原作がヒッチコックの暗部を暴いた著作「ヒッチコック―映画と生涯」などで有名なドナルド・スポトーのSpellbound by Beauty: Alfred Hitchcock and His Leading Ladiesだから、ヒッチコックが大監督としての権力にものを言わせて新人女優にあからさまに性的な執着と支配欲を見せるというかなり不愉快な内容。
ここでのヒッチコックは完全に変質者として描かれていて、まあエピソード自体は本当のことらしいが、一方で映画監督として天才であることはすっぽ抜けてしまっている。
アンソニー・ホプキンスとヘレン・ミレン主演の映画「ヒッチコック」では映画人としては先輩である夫人のアルマとの葛藤が中心になっていたが、ここでの夫人もなんだか夫の変質的な趣味に手を貸しているようで魅力的な人物とは言いがたい描き方。
ヘドレンの幼い娘がメラニーと呼ばれている(偶然だが、「鳥」の役名もメラニー・ダニエルズ)。やはり女優になったメラニー・グリフィスのことですね。
娘の回想によると、母親のところにヒッチコックから贈り物が来て、何かと思ったらミニチュアの棺桶に母親の人形が入っていたもので「なんて人だろう」と思ったという。ドラマでもそれを匂わす場面はあるが、贈り物の内容については触れず。
「鳥」で実際の鳥にえんえんと襲わせ続けたというエピソードも再現されている。
ヒッチコック役はトビー・ジョーンズ。アンソニー・ホプキンス同様外観が似ているとはいえないのを肥満体の特殊メイクとそっくりの発声で役作りをしている。パブリックなヒッチコックのイメージをなぞっているわけで、そうするとヒッチコック作品自体のキャラクターみたいに自動人形がかってくるのだな。
ティッピ・ヘドレン役のシエナ・ミラーも別に似てはいないのをブロンドや服装などヒッチコック好みのタイプにはめ込んでいるようで、はまりきれずにはみ出てくる部分が、おそらく監督の一方的なイメージに縛られたくないというヘドレンの欲求に見合ったものなのだろう。
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ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女 - WOWOWオンライン
The Girl - IMDb
ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女 - ウィキペディア