先土曜日、 サントリーホールへ東京交響楽団の定期演奏会を聴きに行って来ました。
当初この公演は行く予定なかったのですが、 サマーミューザで頂いたチラシで グレブ・ニキティンさんのバイオリンソロが聴けると知って 急遽チケットを求めたのでした。
2023年09月23日(土) サントリーホール
東京交響楽団 第714回定期演奏会
ロレンツォ・ヴィオッティ 指揮
ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 op.55 「英雄」
R.シュトラウス:交響詩 「英雄の生涯」 op.40
ニキティンさん 素晴しかったです。 行って良かったです。 東京交響楽団さんの演奏も大編成にもかかわらずすごいまとまりがあって、 それなのに各演奏者さんがそれぞれ際立って、 特に「英雄の生涯」はほんとうに聴き応えがありました。
指揮者のロレンツォ・ヴィオッティさんでは 2019年に東響さんを振った時のを聴いているのですが、 そのときの日記にもあるように(>>) ヴィオッティさんの指揮がなんだか私にはわかりにくく、 ちょっとどう感じてよいか難しい印象の指揮でした。
その わかりにくいという印象は今回もまあ同じくあったのですが(なにしろ私自身が素人なので) でも、 そのどう振っているのかよくわからない指揮棒に私がとまどっている間でも 東響さんの演奏はしっかりまとまってクリアに響いていて、 特にティンパニさんなどどうやったらタイミングがわかるんだろう… 団員さんたちってすごいなぁ…と逆に感心してしまいました。
ヴィオッティさんの指揮は各パートさんに細かく指示をとばすというより、 ヴィオッティさんの頭の中にあるその時その時の重要視している音の情感をうねったり 休止したり、、 おそらくご自身のなかでの完成形がすでにあるのでしょう、、 その完成形に向けてオケを動かすのであって、 細かいリズムなんかをきちっと刻んで振るという指揮ではないのですね。
前半のベートーベン「エロイカ」は流麗な、軽やかな3番。。 各パートさんのソロも美しく、、 でも ヴィオッティさんの指揮に慣れない私は どうしても腕の動きと演奏の一体感を軸に聴いてしまうので、 拍子と関係なくおもむろに髪をかきあげたり 楽譜をめくったりする動きが 一瞬なにかの指示に見えて焦ってしまう、、 見ている眼と耳が混乱してしまうのです。。
もしかしたら このようなとても有名な曲などは 楽団さんとのリハのあとは楽団さんにお任せしてしまう指揮者さんなのかと思ったり。。 今まで東響さんとの演奏で聴いてきたのが、 ノット監督との丁々発止の息詰まる演奏や、 ウルバンスキ指揮の緊張感漂うプログラムばかり選んできた自分のせいかもしれません。
でも、 「英雄の生涯」にはめっちゃ感動しました。 あれだけ大編成の楽曲なので ヴィオッティさんの指揮も熱をおびてあちこち指示を出してたくさん振ってくださるので むしろ安心して見れます。
ニキティンさんのソロパートは 「英雄の伴侶」を示しているそうなのですが、 なんだか私には そのニキティンさんの音色が、 英雄の感情のほう、 愛する人にめぐり会って 心が慰められたりやすらいたり、 気持ちが高められたり、、 そんな主人公の心情のほうに想いが行ってしまいました。。 大きなニキティンさんが絹糸のような繊細な美音を奏でたり、 目を見張るような難しい技巧の演奏をみせてくださったりしているからなのでしょうね、 ニキティンさんと英雄さんがかぶってしまう。。 気持ちが妻側の目線から 英雄の内面のほうに近づいていってしまいます。
「英雄の戦場」もそれはそれは見事な演奏でした。 いろんな楽器が一見ばらばらのように、 むちゃくちゃのように混沌として奏でられているようでいて、 音楽はとても立体的な大きなひとつの絵になっている。 それを統率できているヴィオッティさんの凄い力量をここでは私でもはっきりと感じとることができました。
各ソロパートさんも美しかった。。 ニキティンさんとホルンさんや オーボエさんとのハーモニーはそれはそれは至上のうつくしさでした。
東響さんのオケは爆音にならないところが好き、 ピアニッシモの美しさが好き、というのは今まで何度も書きましたが、 ヴィオッティさんの指揮でも爆音で押すようなところが全然無くて、 音の立体感と情感の高まりとしずまりとが音の中にちゃんと聞こえて、 そして静けさをほんとうに大事に響かせていて(静けさをひびかせる、ってヘンですけど 本当にそんな感じで…)
英雄の人生の終末に向けてもその情感がしっかりと感じ取れて、、 すばらしかったです。
最後の音が消え入るように小さくなって、、 でもその後の 音が終わったあと動きを止めたヴィオッティさんの指揮棒をじっとみなが見つめたまま、 客席がしんと静まったまま、 誰も拍手もブラボーも叫ばなかったことがとにかく素晴らしかったです。 全員がしんと鎮まってじっと指揮棒がおりるのを待つというのは そうそう経験できなかったので、 この晩のお客さまにはほんとうにブラボーでした。
帰ったあとで知ったのですが、 ヴィオッティさんは非常に細かくリハを綿密になさるということなので、 オケへの指示はリハで行き渡っていて、 本番では観客のみなさんには椅子に深々と座ってじっくりと演奏を楽しんでいただく、、という そういう考えなのかもしれません。。 お衣装のブルーの燕尾服姿といい、 カーテンコールで出て来られる物腰もじつにノーブルな、 そんな印象でした。 そういう面でも、 感情の昂ぶりが指揮の姿にもそのまま表れるノット監督とは雰囲気がちがうのかもしれないと思いました。(ノットさんの指揮大好きです)
***
ノット監督の演奏会も 今年の残り3カ月の間に観たい公演が、、 ヤナーチェクも見たい、、 ゲルハルト・オピッツさんの荘厳なビアノもまた聴きたい、、 けど・・・
今年は夢だった __オーケストラ公演のためにお財布はたいてしまったのでもう今年はムリかもしれません。。 来季の東響さんの年間プログラムもほんとうに楽しみ。。 どんな指揮者さん どんな曲目に出会えるでしょうか…
あ、、 そういえば、 大好きなクシシュトフ・ウルバンスキさんがスイスのベルン交響楽団の24/25期の首席指揮者に就任と オフィシャルサイトに書いてありました。 すごいなぁ… だけど日本に来て下さる機会が減ってしまわないか心配。。 また東響さんとでぜひ見たいのに。。
***
今回の「英雄の生涯」 ニコ響で今度の日曜日まで視聴できるようです。 さきほど終演後のニキティンさんのインタビュー部分を見ました。 東響さんへ入団してもう23年、今回のソリストということで、 ご自身のことを「今日は新人です。 皆さん審査員してください」などと謙虚におっしゃるのを見ていて、 その部分を見ただけでもうるうるしてしまいました。。
また何度か演奏映像 楽しみたいと思います。
ニキティンさん ブラボーでした。 ありがとうございました♪
** 追記 **
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 クシシュトフ・ウルバンスキ指揮による「エロイカ」
https://www.youtube.com/watch?v=zIAauQNdY-E
どちらの演奏が… というわけではなくて でもこんなに違うんだ… 特に第二楽章。 ポーランドという国のもつ重みを感じて背筋が寒くなった…
当初この公演は行く予定なかったのですが、 サマーミューザで頂いたチラシで グレブ・ニキティンさんのバイオリンソロが聴けると知って 急遽チケットを求めたのでした。
2023年09月23日(土) サントリーホール
東京交響楽団 第714回定期演奏会
ロレンツォ・ヴィオッティ 指揮
ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 op.55 「英雄」
R.シュトラウス:交響詩 「英雄の生涯」 op.40
ニキティンさん 素晴しかったです。 行って良かったです。 東京交響楽団さんの演奏も大編成にもかかわらずすごいまとまりがあって、 それなのに各演奏者さんがそれぞれ際立って、 特に「英雄の生涯」はほんとうに聴き応えがありました。
指揮者のロレンツォ・ヴィオッティさんでは 2019年に東響さんを振った時のを聴いているのですが、 そのときの日記にもあるように(>>) ヴィオッティさんの指揮がなんだか私にはわかりにくく、 ちょっとどう感じてよいか難しい印象の指揮でした。
その わかりにくいという印象は今回もまあ同じくあったのですが(なにしろ私自身が素人なので) でも、 そのどう振っているのかよくわからない指揮棒に私がとまどっている間でも 東響さんの演奏はしっかりまとまってクリアに響いていて、 特にティンパニさんなどどうやったらタイミングがわかるんだろう… 団員さんたちってすごいなぁ…と逆に感心してしまいました。
ヴィオッティさんの指揮は各パートさんに細かく指示をとばすというより、 ヴィオッティさんの頭の中にあるその時その時の重要視している音の情感をうねったり 休止したり、、 おそらくご自身のなかでの完成形がすでにあるのでしょう、、 その完成形に向けてオケを動かすのであって、 細かいリズムなんかをきちっと刻んで振るという指揮ではないのですね。
前半のベートーベン「エロイカ」は流麗な、軽やかな3番。。 各パートさんのソロも美しく、、 でも ヴィオッティさんの指揮に慣れない私は どうしても腕の動きと演奏の一体感を軸に聴いてしまうので、 拍子と関係なくおもむろに髪をかきあげたり 楽譜をめくったりする動きが 一瞬なにかの指示に見えて焦ってしまう、、 見ている眼と耳が混乱してしまうのです。。
もしかしたら このようなとても有名な曲などは 楽団さんとのリハのあとは楽団さんにお任せしてしまう指揮者さんなのかと思ったり。。 今まで東響さんとの演奏で聴いてきたのが、 ノット監督との丁々発止の息詰まる演奏や、 ウルバンスキ指揮の緊張感漂うプログラムばかり選んできた自分のせいかもしれません。
でも、 「英雄の生涯」にはめっちゃ感動しました。 あれだけ大編成の楽曲なので ヴィオッティさんの指揮も熱をおびてあちこち指示を出してたくさん振ってくださるので むしろ安心して見れます。
ニキティンさんのソロパートは 「英雄の伴侶」を示しているそうなのですが、 なんだか私には そのニキティンさんの音色が、 英雄の感情のほう、 愛する人にめぐり会って 心が慰められたりやすらいたり、 気持ちが高められたり、、 そんな主人公の心情のほうに想いが行ってしまいました。。 大きなニキティンさんが絹糸のような繊細な美音を奏でたり、 目を見張るような難しい技巧の演奏をみせてくださったりしているからなのでしょうね、 ニキティンさんと英雄さんがかぶってしまう。。 気持ちが妻側の目線から 英雄の内面のほうに近づいていってしまいます。
「英雄の戦場」もそれはそれは見事な演奏でした。 いろんな楽器が一見ばらばらのように、 むちゃくちゃのように混沌として奏でられているようでいて、 音楽はとても立体的な大きなひとつの絵になっている。 それを統率できているヴィオッティさんの凄い力量をここでは私でもはっきりと感じとることができました。
各ソロパートさんも美しかった。。 ニキティンさんとホルンさんや オーボエさんとのハーモニーはそれはそれは至上のうつくしさでした。
東響さんのオケは爆音にならないところが好き、 ピアニッシモの美しさが好き、というのは今まで何度も書きましたが、 ヴィオッティさんの指揮でも爆音で押すようなところが全然無くて、 音の立体感と情感の高まりとしずまりとが音の中にちゃんと聞こえて、 そして静けさをほんとうに大事に響かせていて(静けさをひびかせる、ってヘンですけど 本当にそんな感じで…)
英雄の人生の終末に向けてもその情感がしっかりと感じ取れて、、 すばらしかったです。
最後の音が消え入るように小さくなって、、 でもその後の 音が終わったあと動きを止めたヴィオッティさんの指揮棒をじっとみなが見つめたまま、 客席がしんと静まったまま、 誰も拍手もブラボーも叫ばなかったことがとにかく素晴らしかったです。 全員がしんと鎮まってじっと指揮棒がおりるのを待つというのは そうそう経験できなかったので、 この晩のお客さまにはほんとうにブラボーでした。
帰ったあとで知ったのですが、 ヴィオッティさんは非常に細かくリハを綿密になさるということなので、 オケへの指示はリハで行き渡っていて、 本番では観客のみなさんには椅子に深々と座ってじっくりと演奏を楽しんでいただく、、という そういう考えなのかもしれません。。 お衣装のブルーの燕尾服姿といい、 カーテンコールで出て来られる物腰もじつにノーブルな、 そんな印象でした。 そういう面でも、 感情の昂ぶりが指揮の姿にもそのまま表れるノット監督とは雰囲気がちがうのかもしれないと思いました。(ノットさんの指揮大好きです)
***
ノット監督の演奏会も 今年の残り3カ月の間に観たい公演が、、 ヤナーチェクも見たい、、 ゲルハルト・オピッツさんの荘厳なビアノもまた聴きたい、、 けど・・・
今年は夢だった __オーケストラ公演のためにお財布はたいてしまったのでもう今年はムリかもしれません。。 来季の東響さんの年間プログラムもほんとうに楽しみ。。 どんな指揮者さん どんな曲目に出会えるでしょうか…
あ、、 そういえば、 大好きなクシシュトフ・ウルバンスキさんがスイスのベルン交響楽団の24/25期の首席指揮者に就任と オフィシャルサイトに書いてありました。 すごいなぁ… だけど日本に来て下さる機会が減ってしまわないか心配。。 また東響さんとでぜひ見たいのに。。
***
今回の「英雄の生涯」 ニコ響で今度の日曜日まで視聴できるようです。 さきほど終演後のニキティンさんのインタビュー部分を見ました。 東響さんへ入団してもう23年、今回のソリストということで、 ご自身のことを「今日は新人です。 皆さん審査員してください」などと謙虚におっしゃるのを見ていて、 その部分を見ただけでもうるうるしてしまいました。。
また何度か演奏映像 楽しみたいと思います。
ニキティンさん ブラボーでした。 ありがとうございました♪
** 追記 **
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 クシシュトフ・ウルバンスキ指揮による「エロイカ」
https://www.youtube.com/watch?v=zIAauQNdY-E
どちらの演奏が… というわけではなくて でもこんなに違うんだ… 特に第二楽章。 ポーランドという国のもつ重みを感じて背筋が寒くなった…