佐々木譲の原作は、祖父と父と息子の三代にわたる大河小説にして警察小説で(スチュワート·ウッズの「警察署長」を参考にしたという)、それぞれ戦後すぐの上野の火事、70年代の新左翼内部の内ゲバといった日本で実際にあった出来事と絡めている。
これを舞台を韓国に変えて二時間あまりの映画にまとめるとなるとどうするのだろうと思ったのだが、まずほとんど創作に近い。
舞台は現代に設定され、若い三代目に絞って、父親の元部下が上司になる。
父親が上司の上司になるわけで、そういう形で代を重ねているのを取り込んでいる。とはいえ、扱うタイムスパンは大幅に短くなった。
形式としては、上司が組織犯罪を取り締まるためとはいえ組織に深入りし過ぎてミイラとりがミイラになりかねないのをハラハラしながら見守り、また暴走したり組織に襲われるのから防ごうとする若い警官のドラマで、つまり類型としては「トレーニング·デイ」「孤狼の血」などに連なる。
その限りでは迫力はあるが、なかなか腹を割らない相手に過去を含めた複雑な背景をセリフや回想で描いていく方法だとすとんと腑に落ちにくく、なんとなくこういうことなのだろう思うしかない。
そうなるとどこまでこの原作である必要があったか、疑問なしとしない。
原作だと主人公の父や祖父が警官であることを重視した先代の仲間たちが警官の血に応えろと圧力をかけてくるさまがぶ厚く描かれていて、映画では警官仲間内部の仲間意識の強さとその裏腹の裏切りに厳しい空気に移されてはいるが、代が同じなので圧力はそこまで強くない。
アクションシーンは韓国映画としては普通。量は少なめ。
見る前は学生の身分で過激派内部に潜入する二代目のシチュエーションを採用するかと思ったが、考えてみると昔の韓国の左翼の取り締まりの厳しさからしてちょっとムリ。