prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「フューリー」

2014年12月22日 | 映画
「永遠の0」で不思議で仕方がないのは、出撃のたびに無事帰ってくるパイロットが戦いから逃げた臆病者と謗られるという設定で、逃げれば無事でいられると決まっているのだったら戦場ではないだろう。

逃げるも何も、どこからどう逃げればいいのかもわからない、どこから敵が現れるのかもわからない、辛うじて戦車の装甲に閉じこもることで身を守ってはいるが、ひとつ間違えたらそのまま鉄の棺桶になる。そんな地獄のリアリティを、この映画は徹底して描き出す。

若者が戦いの中でもまれているうちに一人前の男になっていく一種の成人儀式、といったドラマの骨子は、古典的な戦争ものというかアメリカ映画の定型だろう。かつての「セブン」ではモーガン・フリーマンに対する息子的な役をやっていたブラッド・ピットがいつのまにか実生活同様に父親側にまわり、映画自体の生みの親の一人に名を連ねる。

どうやってはるかに性能が上のナチスドイツのかのティーガー戦車に勝つのかというはらはら感も古典的な戦争ものの醍醐味のはずだが、映像と音響のリアリズムがそんなドラマの人間性そのものをふきとばしてしまう。

凄惨な戦いがいったんおさまって街で小休止し初めて女性が登場する中盤の芝居のペースの切り替えと、装置と人物の配置と動かし方とカッティングが適格で、芝居の余韻とともに後ろ髪引かれる感じが実によく出た。
他が狭い戦車内の芝居のリズムも

ラストの十字路の戦いが終わったあと、俯瞰になるとその十字路がまさに十字架の形をしていることがわかる。

初めの方のあまりに若いので見逃しかけた少年が射殺される凄惨なシーンがラストの戦車の下で再生される趣向は、ペキンパーの「戦争のはらわた」を思わせる。
(☆☆☆★★★)



本ホームページ


人気ブログランキングへ

公式ホームページ

フューリー@ぴあ映画生活

映画『フューリー』 - シネマトゥデイ

FURY / フューリー [DVD]
監督 デヴィッド・エアー
主演 ブラッド・ピット
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

12月21日(日)のつぶやき

2014年12月22日 | Weblog

【本棚登録】『銀のスプーン(1) (KCデラックス Kiss)』小沢 真理 booklog.jp/item/1/4063760…


【これ聴いてます】プレイエル:弦楽四重奏曲 Op. 2, Nos. 4-6 (エンソ四重奏団) ml.naxos.jp/album/8.557497 #nmleg


PCでいうならハードディスクがあればメモリは要らないというようなもの @mineotakamura: インターネット上に情報が落ちているから暗記しなくていいというのはおかしい。知識というのは連結されていてはじめて意味をなすので、検索されたものを理解するにも知識が必要である。


それにしても教育改革というのはいじればいじる程ドツボにはまる。