星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

祭りだわっしょい!…からの…:サマーミューザ東京交響楽団 オープニングコンサート

2024-07-29 | LIVEにまつわるあれこれ
パリ五輪開幕とともに、 川崎ではフェスタサマーミューザの開幕です♪

ミューザに行かなくてはならないから、 深夜2時からの開会式を観るのを..どうしようか 迷いましたが、 やっぱり観たい! 10時過ぎに寝て2時に目覚まし、、 でも結局 朝までずっと開会式を見てしまいました。

 ***



東響さん&ノットさんによるオープニングファンファーレは ミューザのサイトで見られます
 https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/

昨年はTシャツ姿でしたが 今年は大バッハさんと同じ真っ赤な法被姿。。 ノット監督もとっても似合っててみなさん素敵。

今年のチャイコフスキーは、 2番と6番。 特に2番はまず演奏されることの無い〈初稿版〉だということに気づいたのは、会場でプログラムを手にしてからでした。 プログラムと曲目解説はサマーミューザのコンサートページにリンクがあります。
 https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/calendar/detail.php?id=3843

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024
東京交響楽団 オープニングコンサート

チャイコフスキー:交響曲第2番 ハ短調 op.17『ウクライナ(小ロシア)』(1872年初稿版)
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 op. 74『悲愴』

指揮 ジョナサン・ノット


 (いつものようにクラシック素人の感想です。ご容赦くださいね)

今日の公演は満員御礼とあって、 会場はなんだかいつも以上の熱気に満ちていました。 
第2番(改訂版のほうですが)は予習の印象では(夏!)(明るい)(なんだか元気)、、という印象で、 だからプログラム解説にあったノット監督の言葉「よりクレイジー」な初稿版、というのがどんなことになるのかとっても楽しみに、、

そして、 ホルンによるウクライナ民謡の旋律から第一楽章が始まって、、 その第一楽章の途中から、、吃驚。 改訂版とは別物のすっごい演奏になりました。 (なんだか元気)どころではない、クライマックスの怒涛の盛り上がりかと思うようなエネルギッシュな演奏になって、、 ノットさんも身を前のめりにしてお顔を紅潮させてぶんぶん指揮なさってる… (あらら、ほんとにクレイジーなんだ…)

めったに爆音を出さないノット監督の東響さんには珍しいくらいの音、、だったけれど それぞれの楽器の音色はちゃんと響いていて、決して爆音のように混沌とはしないところがやっぱり東響さんは好きです。
つづく第二、第三楽章では フルート、ピッコロさんや、金管さんら、それぞれに前へ出る音色がどれもキラキラ元気で、 ここではやっぱり(夏)を感じました。 ウクライナの夏。 チャイコフスキーが妹のいるウクライナを夏に訪れた時に聴いたウクライナ民謡などが この交響曲のもとになっているそうですが、 きっとウクライナの夏は美しいでしょう。。 夏祭りとか人々の集まりもきっと賑やかだったでしょう、、 そんな事を感じる曲。

そして極めつけの第四楽章(かえるの大合唱)、、 というのは私の勝手な音印象ですけど、 日本の「かえるの合唱」と同じフレーズは、 ウクライナ民謡の「鶴」という曲だそうですが、 この可愛らしいフレーズがノットさんの初稿版2番では、 すごい速度であちらとこちらの楽器が競い合うように輪唱する、、その大パノラマが延々と。。 ここを聴きながら(やっぱり夏のカエルの大合唱にしか聞こえない…)と思っておりました。 すさまじくクレイジー(笑) 、、すごく勝手な想像を逞しくして…(日本に冬に来る鶴は、夏の間は北にいるのでしょう? きっとウクライナの鶴さん達は夏になるとウクライナでカエルをばくばく啄んでいるに違いない…)と、、休憩中にお友だちと語り合ってしまいました(どうぞお許しを…)

ものすごくエネルギッシュで新鮮で楽しく激しいチャイコ2初稿版、でした。

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休憩後の交響曲第6番「悲愴」。 こちらも今まで聴いた感じとは違った「悲愴」でした。

どこがどう、、とはうまく言えないのですが、 聴きながら思っていたのは (もしかしたら多くの指揮者さんの6番は、「悲愴」というひとつの世界を創り上げようとしているものを聴いているのかな…)と。。 私もチャイコフスキーが大好きだし、6番の胸に迫って来る美しい旋律を何度もうっとりとして聴いたものだけれど、、

なんだかノットさんの6番は、 全体の統一感とか、 ひとつの「悲愴」という曲のイメージとか、そういう全体像よりも、 その楽章、その楽譜、によってノットさんが考えたこと、 表現したいもの、 それを実現してみたい…という場になっていたような そんな気がします。 そういうところがノット監督の好きな部分だし、 それが驚きやわくわくに繋がるから聞き逃せないのですけど、、

前半の2番で、 若々しくエネルギッシュな音を出しまくった余韻が残っているのか、 管パートさんとか つい華やかに奏でそうになるのをノットさんが(抑えて抑えて)と合図するところがたくさん見られました。 そんなノットさんの左手の細やかな指示がうねりまくっていましたね、、 たくさんの想いを込めるように。。

ティンパニさんシンバルさんの絶妙なタイミングも(いつもながら)見事でした。 コントラバスさんの低音部もとてもとても効果的で、 とりわけ最終楽章のしずかな悲しみを支えているこの両方の楽器に心打たれました。

決して「悲愴」ばかりではない 躍動的でもあり、 優美でもあり、 情熱的でもある、、 きっとそれらすべてチャイコフスキーの音楽の持つ三大要素みたいなものだし、 人の人生、 ひとびとの生のなかの醍醐味だと思う、、 そのような時期を経て 最終楽章の「人生」の終わりへと向かう、、 決して悲愴じゃない、、 そんな印象と同時に、、

前半の2番のウクライナの夏のかがやきと合わせて聴いた場合には、 やはりどうしても現在の世界の悲しみも重ね合わせてしまう… しずかに鎮かに奏でられる最終楽章は 痛切な「祈り」のような楽章に感じられました。

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そんなエネルギー溢れるサマーミューザの開幕。。 そして史上最強の「暑さ」!!

オリンピックの舞台では、 熱さも涙も 輝かしく美しいもの、、 と思います
でも、 この地球上の猛烈な暑さや、 あってはならない涙は、、 なんとかならないものでしょうか…

開会式でパリ大会の会長さんが繰り返し繰り返しとなえておられた 「愛」… (開会式フィナーレの愛の賛歌につなげる意味も込められていたかもしれませんが)、、 世界への「愛」が …もっと もっと 必要なんだと思います。。 争いの惨禍などではなくて…



もうすぐ8月。  祈りの月、ですね…




愛と 平和と 音楽を・・・





カナダ建国の歴史と家族の物語(その2):『ライオンの皮をまとって』マイケル・オンダーチェ

2024-07-24 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
土用丑です。 暑いですね。

朝、お洗濯を干しにベランダへ出ただけで焼け付きそうに熱いですが 蝉が力いっぱいに鳴いてます。 お昼になるともう余りの暑さに蝉も鳴くのをやめて木陰で身を潜めてますが…

お身体だいじょうぶですか…? 今年は梅雨が短かったせいか、 わたしは思いの外まだ元気です。 昨年よりも確実に元気。 だから検査数値などより自分の感覚を信じて、 このまま楽しく だけど無理せず 夏を乗り切っていこうと…。

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17日のつづき。 2冊目はこれまでにも何度か書いていますが マイケル・オンダーチェ著の『ライオンの皮をまとって』を再読しました。 1910~1930年代くらいまでの カナダ、トロントの都市の建設に携わった移民たちの物語。

カナダ建国の歴史、ということに視点を置いて今回は読んだので、 以下 小説の内容にも触れていきます。 この小説を初めて読んだときのブログはこちらに(>>2019年10月) ⇦こちらの後半に小説からの引用を載せてありますが、 オンダーチェさんのこのような非常に詩的な文章に浸っていると 物語に陶酔するのが精一杯で、 この小説がカナダ建国と移民の歴史であるという側面は忘れてしまいがちです。

この物語の主人公パトリックはカナダ生まれだけれども、 父親はどこから来たのだろう… 母親の姿は最初から書かれていない。 のちに(『イギリス人の患者』にも登場し)パトリックの親友になるカラヴァッジョは名前からしてもイタリア系移民だろう。

パトリックの幼少期の記憶に登場する 冬場だけ木を伐採する季節労働者たちはフィンランドからの移民。 フィンランドにも森林などいっぱいあるのに何故カナダへ来るのだろう…と思ったりしましたが、 前回書いた『優しいオオカミの雪原』のなかにも、 雪原の北の果ての誰も住まないようなところに フィンランド人の共同体がありましたね。

上記2019年の日記に引用した部分は、 マケドニアからの移民テメルコフの場面でした。 この小説を読むまで、わたしマケドニアが何処に位置する国かもよく知りませんでした。 物語中のテメルコフがマケドニアを発ち、 カナダへ入国するまでの記述は苛酷です。 そのような苦労をしてまで仕事を得る為にカナダへ渡ったマケドニア人の移民たちは、 物語のなかでは同郷人が集まる町をつくって暮らしています。 主人公パトリックがマケドニア人共同体に受け入れられていく場面は優しい気持ちになりますね…

命知らずの男テメルコフは、 カナダ トロントの都市で鉄道橋の建設に携わります。 橋の上からロープでぶら下がり 宙づりで橋脚にリベットを打ち込む、 彼以外には出来ない仕事。。 そして或る夜、 橋の上から尼僧が誤って落下してくる。 片腕で受け止めるテメルコフ… 前に引用したのはそのあとのふたりの場面です。。

頭上から尼僧が降って来るなんて、 どうしてこんな鮮烈な場面をオンダーチェさんは思いつくのだろう…と、 何度読んでもくらくらしてしまいそうに鮮やかな場面ですが、、 この落下をきっかけに、 尼僧は別の人生を歩み始める。。 テメルコフもまた 橋の作業員からトロントに暮らすマケドニア人として生活を変えていく。。 そしてパトリックにとって重要な友となる。。

、、 このように『ライオンの皮をまとって』に登場するのは みんな移民たち。。 そしてのちにパトリックが暮らす クララ、アリス、アリスの娘ハナ、、 それからカラヴァッジョ、 テメルコフ、、 誰も血が繋がっていない者同士が支え合い、 (詳しくは書かないけれど) 誰かが不在のあいだは別の誰かが、、 そうやって不思議な《家族》を形成する。。 

移民が創り上げた国(そして、奥地へ追いやってしまった先住民との 融合とも分離とも言えない共生の国)カナダには そのような血のつながりを超える包容力というか柔軟性が蓄えられたのでしょうか、、 『優しいオオカミの雪原』にも血のつながりのない《家族》が複数えがかれていました。。 そして次回の『ノーザン・ライツ』にも…。

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『ライオンの皮をまとって』で移民たちが創り上げていくトロントの都市を 現実の写真を見て場面を思い浮かべてみると、 オンダーチェさんの描く詩的で静かな物語が、 じつはとてもダイナミックで壮大な舞台背景を持っていることに驚かされます。

テメルコフがぶら下がっていた橋脚の場面は プリンスエドワード高架橋
 https://en.wikipedia.org/wiki/Prince_Edward_Viaduct

物語にも登場する ハリス氏が手掛けていた水道施設は R. C. Harris Water Treatment Plant
 https://en.wikipedia.org/wiki/R._C._Harris_Water_Treatment_Plant

物語終盤の、 この施設への湖からの潜入などは、 実写化したらまるで映画「ザ・ロック」並みのアクション大作でしょう。。 ほんとうにこの巨大な水道施設にダイナマイトが仕掛けられたりしたことがあったかどうかは、、 存じませんが…

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『ライオンの皮をまとって』の物語は、 舞台を第二次大戦中のイタリアへ舞台を移して『イギリス人の患者』へと続きます。 『イギリス人の患者』の終盤で(ネタばれになりますが) ハナがカナダにいる(血は繋がっていない)母に手紙を書く場面があります…

 ・・・略・・・
 ヨーロッパはもういやです、ママン。私も家に帰りたい。ジョージアン湾に浮かぶピンクの岩と、あなたの小さな小屋へ帰りたい。私はパリサウンド行きのバスに乗りましょう。本土からパンケーキ島へ短波でメッセージを送りましょう。そして、待ちます。カヌーで私を救出にくる、あなたの影が見えるのを待ちます。 ・・・

         (『イギリス人の患者』土屋政雄・訳)


ハナは、 この物語のあと ママンのもとへ帰ったでしょうか。。 ママンがいるのは、『優しいオオカミの雪原』の冒頭にも登場したジョージア湾。そこに浮かぶ島。。 カラヴァッジョおじさんは… (この推測は以前にもちょっと書きましたが…) カナダへは帰らなかったようですね。。

ハナの育ったトロントには、、 もう誰もいなくなってしまったでしょうか。。 いいえ、マケドニア人の町はきっとあるはず、、 きっと テメルコフもそこにはいるはず。



マケドニアのパン、って どんなだろう…


いま 検索したら・・・


マケドニアという国土も紆余曲折あって、 今は北マケドニアという国家として残っているそうですが、、 山崎製パンのサイトにこんな素敵なマケドニアの朝食のお話が載っていました。。 『ライオンの皮をまとって』の物語にもつながるようなお話…♡
 山崎製パン 世界の朝食コラム(北マケドニア共和国)



では またね



食卓を囲むのが それが家族…

今宵、月のカフェで…

2024-07-19 | …まつわる日もいろいろ
梅雨 明けましたね。





暑くてもやっぱり 腫れているのが好いです… こんなふうに雲のフォトを撮るのもひさしぶり。。

 ***

先日、 月に大きな竪穴が見つかったというニュースがありましたね。

 月の地下に見つかった“空洞”は、月面探査に役立つかもしれない(wired.jp)

月の表面の穴というのは これまでにも見つかっていたそうなのですけど、 今度のは地下で横方向にも広がっているそうで、 将来の月面での滞在に有効利用できるかもしれないと…。

この記事をみていて思い出した本。 


『月の番人』 トム・ゴールド著 古屋美登里・訳 亜紀書房 2021年 (亜紀書房ウェブショップ>>

原題は「MOON COP」 月に人が住んでいる時代。 月の住人の暮らしを見守るお巡りさんの話。

淡々と、、 ちょっとおかしく、 ちょっと物哀しく、 そして可愛らしく せつない。


ほんとうに月で人が暮らす日がくるのかな…  ほんとうに大きな地下空間だったら、 そこに安全な居住地が出来て 街がつくれるのかもしれないな…

そしたら ほんとうに月のお巡りさんが 深夜のパトロール。


月のカフェに立ち寄ったりもして…



今宵は十三夜。



月のカフェからずっと地球を見ていたい…


カナダ建国の歴史と家族の物語(その1):『優しいオオカミの雪原』『ノーザン・ライツ』ほか

2024-07-17 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
カナダ建国の歴史にまつわる物語、 家族のつながりの物語、 を三作品つづけて読みました。 

最初に読んだのは、19世紀半ばの物語。 殺人事件の犯人を追うミステリー小説の筋立てなのですが、 登場する家族の いくつもの愛のかたちを描いた物語であり、 厳寒の地の壮大な自然と人間ドラマの物語でした。


『優しいオオカミの雪原』上・下  ステフ・ペニー 著 栗原百代・訳 ハヤカワ文庫 2008年 

この本を手にしたきっかけは、 この春 オーストラリアのハードボイルド小説2作を読んだ後(4月の日記>>) 今度はどこの国のミステリを読もうかしら… とあれこれ調べているうちにこの作品を見つけ、 カナダ… 19世紀半ば… なんだか未知の世界だわ…と思って選んだのでした。

  ダヴ・リヴァーはジョージア湾の北岸にある。夫とわたしは十二年まえに、ほかの多くの移民たちと同じようにスコットランド高地から追われ、ここに移り住んだ。・・・略
 十二年まえのここには木のほかになにもなかった。・・略・・ 鼻につんとくる静けさは、空のように深く果てしなく感じられる。この光景をはじめて目にしたとき、わたしは火がついたように泣きだしてしまった。ここまで自分たちを運んできた軽馬車が音をたてて走り去り、どんなに大声で叫ぼうとも、答えるのは風だけだ、という思いを頭から押しのけられなかった。・・略・・ 夫はわたしのヒステリーの発作がおさまるのを穏やかに待っていて、そのあと、凄みのある笑みをうかべて言った。
「ここには神より偉大なものはない」



物語のはじめのほうの描写です。 主人公の女性がカナダへ入植した時のことをふり返っているところ。。 この辺りを読んで、自分がカナダの移民の歴史のことなど何も知らないことに気づきました。カナダはおもにイギリス系とフランス系の人がいて公用語が二つある、というそれしか知らない。。 この引用のように、木のほかに何もない土地に置き去りにされて、さぁ今日からここで暮らしなさい、なんて・・・
この部分での女性のパニック、、 夫の凄みのある覚悟、、 短い描写でそれらを表現する作者さんの文章にも感心しながら読んでいきました。

ストーリーは、 この主人公の女性が、村の隣人が殺されているのを見つけた後、 犯人の足取り、 この隣人の謎、 主人公女性の家族や、判事一家の家族、 犯人追跡の捜査に来る男たち、 など この入植地の村に関係する多くの人を巻き込んで、 まるで映画のようにいくつもの場面と人物の視点を変えて展開しつつ、進んでいきます。 

殺人のあった晩に、 同時に姿をくらましてしまった主人公の息子を追って、 母である主人公は先住民の血を引く男と二人、 北の厳寒の地へ向かいます。 その雪原と湿地と森、 夜空とオーロラ、 といった自然の描写がとても美しいです。 ここでも自分がカナダの事、 何も知らないと気づきました。 カナディアンロッキーの風景ではないのです。 

本を読んだ後で、 たぶん「カナダ楯状地」という場所なのだろうと…。 五大湖から北極海まで広がる岩盤の地。 山は全然無く、至るところに大小の湖や湿地。 ウィキ(>>)に載っている写真とこの小説の風景は近いのだと思います。 ただし季節は冬に。 岩盤は一面の雪原と凍った湿地になっています、、 命がけの道程。

もうひとつ、 物語にたびたび出てくる「会社」という言葉、、 これが何なのか分らず、途中で検索しました。 「ハドソン湾會社」(wiki>>)というのは カナダの毛皮の独占取引から始まった会社だそうで、 この物語のなかでも、 先住民や罠猟師たちは毛皮用の獲物をとらえることで生計を立て、 鉄道も何もないこの時代の雪原のはるか奥地にも「交易所」という場所が設けられていて、 そこに「会社」の人間が駐在している。 金よりも高価な毛皮のために捕りつくされていく動物たち… 

カナダ建国の歴史と、 知らなかった自然の美しい描写と、 入植者や先住民の「会社」をめぐる現実、、 殺人事件の謎を追ううちに 次第にそのような歴史や暮らしのようすが見えてくるのがとても面白かったです。 

そして、 女性主人公の家族の複雑な愛のかたち…。 ここではあまり触れませんでしたが、 胸がせつなくなるような愛の物語も展開していきます。 主人公以外の登場人物たちの、 いくつもの愛と人生の物語も。。 これだけのドラマを詰め込んでも それぞれの人物の個性やドラマの道筋が、ごちゃごちゃにならずに描けるのは見事です。 ドラマがありすぎて、あの人はあれからどうなったのだろう… あの家族はその後… など続きを想像したくなる余韻もありました。

 ***

『優しいオオカミの雪原』ですっかり カナダの建国の歴史に興味をいだいて、 そういえばこちらもカナダの都市を建設する移民たちの物語だった、、 と 前にも読んだマイケル・オンダーチェさんの『ライオンの皮をまとって』を急に読み返したくなりました。 こちらは20世紀の初め、、 都市化の進むトロントが舞台でした。



『ライオンの皮をまとって』マイケル・オンダーチェ著 福岡健二・訳 水声社 2006年
『ノーザン・ライツ』ハワード・ノーマン著 川野太郎・訳 みすず書房 2020年

そしてもう一冊。 『ノーザン・ライツ』は、 さきほどの「カナダ楯状地」のさらに極北に近いマニトバ州北部が舞台。 たった一軒しかない村、 そこに住む少年が成長していく物語です。 こちらも複雑な家族の愛の物語でした。。


過酷な原野で生きるには ひとりでは決して生きられない。 だけど家族の繋がりとはなんだろう・・・


わたしたちは… というか、 今の日本では、、 固定された家族の有り方に縛られ過ぎていないだろうか・・・


そんなことも考える読書でした。



つづきはまた、、ということにしましょう…



すこしは雪原の冷気がとどけられたでしょうか…

あらたな翻訳で出版されました…(嬉)

2024-07-16 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
梅雨明けの声もきこえてきた中、 気温はわりと低めですが爽やかとはいかず、、

なんだかしんどいな~ 夕ご飯作るのだるい~、、と思ったので すかさず甘酢らっきょうを食べました。 歯ごたえもシャキット、ですが 身体もしゃきっとしました。 お酢は人体のすべての根元、 アミノ酸たっぷりですし、、
昔の人の 気候と体と食べ物の知恵はありがたいですね。

連休はのんびりしてたけれど、 ちょっと坂をのぼって筋肉痛になったので焼き鳥を食べました(笑)。 心臓が疲れたな~というときは ホタテやタコが効きます(私の場合)。。 これも栄養学的にも理にかなっているようです。 半夏生にタコを食べる習慣も、ちゃんと理由があるのですものね。
 
 ***

今朝、 うれしいものを見つけました。

昨年の10月に読書記をこちらに載せた(焔の消えたあとで…>>) イーディス・ウォートン (1862-1937) の『イーサン・フローム』(1911) いまは入手困難で、、と書きましたが 新訳がこの7月にあらたに出版されたのですって。

下に出版社の紹介ページにリンクをしてありますが、 紹介文を読んでみると 物語のかな~り後半のほうまでストーリーがわかってしまうので、 紹介文を読んだ方かいいのかどうか、、 でも私もあらたな翻訳でもう一度かならず読んでみたい、心に残る小説です。

『イーサン・フロム』白水社Uブックス 宮澤優樹 訳 
https://www.hakusuisha.co.jp/book/b643254.html


もうひとつ、、 検索の関連で出てきてびっくりしたのが、 デルモア・シュワルツ (1913-1966) の新刊の小説集『夢のなかで責任がはじまる』(1937) 
こちらはず~っと昔にルー・リードさんのお師匠、ということで書いた事がありましたね。 絵本のはなし。(デルモア・シュワルツの偶然。>>

あのあと、 『とっておきのアメリカ小説12篇 and Other Stories』(文藝春秋 1988年)という短編集に デルモア・シュワルツの最も有名な短編が「夢で責任が始まる」(畑中佳樹訳)というタイトルで収載されていると知り やっと読むことが出来たのでしたが、 こんどの本にはなんと ルー・リードさんの序文が載っているそう、、 こちらも読んでみたいです。

『夢のなかで責任がはじまる』デルモア・シュワルツ 著 ルー・リード 序文 小澤 身和子 訳 河出書房新社
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309209081/

もともとは、 「In dreams begin the responsibilities」 というのは 詩人 イエイツ先生の言葉なのですよね。。 そこまでは知っているんですけど、 この意味がわかるようでまだよくわかっていない、、。 村上春樹さんの小説にもこの言葉が出てくるそうなのですが 村上作品を読んでいないのでそこはわかりません。。 長いこと忘れていましたけど、 デルモア・シュワルツの本を通して またこの言葉の意味、 考えてみたいです。



いろんなこと繋がって、 いまになってまた新しい楽しみができる。。




今週も げんきで。



暑さにまけないで 身体慈しんで。

timeless...

2024-07-10 | MUSICにまつわるあれこれ
ほんとうに蒸し暑いですね、、

先週の夜更かしの疲れがさすがに残って 昨日もしばしお昼寝してしまいました。。 ムリせず冷房の効いたお部屋でしずかに読書、、 そのまえに

3日のつづきです。 最近 見聞きしたものの中から、、。 キースのリフに狂喜する前に見ていたのが

Cat Power: Like A Rolling Stone | The Tonight Show Starring Jimmy Fallon
キャットパワーによるディランカバーアルバム『Cat Power Sings Dylan: The 1966 Royal Albert Hall Concert』、、 彼女が出したカヴァーアルバムはどれも良くって、 彼女流の歌の持ち味をちゃんと自分で解っているというのもいいし、 またバンドの選択やアレンジもいつも良い。。 ディランカヴァーのスタジオライブということで楽しみに聴きました。 ピアニスト、たぶん昔からの相棒グレッグ・フォアマンじゃないかと思うのですが、 いいピアノだなぁ。。

Joni Mitchell - Amelia (2024 Remaster)
7月はアメリアの月。 先日まで読んでいた本、アメリア・イヤーハートのことを歌った曲。 ジョニ・ミッチェルの『THE ASYLUM ALBUMS 1976-1980』のBOXが出たそうで、 その Disc1 『HEJIRA』がやっぱり素晴らしくて( Amelia もこの中の曲ですが)、 ジャコ・パストリアスのベースのうねりとか聞こえてくると耳が吸い寄せられます。

Beck - Paper Tiger (Live from Jimmy Kimmel Live! / 2024)
なぜ最近のTVのライブで2002年の『Sea Change』の曲を演奏しているのかわかりませんが、ベックのアルバムの中でも一番好きで、そのなかでも好きな曲。ストリングスの重厚さと合わせてもなんとも似合う。重厚さとシンプルさ。。 そしてまたベックたんのバンドメンバーはいつも良いなぁ。。 

Paul Weller - Jumble Queen (Later... with Jools Holland)
最新のアルバムの中にもこんな曲も入れてしまう兄貴が好き。。 そういえば昨夜、フェスの夢を見ました。桑田さんの(令和の夏)発言をおぼえていたせいだと思うのですが、、 フェスで桑田さんがテレキャスを弾いてらして、それでなぜかカメラに向かって「この年になってやっとこのギターのほんとうの音とか魅力とかがわかるんだよなぁ…」とおっしゃってた…(夢です) 、、ウェラー&スティーブ・クラドックのふたりテレキャス。

Royal Blood - Eat Your Young (Hozier cover)
こないだPinkpopフェスでのロイヤルブラッドの演奏を観たりしてたのですが、なぜか彼らがホージアのカヴァーをしている映像が出てきて、、?? なんで? いや悪くないですけど、、Royal Bloodも好きですけど、、。 最後、そのギターを構えて、歪んだアウトロでも聴かせてくれるのかと思いきや、、 終わるんかい…

Hozier - Work Song w/ Ed Sheeran & Take Me To Church (live at Pinkpop 2024)
で、そのホージアさんは、フェスでエド・シーランさんと一緒に。。 泣きそうになっているお嬢さんたち可愛い。。 さすがにお二人とも歌もハモリも素晴らしい。ホージアのバンドも絶品にすばらしい。。 でもビックリしたのが… ホージア、お腹どうしたん…⁈ あんなにガリガリだったアンドリューが。。。 今度みる時には、 ホージアがクリストファークロスさんになっているんじゃないかとちょっと心配です。。

THE CULT / SHE SELLS SANCTUARY on ‪@howardstern‬ 2024
これもタイムレスな、85年の曲。。 演奏が今もかっこいいですね。 私、ザ・カルトは イアン・アストベリー以外の名前を知りませんが、、 ギターを弾いているのはビリー・ダフィーさん。グレッチ良い音です。 ところでザ・カルトとは関係ないですが、近年 日本の若いバンドの演奏をたまに映像で見たりすると、 ギターの選び方とそのギターの使い方と、、なんか違ってない…?と思ってしまうことが、、 ギブソンのセミアコのようなホロウボディのギターをただジャカジャカと掻き鳴らしているのを見ると・・・ て言うのは老人の戯言でしょうか。。

U2 - An Cat Dubh / Into the Heart (Live From Red Rocks / 1983)
こないだ公開されたU2の83年の映像。 これを視ると、シド・ヴィシャスが死んでロックも一緒に死に絶えて、ザ・ジャムもいない、 Televisionもいない、 ザ・クラッシュも分裂、、JAPANも消えた世界で、 いかにこのジ・エッジのギターとボノの叫びが唯一の救いだったか、、。 ジ・エッジ、ストラトでこの音出してるのよ…

THE YELLOW MONKEY - Exhaust
日本の誇るギタリスト、エマさんのギターで始まるラテンな曲。 エマ、エマ、エマさんの作曲能力は(昔からも良いですが)最高です。 この曲を持って来られてちゃんと受けて立つ吉井さんもエライです。 このギターをステージでどんな風に弾くのかも見てみたいです、、 もっとド派手な楽曲にも化けそうな。。 なんならブラスもパーカッションもストリングスも加えて、、


なんて 好きな音楽になんだかんだ云うのも愉し…




カブリオレで海辺へも行きたいなぁ…

熱い夜…

2024-07-07 | …まつわる日もいろいろ
金曜日、

お仕事で上京された先輩と6年ぶりの再会。 今回もうお一人ご一緒されたお仲間とは、じつに16年ぶりの再会(嬉!)

お仕事後の待ち合わせまでの時間、 (今年はじめての…?)カフェでシフォンケーキを。。


、、炎暑の昼下がり… 古めかしいホテルのカフェで暑さをやりすごしている つば広のお帽子など似合う老女をめざそう… なんて、 無謀な憧れを抱いてましたが、、 とても静かなカフェで戸外の暑さをやり過ごすという目的だけはクリアできました。 お気に入りのワンピース着て、 なつかしい本を片手に。。


その後 先輩方とは なんと深夜零時までお話しつづけてしまいました。。 気がついたら時計の針が重なりそうになってる・・・! 
先輩方は近くのホテルへタクシーでお帰りになりましたが、 私と、連れて行ってくれた友は、 もうJRしか動いておらず、、 こんなのは20年以上ぶりかしら・・・

かつては十何時間も、 場所を替えつつひたすらひたすら話し続け 飲み続け、、 などということを何度も繰り返していた先輩方とのお付き合い。。 何年のときの隔たりがあっても、 語るべき話にはすぐに熱中して、 現在の関心事、 読むべき本、 調べるべき事、、 これからのお仕事の可能性、、 18歳も年上の(ご高齢と言ってもよいはずの)先輩の口から、 つぎつぎにこれからのやるべき事の方向性、 可能性のお話が飛び出してくる。。 アドバイス、 なんて私にはなにひとつ出来るわけはありませんが、 ほんとうに熱心に眼をかがやかせて語り続けるお話を よろこんで聞かせていただくことだけは出来ました。


こんな気持ちで議論を重ねていたこと

ほんとうにひさしぶりに思い出しました




これからの話をつづけていられる限りは、 私も命の限りせいいっぱい元気でいなければと気持ちを新たに。。

炎暑はやり過ごしても 熱い議論はなくさないように…



楽しかった…







riff riff riff...

2024-07-03 | MUSICにまつわるあれこれ
7月になりました。 フェスの夏、ですね。

ここ数日 Glastonburyや Pinkpopの映像がたくさん公開されているのを知って、 あれもこれも、とピックアップしたまま 結局 時間がなくて見れてない、、という日々がつづいてます…

今年は(心臓の数値とは裏腹に) 去年よりも自分的には元気でいられる日が多い気がしていたのですが、 さすがにこの梅雨の湿度はしんどい・・・ とにかく無理しない ムリしない、、 しんどい日々はやり過ごそう・・・ まさに前回の日記のことば 《生き延びるために》、、

7月なんですから。 今年ももう後半の始まり。 あと2カ月もしたらまた秋がくるんだから~ と自分に言い聞かせて、 夏のあいだは大人しく過ごします。。 ミューザには行くけどね。。

 ***

先日 なにかの検索をして知ったのですが、 Tom Verlaine の蔵書が5万冊ほども遺されていて、 中には 貴重なものや 現在手に入らないものなどもあって、 その一部が米国の書店をつうじて販売されているそうです。 デビュー前は書店で働いていたトムだし、 いつでもNYの書店付近を歩いている姿も見られていたようだから、 たくさん本がのこされていたのもわかります。

興味本位に見ていたら、 Television がCBGBに出る以前あたりに トムとリチャード・ヘルとが共同で出版した詩集、というのがあって、 20代前半くらいの詩集だろうから ちょっといいなぁと思って日本円に換算したら 20万円もしたので(笑) 諦めました。 〈tom verlaine book collection〉 で検索すれば いくつか本屋さんが出てくると思います。

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夏フェス映像のつづきは 今日も見れるかどうかわからないけど、、 さっき 関連動画のなかに見つけてしまって、 みてみて狂喜してしまったキースの動画を左サイドバーにUPして きょうの日記はおしまいにしてしまいます・・・ ジミー・ファロンさんも凄いし、 キースのギター、 ギター、 ギター、、 なんであんなリフが刻めるの…。。 でもちょっとハッピーになった。



猛暑になっていきそうな今週後半ですが、 以前から約束していた予定があるので 体調くずさずにいられますように…



あなたも


元気な夏を、 と祈ってます。