星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

LES FLEURS DU MALが好きなニコポル

2005-08-23 | 映画にまつわるあれこれ
公開時、観に行けずに
パンフだけ買ってきてもらった、「GOD*DIVA」、、、
やっと見れた。

エンキ・ビラルは映画監督である前に、カルト的なコミック作家と言った方がいいのでしょうか。でも私は彼のコミックは読んだことが無いです。映画は「バンカーパレスホテル」も「ティコ・ムーン」も好き。何が素敵かって、セットの人工美と、役者さんの美しさ。ストーリーは何度みてもよく分からなかったりするのだけど、何年か過ぎて、物語も忘れかけた頃、また観たくなる。

今回は何と言っても<ジル>が綺麗! ティコ・ムーンのジュリー・デルピーは真っ赤な髪でしたが、今回は<青>。。。近未来のニューヨークも、仄青いグレーの都市。青い涙の浴槽に身体を沈めるジルと、彼女を抱き上げるニコポル、、、。
「LES FLEURS DU MAL」の詩を呟くのが好きなニコポルを演じるのは、、、こちらも大好きなトーマス・クレッチマン。。ジル=リンダ・アルディがミス・フランスで、クレッチマンが水泳のオリンピック選手なのだから、その姿が美しくないわけがない。彼らと、シャーロット・ランプリング以外の役者が、すべてCGという無機質な世界で、その生身の人間の美しさが際立つ。

「LES FLEURS DU MAL」の詩とは、、、シャルル・ボードレールの『悪の華』

この映画のストーリーが不十分とか、CGの人間が未熟とか、、技術至上主義の方ならいくらでも文句の付け所はあるでしょう、、、でも、、、近未来のNYで『悪の華』を口ずさむ世界観に共鳴できれば、、、好きになれるはず。

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近未来都市で『悪の華』、、、という感覚は、大正期の東京でボードレールを愛した文人たちの感覚ときっと近いはずです。

そう感じたから、、、北原白秋の「東京景物詩」の中から、、、「雪ふる夜のこころもち」の冒頭部を。

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今夜も雪が降つてゐる。

Blue devils よ。 / 酔ひ狂つた俺の神経が―― / Sara …sara…とふる雪の幽かな瞬(またたき)を聴きわけるほど―― / ひつそりと怖気づく、ほんの一時の気紛につけ込んで、 / 汝(おまへ)はやつて来る……ふるひながら例の房のついた尖帽をかぶつて、 / 掻きむしつた亜麻色の髪(け)の、泣き出しさうな青い面つきで、 / ふらふらと浮いた腰の、三尺ほどの脚(たけ)うまに乗って、 / ひょつくりこつくり西洋繰人形(あやつりにんぎよう)のやうにやつてくる。

硝子の閉つた青い街を、 / 濡れに濡れた舗石のうへを、 / ピアノが鳴る……金色のせん音の / 潤むだ夜の空気に緑を帯びて消えてゆく。 

雪がふる。………/ 湿った劇薬の結晶、/ アンチピリンの、(頓服剤の、)粉末のやうに―― / それがまた青白い瓦斯に映って / 幣私的里(ヒステリー)の発作が過ぎた、そのあとの沈んだ気分の雰囲気に / 落ちついた悲哀(かなしみ)の断片がしみじみと降りしきる。 (長い詩なので以下略です)

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エンキ・ビラルのコミック、映画の原作にもなったニコボル三部作、こちらもいつか読んでみたいな。
ニコポル三部作〈1〉不死者のカーニバル

言語表現の実、、、

2005-08-19 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
この夏、とある授業に出ました。
その先生がたいへんに美しく、そして
美しさと一緒に、愛らしさというか、可愛らしさというか、両方を持った素敵な先生でした。
「私は○○にとても興味があってね、、、」という、その興味を追い続けて、プロフェッショナルになられた方。

そういうプロフェッショナルな人というのは別に学問に限らず、音楽家であれ、宇宙飛行士であれ、職人さんであれ、、、そういう方の特別なお話を聞かせて貰えるのは、私にとって、例えばジェフ・ベックのLIVEでギターを聴くのと同じくらい胸がときめくこと。で、その方が素敵に可愛らしいなんて、とても魅力的ではありませんか?

だから、卒業しても私はきっとどこかの講座に出かけていったりするんだろうな。最前線にいる方で、しかも誰かに自分が苦労して培った、その成果と楽しみを、快く受け渡そうとしている方のお話は、じつに楽しくて、嬉しいものなんですもの。

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今年はサルトル生誕100年にあたる。
と、新聞の読書欄にありました。『サルトルの世紀』ベルナール=アンリ・レヴィ著、と、『サルトル 「人間」の思想の可能性』海老坂 武著、が並んでいた頁。いつも気になる書評は切り抜いておくのだけど、最近は切り抜いたきり忘れてしまう事も多くて、、、むやみに溜まるだけだし、、覚え書きはブログへ、、。

サルトルの『嘔吐』には、JAZZのレコードをかけるとても重要な場面がある。あそこを読んだ時、とても違和感を覚えた記憶がある。タイトル(今思い出せないけど)が書かれていて、歌詞の一部も書かれていた。その曲が流れ始めると、、、嘔吐感が消えるのだ。。。サルトルもカミュも(確か)JAZZが好きなようだけれど、言葉の描写の中に、文字表現を超えた、あるひとつの曲(その曲が聴覚をとおして心理に及ぼす作用を含めて)を重要な試金石にしてしまうこと、、、そのことはすでに言葉による描写を放棄していない? 「実存は本質に先立つ」と言った人の意識は、この曲で嘔吐が消えた瞬間、本質のもとに身を投げていないかしら、、、? 私は哲学者じゃないからよくわからないけど。。。

三島由紀夫の『憂国』の映画フィルムが発見されたという。
今までも映画が全く観られていなかったわけではないですが、このフィルムを元にDVD化も考えているとか。。余り観たくない映画ではある。。
決して思想的にどうのという意味ではなくて、『憂国』(小説)には感動を覚えました、高校生の頃。もう十数年読んでいないけれど、おそらく今読んでも美しいと思うでしょう、、、だからこそ、、三島の映像あるいは、写真作品には、意味を見出せないのです、、彼のコンプレックス以外、、、。割腹の血と内臓見せて、『憂国』の何を表現します、、、? 三島は実存主義者ではありませんから、、、言語表現において本質を描いてしまった(描けてしまった)ものを、なぜ映像化しますか、、、ね。

・・・などと、20世紀を代表する文学者ふたり、、ふと思い出していました。

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NHK-BS。。。せっかく、久しぶりに渋谷サンにお目にかかれると思って楽しみにしていたのに、、、「こんばんわ、渋谷陽一です」っていつものお声が聴けただけじゃないですか、、、(笑)

若さとは、ワインを飲まずして酔っている状態なのだ、、(ゲーテ)、、か。

2005-08-13 | 映画にまつわるあれこれ
映画の話、3つ。。。

前にも書いた映画『青い棘』の日本版オフィシャルサイトが、出来ていた。
監督さんや、俳優さんのインタビューや、
実際の事件のことなど詳しく載っていて
とてもわかり易いのだけど、映画の中ではその辺り、逆に余り説明されていない。
美しい映画には違いないし、、ギュンターはやっぱりアウグスト・ディール以外考えられない適役だし、、、他のキャストも音楽も好きなのだけど、、、“愛”のために死す、という、ギュンターの“愛”は、、、誰に向けられていたんだろう、、ハンス? パウル? 妹ヒルデ? あるいは自分? 全部当て嵌まるようで、当て嵌まらないようで。。。

でも、きっとまた秋の公開も観に行ってしまうと思うな、、。

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友達に、「観に行く?」と尋ねたら、「痛そうだからイヤ」と云われてしまった映画、、、
カート・コバーンの死にインスパイアされた、ガス・ヴァン・サント監督、マイケル・ピット主演の映画『LAST DAYS』。
カートの死に衝撃を受けてしまった世代ではないし、、むしろ、、カートが可哀相な子供にしか思えなくて残念でしょうがないのだけど、、監督にも信頼がおけるし、音楽もサーストン・ムーア(SONIC YOUTH)だというし、公開されたら観たいと思ってる。。でもきっと、、周りは、カートを想って止まない子ばかりだろうな、、、そっちの方が痛い。

写真では、マイケル・ピットの横顔が、とてもよく似ていると思う。髪を耳の後ろにかけている所など、とても。。こうしながらギターをかき鳴らしている時のカートが、とても好きだ。「MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク」は素晴らしい。

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ジャック・ケルアックの小説『路上 On The Road』が映画化されるそうだ。
キャストは誰・・・? もし7、8年も前だったら、ぜったいジョニー・デップもケルアック(サル・パラダイス)を演じたいと思ったことでしょう。(『ビートニク』ではケルアックを演じています。
破天荒なニール・キャサディは、、こちらも、もう少し若かったら、エイドリアン・ブロディなんかがいいと私は思うのだけど、、、。私は彼の、ピアニストとは全然違う、エキセントリックな演技が好きです。  (『ヴィレッジ』という映画の彼の演技もとても良かったし、、、主演のブライス・ダラス・ハワード(ロン・ハワードの娘)も美しかったし、ホアキン・フェニックスや、シガニー・ウィーバーや、いいキャストなのに、、、如何せん脚本が、、、。もしこれを映画館で観てたら、相当怒るかも。。閑話休題)

・・・でもなぁ、、、『路上』、、、ジョー・ストラマーも死んでしまったし、、音楽は彼がやったら良かったのになあ。。
『路上』日本版にして、マーシー(ケルアック)&ヒロト君(ニール)なんて素敵ではないでしょうか(あ、彼らももう40代だったね?)