prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「GAMA 月桃の花」

2017年09月08日 | 映画
沖縄の地上戦で一般人がガマ=洞窟に籠もって日本軍に自決を強制されたのを描いた映画。

川平慈英扮するアメリカ人の父と日本人のハーフが母親の出身地である沖縄を訪れて現地のお婆から戦時中の話を聞いていくという構成だけれど、正直初めのうちは画も演技も生硬く、沖縄人がアメリカを恨んでいるかどうか、正義の戦争はあるかといった問答もどうも公式的なものに思えて鼻白んで見ていたが、回想に入り地上戦の描写になると岡崎宏三の16ミリフィルムによる撮影がざらっとしたリアリティを出し、豪雨の中ではレンズにじかに水が流れるといった大胆な処理をしたりしてだんだん調子が上がってくる。

何より実写で遺体の腹からどろっとはらわたが流れ出てくるカットなど衝撃的。

クライマックスの洞窟に逃げ込んだ一般人たちを日本軍が閉じ込めて監視している(守っているのではもちろんなく、むしろスパイではないかと疑っている)あたり、沖縄語で食ってかかるお婆のセリフが沖縄語であること自体が大いに力を発揮する。

赤ん坊が泣くので日本軍が黙らせるよう強制したので死んでしまう、といった今ならネトウヨが騒ぐような描写が子供を死なすことを描くこと自体に腰が引けたみたいにアクセントが今一つ効かないのはどんなものか。

朝鮮人も同じように洞窟に立てこもっていたことも描かれる(エンドロールに朝鮮、大韓航空、台湾の死者の名前が追悼碑にそれぞれ刻まれているのを見せる)。

日本軍の差別意識や視野狭窄ぶり、生き残るのを恥とし、やたらと美しく死にたがる病弊は何度も描かれた通りでまたかとも思うが、今手も全然治っていないのも確か。

型通り、という印象は免れないものの、その型も何も全然わかっていない、わかろうともしない昨今のさばっているにの対してはどんな映画を作ればいいのかとも思わざるを得なかった。1996年作。

GAMA 月下の花

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