星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

楽器の歌声…♪:ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 川崎定期演奏会 第89回

2022-11-30 | LIVEにまつわるあれこれ
ミューザへ東響さんを聴きに行って来ました。

良かった! 感激しました。 いつでも感動をくれる東響さんとノット監督、 ほんと素晴らしいチームです。 あとで書き直すかもしれないけど、 忘れてしまわないうちに感動だけ…


シューマン:「マンフレッド」序曲
シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
 ヴァイオリン:アンティエ・ヴァイトハース
アンコール バッハ:パルティータ第2番 より《サラバンド》

ベートーヴェン:交響曲 第2番 ニ長調 op.36

ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団

 

シューマン マンフレッド。 指揮台に乗った瞬間、 ひららら~~と手をうねらせて曲を始める唐突な感じに私がちょっと戸惑い、、 (なんかあれ? って感じ) よくわからないけれど一瞬気をそがれて それで集中を欠いてしまった自分。。 演奏は良かったと思う、、ニコ生見て よく見直したい。。

ヴァイトハースさんのヴァイオリン協奏曲。 なんという滑らかな音色! すごく難しいことをなさっていると思うのだが、全くそんな感じがせず 身体をしなやかに動かしているその魔法の匣から美しさが宙に溢れ出してくるかのよう… 
オケの対向配置のせいかコントラバスさんがしっかり聞こえ、ヴァイトハースさんの音の背後にバスがずーっと低く流れているのが見事に美しかった。 通奏低音という(音楽理論のことはわからないので文学理論で使われるような意味での骨格を支えているもの、という意味)言葉を感じていた。
ヴァイトハースさんは独りで前に出たりしない音。 チェロさんとのハーモニー、 オケのそれぞれとの調和がすばらしい美しさ。 特別な弦かなにかでもあるみたいな軋みも金属音もなにもない《音色》そのものが奏でられてうっとりした。

アンコールのバッハ。 もう溜息。。 ひっそりと祈りのように胸をうつ。。 でもものすごく難しいことを弾いているのだとわかる、、どうやったらあんな風に弾けるの… バッハ聴けて良かった。

ノット監督のベト2。 なんてフレッシュな、 瑞々しい躍動感ある演奏。。 東響さん大好き! ノット監督の指示にみごとなまでに反応して一体になる。 モーツァルトを感じるようなフレッシュな交響曲に。
マンフレッドの最初で感じた違和感みたいなのがどこにもなく、 第一楽章からラストまで、 ノットさんとオケが一体で立ち上がり、 鎮まり、、またうねり、、 はじけた。 最高! ベト2は短いし、 大曲でもないかもしれないけど、 退屈なところなんて全く無い発見が凝縮されていて、 今日のはCD化していいような演奏だったと思う。 フルートさん木管さん美しかった。

シューマンのなかにベトの第九ぽいところもあり、 ベト2番のなかにも第九に通じていく感じもあり、、(幸福の音色)、、 そんなところがノットさんは両者をならべた所以かなぁ、、、と想像。。 
こんな素晴らしいドキドキと音楽の冒険を味合わせてもらえて、 ノットさん東響さん 今年もありがとう~~、と カーテンコールで一生懸命手を振りました♪

あとで ニコ生見て 再確認します。


一週間のはじまり ☆彡


 *** 追記 ***

ニコ生であらためて視聴しました。

ヴァイトハースさんのバイオリンの音色は 配信で聴いてもその滑らかさ、 押しつけがましくない上質な音色であることが伝わってきます。 とりわけ第二楽章など、 弦を弾いている、という感じがちっともしなくて、 ヴァイトハースさんが体を揺れ動かすたびに音楽が立ち昇ってくるような、 そんな感じがします。 時おりチェロさんのほうを向いたりして、 チェロさんとヴァイトハースさん、 歌い合っていますよね。。
ヴァイオリンのきしきし鳴る音が好きでない私は オケと一体になるヴァイトハースさんの音色にうっとりでした。

会場で聴くと、 (録音のマイクは奏者の近くに置かれているでしょうから) ある程度の空間をつたわって届くヴァイオリンの音色はさらにまろやかになって、 楽器を奏でている、というより ヴァイトハースさんの身体が歌っているような、 音楽そのものが鳴っているという感じで、、

殊に、しんと静まり返った空間に バッハの《サラバンド》が立ち昇ってくるようすは やはり会場でしか味わえないもの… その《場》がつくりだすその場だけの音楽なのでした。。

驚いたのは、 ヴァイトハースさんの使っているヴァイオリンが現代の工房のものだということ。 ペーター・グライナーのものだそうです。
ウィキを見たら、 「人の歌声に近い楽器、つまり2,000 -4,000 Hzの周波数に焦点を当てた楽器を作ることを目指している」とあって、、 それだからあんなに自然な 金属ぽさの無い穏やかな音色なのかな、、と思ったりしました。
 (シュテファン=ペーター・グライナー wiki >>


先に戻って 「マンフレッド序曲」、 聴き直すほどに好きになっていく曲です。 憂愁と不穏さ、、 そのなかにある英雄的な調べ。。 詩人バイロンの書いた詩劇「マンフレッド」は ほんの一部しか読んだ事がないけれど、 これもまたあらためてウィキでおさらいをすると、 マンフレッドが精霊たちに「忘却」をくれと求めて、それはできないと拒絶される、、 あぁまさにロマン派だわ… 、、 忘却がかなわぬならば追憶にさいなまれるしかない… 
シューマンのメロディにはそんなバイロンの葛藤や想いがよくあらわれているようです。

ベートーヴェン2番は付け加えることなし。。 ニコ生のカメラさんがいろんなパートさんを切り替えて映してくださるごとに、 それらのパートさんの生き生きした音色とノットさんの動きが共鳴しているのが楽しくて、、 もう一度見たくなります。








今年もミューザのクリスマスツリー見れました

ラインナップ♪

2022-11-25 | …まつわる日もいろいろ
午後の陽に照らされて 色づいた桜の葉が一層明るくかがやいています。

まるで光の果実がなっているよう…

 ***

来季の交響楽団のラインナップが発表されて嬉しい悲鳴をあげています。。 どうしたらいいの…? 毎月行きたい公演が…

今度はいつかなぁ… と待ち望んでいた ウルバンスキ君はなんと、 東響さんの来季幕開けとともに。。 4月なんてあっという間です、、  見られるとしても秋くらいかしらと思っていたのに、 最初だなんて 4月だなんて 急に胸がそわそわ… しかも二種のプログラムだなんて嬉し~…♡

東響さんによる「新世界より」のプログラムは たぶん毎年のように演奏されているでしょうし、 私も以前に聴いています。 けどそんな有名曲を あえてウルバンスキ氏がなさるというのは、、 ん~ マエストロ、 なにかきっと企んでいますね。。 《あの》ウルバンスキ氏の《あの》「新世界より」が聴けるのは (どんな風になさるかわからないけれど…) とっても楽しみ。。

それに東響さんと井上道義さんで武満メモリアルホール、、 行きたい。。

秋には ゲルハルト・オピッツさんのピアノと伊藤文嗣さんのチェロが。。 想い出します、、 去年の暮れのブラームス ピアノ協奏曲でのオピッツさんと東響さんとの共演、、 すばらしい音色の響き合いでした。 あのときのオピッツさんやノットさんの嬉しそうな笑顔、、 眼に焼きついてます。。 

、、いろいろ行けるといいなぁ…

都響さんにも魅力的なソリストの方々がたくさん名前が載っていて、、 どうしましょう。。 どう選んだらいいんでしょう…

 ***

コンサートホールの

呼吸をするのもそうっとひそやかに、、 静まりかえった空間に最初の一音が鳴る あの瞬間、


あの緊張と喜び。


そこに出かけられるということの しあわせ。


当たり前ではないんだよ、、 簡単なことでもないんだよ、、 今では特にそう思う。。 コロナや戦争や 自分の健康や 環境や、、


、、 一夜かぎりの その曲  その響き

 
その 有難さ。




今年最初のミルクティーを飲みながら…


プログラムを眺めているだけで幸せな夢がふくらみます。。




そのころ…


平和になっているといいなぁ…



いろいろな不安や いろいろな心配が…  消えているといいなぁ…


 ***



どうぞ よい週末を。




半袖で…

2022-11-22 | …まつわる日もいろいろ
今朝 素敵な夜明けの月がかかっていました。



朝6時まえの東の空。。


10日ほど前のフォトには 美しい雲ととろんとしたお日さまが写っていました。




 ***

朝陽をいっぱいに浴びて始まる一日はそれだけで幸せ。。

、、最近 ちょっと不思議に思っているんですけど、 私、、 半袖なんです。 今も。。 去年もこんなだったはずはないと思うんだけど… 温暖化? それとも単に更年期?? 笑… 筋肉量が増えた? … 謎。。

朝日のあたるお部屋はたしかにぽかぽか暖かいのですけど、 もうすぐ12月になるというのに。。 
夏からずーっとヘインズのレディースTシャツにキャミワンピで過ごしているような…。。 

報道では 節電のためにタートルネックでお仕事しましょう、という ウォームビズ? ヒートビズ? の話をしていましたね。。 でも まだまだタートルのお洋服など着れないゎ。 暖房もまだ一度も点けた事ないし、、。 ん~~、やっぱり温暖化傾向なんだと思う… (ウチだけ??)

そんな感じで Tシャツ姿でお炊事したりお洗濯干したり、 断捨離のつづきをしています。。 
(午後になるとさすがにカーディガンを羽織ります)
、、 断捨離、、 永遠に終わらない気がします 笑。。 理想の パリのアパルトマンに棲んでいるような老女をめざすには、 ひとつの本棚とひとつのチェストにクローゼット、 それから ひとつのテーブル、、 そんなシンプルな暮らしにおさめたいのだけれど。。

ある詩集の間にはさんだ 沢山たくさんのチケットが出てきたり…。 ついつい一枚ずつ眺めてしまいます、、


初来日の思い出はなかなか捨てられないね…。 87年と97年、、 35年前と25年前…


 ***

「そして西風がきたら、其の鍵を見せ、こわがったり、あがいたりしないで、西風の意のままに運ばれるのだ…」


、、 昨日読んだ物語から、 灰色の老人の教え。


これを引用するのは特に深い意味はないけれど、、 なんだか今の気持ちに添っている気がしたの…。 こわがったり、 あがいたりしないで、 風の意のままに運ばれなさい という教えが。。

いつの間にか年をとり、、 この物語の青年のように冒険の旅にでかけることはもうないかもと思うけれど、 でも 旅はいつでも続いているから。。


いのちの旅は いつでも冒険。



ガラスの鍵と…



あとは 勇気…。




あしたは勤労感謝の日  お疲れ様です。



面白いですから続編もぜひ☆:『ホープ・ネバー・ダイ』アンドリュー・シェーファー

2022-11-10 | 文学にまつわるあれこれ(鴉の破れ窓)
アメリカの中間選挙、 事前の予測に反して民主党が善戦していて、 ようやくこの本の紹介ができます。。(選挙の最終結果はまだかかるとか…)


『ホープ・ネバー・ダイ』アンドリュー・シェーファー著 加藤輝美・訳 小学館文庫 2021年


この表紙、 アメリカ本国での本の表紙と一緒だそうですが、 これが全てを語ってくれてます。 この絵見て、、 右下の人 「誰?」って言う人には向かない小説です…笑 、、まるでお抱え運転手のような地味な扱いのこの方こそ 小説の主人公です。 すっくと立って目立っている人のほうではありません、 あくまで。。

ジョー・バイデンさんとバラク・オバマ氏おふたりがフィクションの中で大活躍するハードボイルドアクションコメディ、、(コメディでいいんですよね…? 笑っていいんですよね…?)
この本読んだのは今夏のことでしたが、 感想をUPしようかという頃 政界を揺るがす事件が起きてしまったり、 米国では大統領の健康問題を懸念する報道などあったりで 書く機会を逸してしまいました。

物語の時代はトランプ政権が始まってしばらくした頃のこと。。(でもトランプ氏はこの小説には全く出てきません)
 
オバマ政権での副大統領職という大任を終えられたジョー・バイデンさんは ウィルミントン郊外の自宅で奥さまのジルと二人、 のんびりと しかしどこか心浮かない日々を過ごしていた… どうして浮かないかと言うと、 退任してもなおバラクのほうはメディアの注目を集め 自由を満喫しまくっているようだ、、 なのに 自分にはひと言も連絡をくれない、、 あんなに二人で頑張ってきた日々だったのに、、 ちょっとくらい誘ってくれてもいいではないか、、 悶々… というバイデンさんの物語の始まりです 笑。

この冒頭の描写からしてもそうなのですが、 どこかバイデンさんには(気の毒な…)というイメージが付きまとってしまいます。。(ゴメンなさい…) 大統領となられた現在でも、 ヘリコプターから降り立って必ず数歩 小走りして見せる姿とか、、 ほんとうに眩しいのかもしれないけどレイバンのグラスでタフさをアピールしている姿とか、、 失礼と思いつつ気の毒に思えて(つい笑って)しまうのです…

そんな(気の毒な)バイデンさんのイメージをそのままに、、 前副大統領ジョーと前大統領バラクとがコンビを組んで、 秘密裏に(?)殺人事件の真相を追っていく。。

もう バラクとバイデンさんとの比較対照が可笑しくってたまらないのです。。 この著者さんは心から前大統領と前副大統領を愛しているのはわかります、、 けど 誰もが思っているバイデンさんのイメージ、、 ご老体に鞭打って とか ついつい思った事をポロっと口にしてしまう とか 思い違いとか記憶違いとか、、 ひたすら(気の毒…)笑
それに対してバラクは超スマートで頭脳明晰 なんでもたちどころに理解して 出会った人も一瞬でバラクの弁舌に魅了されてしまう… だからこそ頑張るバイデンさんが気の毒で可笑しくて、、

 ***

いろいろ日本とは違うところも知りました。。 アメリカでは大統領退任後 SPはいつまで付くのか、 副大統領に対してはどうなのか、 とか。。 合衆国大統領という存在はほんとうに偉大なのだな とも思います。

この物語では バイデンさんとアメリカの国鉄のようなアムトラック鉄道とのつながりが下敷きになっていて、、 「アムトラックジョー」との異名をもつほど バイデンさんは上院議員時代に毎日ワシントンと地元デラウェアのウィルミントンとをアムトラックに乗って通勤していたそうなのですが、、

その理由を(小説では出てこなかったと思います) ウィキで知って胸が痛くなってしまいました。。 (ジョー・バイデン wiki >>

 ***

これを書いている今日、 バイデンさんは 2024年の大統領選への再出馬の意向、、 だとか。。 『ホープ・ネバー・ダイ』の小説のなかでさえ 自分の年齢や体力を案じて 2020年の大統領選への出馬をどうしようかと思い悩む姿がありましたが、、 (これを書いていた著者さんさえ 本当に最高齢の大統領になってしまって しかも2期目もめざすなどとは考えていなかったのでは…?)

今もなお、 (少し腰が屈み始めた)バラク・オバマさんと二人で党大会の先頭に立ち、 決して後に引けない想いで合衆国の民主政治を一身に背負って立たねばならないバイデンさんは やっぱり気の毒に思えてしまいます。。 笑うなどもってのほかです。。 だからこそいっぱい笑えるうちに続編の『HOPE RISE AGAIN』が読みたいです。。 こちらの編集者さんの「小説丸」で書かれている続編の書影を読んだら やっぱり可笑しくて、、(小説丸 編集者コラム>>

バラク&バイデンお二人が登場するという以外にも、 ハードボイルドアクション小説としても十分に読み応えある面白い作品ですので 是非。。



、、 あれから 毎日の朝ごはんの準備で冷凍ブロッコリーを手にするたびに バイデンさんのことを思い出しています 笑。。 (理由は本書で…)

マエストロ素敵でした…♪:井上道義指揮 NHK交響楽団 横浜みなとみらいホール 大ホール

2022-11-04 | LIVEにまつわるあれこれ


1年ぶりの横浜みなとみらい。。 
みなとみらいホールで演奏会を聴くのは 2020年のニューイヤーコンサート以来でしょうか。。

本日の指揮者 井上道義さんはずっとずっと観てみたいかたでした。 TVや動画などで指揮するお姿は幾度も拝見していて、 そのエネルギッシュでエレガントな指揮の様子をぜひ実際に、 とずーっと思っていたのですがなかなか機会なく、、 そうしているうちに 24年末での引退宣言・・・ 吃驚でした。。

今回の公演はつい数日前に決めたのです。 席が取れそうだったのでお友だちに(急だけど…)と尋ねたら、、 (わたし達の年になると、機会があったら逃しちゃいけないよ)とOKしてくれたので歓び勇んで、、♪

ところが、、ね。 公演直前になって、 みなとみらいホール改修後の騒動が。。 
バルコニー席の手すり前に落下防止の金網が設置されてしまってステージが見えないと‼ 、、そんなバカな… って思いましたよ、、 だって、指揮者さんや楽団員さんを間近で見たいが為のサイド席なのですもの。。 クラシックコンサートゆえ立ち上がって見る人もいないでしょうし、 なぜこんな網が? と思ったら、 スマホやチラシの落下が今までにあったというのですが、、 それなら丁寧にアナウンスして鞄に仕舞うなどすれば良いこと、、 
片耳失聴の私はバルコニー席が好き。 今回取ったのもバルコニーでした。。

前日になって急遽、 席は振替して下さるとの通知が出たものの (どんな感じか行ってみて決めようね…)と出かけてみて、、 実際すわってみて、、 見えなかったです。。。 手すり下に新たに取り付けられた鉄柵とともに、 なんだか檻に入れられたみたいな存在感。 多少の不自由ならバルコニーにいようと思ったのですが、、仕方なく正面席に振り替えていただきました。。 

 ***

でも、 演奏会はとても素敵でした。 ホール完成お祝いにふさわしい楽曲、 美しいパイプオルガン《ルーシー》を正面に、 ステージに飾られた薔薇が華やか。

シュトラウスⅡ : ワルツ《南国のバラ》
マーラー : リュッケルトの詩による5つの歌曲
サン=サーンス : 交響曲第3番「オルガン付き」

井上道義指揮 NHK交響楽団
カウンターテナー: 藤木大地
オルガン: 近藤岳


マエストロミッチーは登場の瞬間から魅せて下さいました。 台に乗る動作もしなやか、、 客席に振り向いて バレエダンサーのように脚を交差させて礼・・・ そして始まったシュトラウスの指揮ではほんと踊っておられました。。 道義さんの後ろ姿はとてもすらりと脚が長くて 指揮台のうえでバレエを踊っているようで、、 (私が踊れるなら…)駆け寄ってその隣で一緒に踊り出したい感じでした。。 そんな気分に誘われる演奏でした。

じつは私、 N響を生で聴くのが初めて。。 N響さんは安定の、 堅実で重厚な響きの楽団、、というイメージで、 どちらかというと指揮者さんへの反応がはっきり現れる演奏が好みの自分は 今まで観る機会なくきてしまったのですが、、 やはり安定感はさすが、、 弦の音色もとても美しく感じました。

マーラーのリュッケルトの歌曲。 
付け焼き刃の予習では テノールの男性と、 ソプラノの女性の両方の歌唱を聴いていました。 けど、 カウンターテナーの方の歌唱は見つからなかったので想像がつきません。。 どんな感じなんだろう、、と楽しみにしていました。

始まってびっくり・・・ 素晴しいです。 藤木さんのお声はハイトーンなのに厚みと深みがあって とても安心感のあるお声です。 そして感動したのが そのお声が木管楽器の音色とぴったり合うのです。 先に聴いていたテノールやソプラノ歌手のかたの歌唱が、 演奏の前面に、 うまく言えないけど別の存在として際立つのに対して、 藤木さんの歌唱は楽器そのものとなって楽団さんと共に歌っている感じ。 N響の木管さんも美しかった~。

第5曲は演奏がフィナーレへ向けて大音響になっていくので、 テノールの朗々と高らかに歌い上げる迫力にはかなわないかなーーと思う所はありましたが、、 たぶん私の耳と席の関係でしょう。。 もう少しステージに近かったらよく聞こえていた筈。。 
カウンターテナーで歌うこの歌曲、、 私はとても好きになりました。 テノールやソプラノで聴いたよりも 藤木さんの歌唱とN響がひとつの世界になっていたようで、 素晴しかったです。

休憩をはさんでの サン=サーンス 3番
、、席の振り替えのお陰で 正面後方で聴くことができてこれはこれで良かったのかもしれません。 ホール全体で奏でられるパイプオルガン。 ひとつにまとまった重厚な演奏。。 N響さんの一糸乱れぬ弦の響きに 祝祭感あふれる金管の艶、、 

でもほんの少し欲を言えば、、 ミッチーの指揮の動きにもっとビビッドに反応するN響さんの演奏も聴いてみたかったかな。。 あのシンコペーション(と言うのだろうか)のところ、、 ミッチーはかなり溜める感じで指揮なさっているように見えたし、 ちょっと打楽器さんが合ってない部分も? あと、フィナーレ近くの金管さんの和音が…。 でもどれも小さなことです。。 

2年前にこのホールで聴いた秋山先生の東響さんも、 とても柔らかな暖かい音色に響くホールだなと思いましたが、 今回もホール全体がつつまれるようで、 全体的にとても優しいひとつのまとまりを感じました。 心配したような金網や鉄線がパイプオルガンの響きに共振するようなこともなかったように思います。。 それだけにやはり元のステージ近くの席で楽団さんと指揮の姿を見たかったなーー

そんなことを思いつつの終演。。 拍手の後、 井上道義さんは 「今日のN響すばらしかったと思わない? このホールも…いろいろあったけど、 みんなでこのホールを育てていきましょうよ!」 と笑顔で。 その言葉を聞いてなんて大きなかただろうと思いました。。 開幕にケチが付いてしまったなどと私が思ったのに比べて、 ミッチーはこの先ずっとこのホールで音楽が奏でられ、人々に愛されホールが育っていくということを考えていらっしゃる。。 まさに文化は育てていくもの、、 お役所とか誰かに作って貰って与えられるのが当たり前と思ってはいけないのですね。。

 ***

これを書いている間に、 ミッチーがブログを更新していらっしゃいました。 昨日のことを振り返って…
https://www.michiyoshi-inoue.com/2022/11/_nhk_1.html#blog

これを読んでふたたび自分の狭量さを反省します。。 「赦し」という言葉。。 井上さんが来年なさる自伝的オペラのテーマでもありますね。。 そして、、 ミッチーは本当にバレエをなさっていたのですね、、 わぁ牧神だ、、 

昨日の道義さんも大変スタイリッシュでエレガントな動きで どうして引退など… と思うほどで…。 またミッチーの指揮する演奏会、 観に行きたいです。。 行けるといいな。






みなとみらいは早くもクリスマスの輝きにあふれていました。



これから年末への日々、、



やすらぎと



ぬくもりある時間になりますように…






山里の記憶とともに…:『土を喰ふ日々 わが精進十二ケ月』水上勉

2022-11-01 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
11月になりました。 

このところお天気も良い日がつづき 朝晩もひんやりしてきて、 暖かいお料理 秋から初冬への味覚が美味しい季節ですね。

以前に書きました(>>)水上勉さんのエッセイ本 『土を喰ふ日々 わが精進十二ケ月』について、 あれから読んでみました。 新しい新潮文庫のほうでも良かったのですけど、 お料理の写真が大きく写っている1978年版 文化出版局の本のほうにしました。

ちょっと話が逸れますが、、 この古書を開いて眼にして、 とても読みやすくほっとすることに気づきました。 紙の手触り、 本文の活字の線の感じや大きさ行間、、 そして白黒写真印刷のきめ、、等。 、、見たら精興社さんの印刷でした。

本づくりに詳しくはないけれど、 活版印刷の時代の本づくりにちょっとだけ関わったこともあるので、 活字のかたちや天・地の空きなど、 細かな違いで読む時の印象がとても変わると思っています。 自分の好みというのもあるし、、。 だから最近読んだ本でも とにかくもうちょっと活字を綺麗にして行間を空けてくれたらいいのに… とそれだけでストレスになって、 ストーリーがうまく頭に入って来ないことがたまにあります。。 

ともかく、 この古い『土を喰ふ日々』は、 本の頁にも精進料理のような滋味を感じる御本でした。 

 ***

軽井沢に住む水上勉さんの、 ひと月ごとの精進料理のかずかず…。 
…あ、、 「精進料理」ということばの意味さえ 私、ちゃんと分っていませんでした。。 お肉などのいきものの食材を使わないお料理、 としか認識していませんでした。 水上さんの書かれている、 日々そのときある食材で工夫をすることや、 素材の声をきいて 昨日つくったものを少し新しく進めてみること、 「先徳の料理からさらによくしろといった意味であること」(二月の章)とあるのを読んで納得しました。。

幸いなことに 山里育ちの自分は、 この本で水上さんが作られているお料理の味を、 実感として 体験として 思い描くことができます。 いろいろな種類のお豆の煮たものも、 山うどや山菜の和え物も、 クルミ味噌や高野豆腐(凍み豆腐)や自家製の梅漬けなども、、。 味覚の記憶というのは、 実際に経験がないと思い描けませんものね、、 料亭でほんの少しいただくのと 田舎の手作りで丼に盛られたのとでは味も異なってきますし。

、、 東京に住んでまもない頃、 初夏のこごみ(水上さんは こごめと書かれています)が食べたくて スーパーで探したら、 パックにほんの8本くらい並べられているのを見て (これじゃ丼いっぱいのこごみのおひたしなんて無理ね…)と諦めました。 あれ以来 都会で故郷の食材を求めるのはやめにして、 その地元の旬のものをいただけば良いのだと思うことにしました。 その地を、 「土を喰らう」ということですね。

、、そんなふうに 少し懐かしく思い返しながら水上勉さんの季節感あふれるお料理を読ませていただいて、、 でも一点だけ、 どうにも可笑しくてふき出してしまったところがありました。

それは「きのこ」について。 九月の章です。

  土の味といったが、しめじほど、土くさくて、山くさい喰いものはない気がする。 落葉松の木が露しずくをたらしてあんな妙なカビを生やすとは、樹木の神秘性をうかがわせてあまりあるが、いつも思うことだけれど、最初に化物じみたカビを喰って、これはうまいぞと人にすすめた人に感謝しなければならぬ。

・・・爆笑しました、、 カビって。。 そりゃキノコは菌類ですけど…

水上さんは 松茸についても 栄養素のなにもない 「水のような松茸の香りだけを喰うのだろう」と書かれていて可笑しくなりました。。 菌活などという言葉は最近ですものね。 70年代のこと、 カロリーの無いキノコは季節感はあっても栄養は無いと考えられていたのかもしれません。 でも山国育ちの私はキノコ大好き、 ほぼ毎日きのこを食べない日はないくらい。。 カビだなんて失礼きわまりないです(笑)

きのこが腸内環境をととのえるとか、 免疫力を高めるとか、 ビタミンDが骨粗鬆症を防ぐとか、 しめじに含まれるオルニチンはしじみの8倍もあるとか、、 どれも最近言われるようになったこと。。 だけど、「化物じみたカビ」の効能を昔のひとはちゃんとわかっていたんでしょうね、、 健康長寿ときのこ、 水上勉さんに教えてさしあげたいくらいです。

 ***

水上勉さんが書いておられる 「零下十五度という寒気」も 「土もねむり樹も草もねむっている」という実感も、 この身で味わってみないとわからないものです。 そうしてみて初めてわかる「真冬の貯蔵庫から、芋一つ撫でさすりながらとり出す気持ち」

いま 検索してみて知ったのですけど、、 「お菜洗い」って言葉は全国区ではないんですね…笑
11月はお菜洗いの季節です。 水上さんの本にはお菜洗いは出てきませんでしたけど、 上記の冬の記述を読みながら、 冷たい水に手をまっ赤にかじかませてお菜を洗い、 真冬の朝、 桶に張った氷の下からお菜を取り出したときの冷たさ、 朝陽にきらきらと光る氷のしずく、、 そういう食の記憶がよみがえってきました。。 いやはや、 都会人は便利な食べ物だけまいにち食べているのですね、、





きょうのお昼ごはん。 昨夜のお味噌汁にカボチャとブロッコリーとピーマンを加えてミルク仕立てに。 しめじとエリンギのマヨ炒め。 フライパンに残ったオイルで焼きおにぎりにしてチーズのせ。 平日はいつもこんな。。 代りに週末はお鍋やお寿司や餃子や食べたいものドーンと頂くの…♡



今月もおいしく


すこやかに。



せめて 毎日ほんの少しの工夫を、、 「精進」のことばの意味を思い出して ご飯支度をしようと思うのでした。。