訪問者』を読んで、、 松村みね子(片山廣子)さんが アイルランドのJ・M・シングの戯曲集を翻訳出版するにあたって ウィリアム・バトラー・イェイツが手紙を寄せ それを序文にしたのはいつだったろう… と調べたら、 本の出版は1923年だったようです。 イエイツの序文はいま『火の後に: 片山廣子翻訳集成』で読むことができます。 イェイツのウィキにも イースター蜂起から内戦の時代のことも書かれていました
 ウィリアム・バトラー・イェイツ wiki

それにしても、、 イェイツから手紙をもらうって… すごくない? イェイツよ…。。 いくら片山廣子さんが奥ゆかしく、 松村みね子という名前でそっとアイルランド文学の訳業をなさっていたとしても、、 イェイツから序文のお手紙をいただくなんて、、!! (有り得ないけれど私なら舞い上がってしまう…笑)

なんて


あの時代の文学、 歴史をともなう物語、、 いまは ロシアの物語を読んでいます。。 こちらも内乱や政変をくりかえしてきた今なお混沌の国・・・



それでは また。。



明日はあたたかくなるかしら…?
 (上の写真、いまは桜のスイーツめぐりに夢中です…♡)