今年の最後に手にした本は
『ピラミッド』 ヘニング・マンケル著 柳沢由実子訳 創元推理文庫 2018年
クルト・ヴァランダー警部シリーズは 8作目の『ファイアーウォール』までが翻訳されていて、 著者のヘニング・マンケルさんは 2015年に亡くなってしまわれたので シリーズを読み終えてしまうのが勿体なくて、 どうしても『ファイアーウォール』にはまだ手を出せずにいます。
その代わりに 若き日のヴァランダー刑事を描いた番外編ともいえるこの短篇集が 昨年翻訳されていたので、 これも勿体なくてずっと我慢していたのですけど 今年、 ヘニング・マンケルさんの『イタリアン・シューズ』も読んでしまったので、 とうとうこの『ピラミッド』を読むことにしました。
クルト・ヴァランダー警部シリーズは、 『殺人者の顔』… 1990年の1月8日から物語が始まりました。
体型も気になり始めた中年オヤジ、、 奥さんに別れを切り出され でも未練たらたらのダメダメな日々を送り、 一方で そろそろお年の頑固で偏屈な絵描きのお父さんの面倒もみなくちゃならない 私生活は全然ハードボイルドじゃないおっさん警部。。
でもその物語が ヘニング・マンケルさんにノーベル文学賞を! と言われるほどの人気シリーズになったのは、 この『ピラミッド』の最初の〈著者まえがき〉で マンケルさん自身が書かれている通りの理由があったからだと思います。。 それは…
「ヴァランダーはある意味で多くの人の不安の代弁者としての役割を果たしているのかもしれない…」 ということ。
何に対する〈不安〉かというと、 「法治国家と民主主義の関係」が、、 これからの時代に 生き延びつづけられるのか? という… ヴァランダー警部がいつも呟く (いったいこの国はどうなってしまうのか)という不安…
私はミステリ小説を読みだしたのはここ数年のことなので、 ヘニング・マンケルさんの事も全然 存じませんでした。。 でも 読んでからは本当に、 大戦後の傷痕のこと、 人種問題のこと、 移民問題のこと、 社会格差のこと、 ヘイトクライムのこと、、 みんなみんなマンケルさんが90年代にすでに書かれていた事をいまになって 今の日本で(やっと自分が)切実に感じるようになったことに気づかされました。
小説家としてのマンケルさんの慧眼、、 スウェーデンにとどまらず世界全体の問題をエンターテインメント小説として読ませられる力量、、 ほんと ノーベル文学賞でもおかしくないです。
***
この『ピラミッド』は ヘニング・マンケルさんがシリーズ8作目の『ファイアーウォール』を書いた後に、 1990年1月8日以前のクルト・ヴァランダーの物語を、、 まだ若き22歳の刑事だったころからの番外編の短編物語集を(ファンのために)創ってくださった本。 そんな嬉しいうれしい小説集。
気持ちはとっても ワクワクなんですけど、 このところの年末大掃除に買い出しに、 今日からもうお料理の準備、、と まだ最初の1篇の途中までしか読めてないの… でも幸せ。。 クルト・ヴァランダーが動いて喋っているだけで なんだか しあわせ…
、、 訳者の柳沢由実子さんのあとがきによれば、、 クルト・ヴァランダー警部シリーズの未訳は あと二冊とのこと。 そしてシリーズ以外の ヘニング・マンケルさんの著作は あと30作以上もあるとのこと。。
マンケルさんはもういないけれど、 こうして翻訳をして 私たちに物語を届けてくださる訳者の方や出版社のかたがいて、 年に一作でも二作でも、 私たちは新しい物語に出会う幸せを味わうことが出来る。。 それを想うだけでも これからの日々、 そして来年という時間がたいせつで待ち遠しいものに思えてきます。
そうして、、 自分は またどこかで出会うちいさな物語や 古い物語や 忘れられた物語や、、 自分で見つけた なにか貴重な物語のことを、 ここに読書記録を書いていけたらいいな…
ベストセラーは放っておいてもいろんなところで紹介されていくでしょうから、、
来年も そんなふうに ちいさな出会いと ちいさな未来をもとめて、、 日々を過ごしていけたらいいな、、と 思っています。
今年もありがとうございました。
年末年始 どうぞ 素敵な日々を…
『ピラミッド』 ヘニング・マンケル著 柳沢由実子訳 創元推理文庫 2018年
クルト・ヴァランダー警部シリーズは 8作目の『ファイアーウォール』までが翻訳されていて、 著者のヘニング・マンケルさんは 2015年に亡くなってしまわれたので シリーズを読み終えてしまうのが勿体なくて、 どうしても『ファイアーウォール』にはまだ手を出せずにいます。
その代わりに 若き日のヴァランダー刑事を描いた番外編ともいえるこの短篇集が 昨年翻訳されていたので、 これも勿体なくてずっと我慢していたのですけど 今年、 ヘニング・マンケルさんの『イタリアン・シューズ』も読んでしまったので、 とうとうこの『ピラミッド』を読むことにしました。
クルト・ヴァランダー警部シリーズは、 『殺人者の顔』… 1990年の1月8日から物語が始まりました。
体型も気になり始めた中年オヤジ、、 奥さんに別れを切り出され でも未練たらたらのダメダメな日々を送り、 一方で そろそろお年の頑固で偏屈な絵描きのお父さんの面倒もみなくちゃならない 私生活は全然ハードボイルドじゃないおっさん警部。。
でもその物語が ヘニング・マンケルさんにノーベル文学賞を! と言われるほどの人気シリーズになったのは、 この『ピラミッド』の最初の〈著者まえがき〉で マンケルさん自身が書かれている通りの理由があったからだと思います。。 それは…
「ヴァランダーはある意味で多くの人の不安の代弁者としての役割を果たしているのかもしれない…」 ということ。
何に対する〈不安〉かというと、 「法治国家と民主主義の関係」が、、 これからの時代に 生き延びつづけられるのか? という… ヴァランダー警部がいつも呟く (いったいこの国はどうなってしまうのか)という不安…
私はミステリ小説を読みだしたのはここ数年のことなので、 ヘニング・マンケルさんの事も全然 存じませんでした。。 でも 読んでからは本当に、 大戦後の傷痕のこと、 人種問題のこと、 移民問題のこと、 社会格差のこと、 ヘイトクライムのこと、、 みんなみんなマンケルさんが90年代にすでに書かれていた事をいまになって 今の日本で(やっと自分が)切実に感じるようになったことに気づかされました。
小説家としてのマンケルさんの慧眼、、 スウェーデンにとどまらず世界全体の問題をエンターテインメント小説として読ませられる力量、、 ほんと ノーベル文学賞でもおかしくないです。
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この『ピラミッド』は ヘニング・マンケルさんがシリーズ8作目の『ファイアーウォール』を書いた後に、 1990年1月8日以前のクルト・ヴァランダーの物語を、、 まだ若き22歳の刑事だったころからの番外編の短編物語集を(ファンのために)創ってくださった本。 そんな嬉しいうれしい小説集。
気持ちはとっても ワクワクなんですけど、 このところの年末大掃除に買い出しに、 今日からもうお料理の準備、、と まだ最初の1篇の途中までしか読めてないの… でも幸せ。。 クルト・ヴァランダーが動いて喋っているだけで なんだか しあわせ…
、、 訳者の柳沢由実子さんのあとがきによれば、、 クルト・ヴァランダー警部シリーズの未訳は あと二冊とのこと。 そしてシリーズ以外の ヘニング・マンケルさんの著作は あと30作以上もあるとのこと。。
マンケルさんはもういないけれど、 こうして翻訳をして 私たちに物語を届けてくださる訳者の方や出版社のかたがいて、 年に一作でも二作でも、 私たちは新しい物語に出会う幸せを味わうことが出来る。。 それを想うだけでも これからの日々、 そして来年という時間がたいせつで待ち遠しいものに思えてきます。
そうして、、 自分は またどこかで出会うちいさな物語や 古い物語や 忘れられた物語や、、 自分で見つけた なにか貴重な物語のことを、 ここに読書記録を書いていけたらいいな…
ベストセラーは放っておいてもいろんなところで紹介されていくでしょうから、、
来年も そんなふうに ちいさな出会いと ちいさな未来をもとめて、、 日々を過ごしていけたらいいな、、と 思っています。
今年もありがとうございました。
年末年始 どうぞ 素敵な日々を…