神代辰巳らしいふにゃふにゃした長回しや、ふだんだったら猥歌がかかるところを教育勅語がかぶさるあたりの人を食った音楽処理といった文体は楽しめる。
男二人と女一人のロードムービーというのは「明日に向って撃て!」と「俺たちに明日はない」をすぐ想起させるが、アナキストを主人公にしているにも関わらず、なんだかやる気なさそうにことさらに反抗的だったり破滅的だったりする態度をとらないのも神代調。
「もどり川」を作るとき「だらしのない革命家だったら描きます」などと言っていたらしいけれど、基本的な人間の見方は相手が誰でも変わらないのだろう。
(☆☆☆)