prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「陪審員2番」

2024年12月22日 | 映画
陪審員の中でニコラス・ホルト一人だけ無罪の票を投じるのは「十二人の怒れる男」のヘンリー・フォンダ同様だが、およそフォンダのように「正義」「真実」「不偏」な側に立っているわけではなく、その対極にある。
陪審員たちが面倒くさそうに早く切り上げて帰りたがるのは一緒。

ジョージア州というとイギリスから独立した時の十三州のひとつで、何といってもアトランタがジョージア州だ。イーストウッド作品とすると「真夜中のサバナ」もジョージア州が舞台だったが、土地柄というのがあるのだろうか。

酒場とその周辺でスマートフォンの動画を含めてさまざまな角度で雨の中の痴話喧嘩の様子の映像が切り取られて編集されているのだが、「羅生門」式に内容が変わっているわけでもないのに同じことの繰り返しという感じがしない。

法廷、陪審員室のフレームと編集の切り取り方の的確なこと。

ホルトがアルコール依存症で、断酒するのかどうかがひとつのヤマになるのだが、飲んで紛らわせられるのを通り越した境地になる。
「許されざる者」の主な舞台になる街の名がビッグ・ウイスキーで、主人公のウィリアム・マニーはアルコール依存症だったのではないかという説を見たことがある。アルコール以上の地獄に足を踏み入れている以上、比較には意味がなく、ただ空恐ろしい。

事故?の場面は直接描かれないのがひとつのキーになるだろう。