prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ライオン・キング ムファサ」

2024年12月31日 | 映画
ムファサとスカー(タカ)の兄弟がいかにして仲がよかったのが不仲になったのかを描く前日譚。
ときどき前作(といっても2Dアニメと3DCGアニメの二通りある)のコメディ・リリーフキャラが揃う現代のパートが挟まり、その時点では子ライオンのシンバが親の代の話を聞くという構成になっている。

どこまで発達するのだろうと思わせる、CGで骨格からつくるのから始まって筋肉をつけ皮膚を張り付けて毛を生やし、さらに光を当てて徹底的にリアルな画像に仕立てる技術は壮観。背景も実写では逆に不可能なくらいの再現度を誇る。
ただリアルすぎて2Dアニメでは使えたマンガ的なデフォルメが乏しく、ライオン同士があまり見分けがつかない。何よりスカーの顔に傷がついているという一番目立つ違いが最後に来ている。

ムファサとスカーはハムレットの父王と叔父のクローディアスからとったらしいが、逆にクローディアスの役の裏設定に応用できそう。

監督のバリー・ジェンキンスは実写でもカラーリングを徹底的に施した「ムーンライト」が出世作になったわけだが、広い意味のデジタル技術の応用という点ではつながっているということになるか。

2Dアニメと3DCGアニメの前作二本で共通してムファサの声をアテたジェームズ・アール・ジョーンズ(今年2024年の9月9日に亡くなった)に対する献辞が冒頭に出る。ここで声の出演をしているわけではないのだが、功績全般に対する敬意と受け取った。

吹き替えでなく字幕版で見たので、セリフと口の動きが合っているのがわかる。ライオンのセリフというのも妙だが、英語圏の映画の作り手は「デイブ」の昔からリップ・シンクにこだわるのだね。





「コット、はじまりの夏」

2024年12月31日 | 映画
冒頭、草むらに何か転がっているなと思うと主人公の女の子で、それからしばらく顔が写らない。場面が室内に移ってベッドの下で横になっている顔が写ったかと思うと、すぐおねしょしているのがわかる。
そういった調子の端正で静かな画と運びの中で、おねしょや父親との不和などノイズを入れてくる手際がいい。

最初から女の子が心を開くのではなく、徐々に抑えながら開いたとも思わせないで気が付いたら開いているとわかる。
撮影が素晴らしく、ただの水たまりのはずが心の深淵に見える。