prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ナイトハイカー」(見てはいけない怖い話)

2012年08月07日 | シノプシス
都心の新橋、あるいは神田などイメージのガード下が発達しているあたり。
未明、地面に寝ていたサラリーマン・坂本が、起き上がる。ジャケットを着ておらず、ワイシャツにネクタイ姿。
「ああ、飲みすぎたあ」
まだ酔ってふらふらしている。気がついたら、他に人が全然歩いていない。
どっちに向かっているのかよくわからない。タクシーも通らず、駅に向かうつもりで裏道に入ってしまう。
薄暗い、くねくねした裏道を歩いていくうち、どこにいるのか、どこに向かっているのかまったくわからなくなってしまう。
歩いても歩いても広いところに出ない。
坂本は不安になって走り出す。だが、すぐ息が切れて止まってしまう。
相当に日が高くなってきている。
携帯の時計を見たら、88時88分を表示していて、動かない。
電話をかけてみるが、どこにかけても
ときどき、電車が通る音がごうごうと響いてくるのだが、それが誰か生きて活動している証しではなく、誰もいない中、異次元で何か起こっているように聞こえてくる。
何度目かの列車が急ブレーキをかけて止まる。
それと前後して、何か水袋が弾けるような音と短い悲鳴が聞こえた。
やがて駅の放送が聞こえてくる。
「人身事故のために、運転を一時停止しております。ご迷惑をおかけしますが…」
放送は奇妙にはっきり聞こえるわりに、駅にいるはずの人の気配や音はまったく聞こえてこない。
狭い裏道に閉じ込められた格好の坂本の目に、妙なものが入る。地面に転がった、壊れた腕時計の残骸…血まみれの。

いつのまにか、地面が血と臓物が散らばっている。
「焼き鳥の材料、じゃないよな」
逃げ回る坂本。
ふと気づくと、狭い道のすこし離れたところに、スーツ姿の男が背中を見せて立っている。
見たところふつうの人間のようだが、どこか変だ。立ったまま動かないでいるだけでも変だ。
すうっとあたりが暗くなる。
坂本はそっと近づいていく。
男の上着の背中に大きなかぎ裂きができており、手の跡がついている。
その背中が奇妙に痙攣するように震えている。見ると男の足元に血だまりができている。
やがて轟々という列車の音が大きくなり…、ばしゃと音がして顔の見えない男が弾け、坂本の顔に血しぶきがふりかかる。
「うわあああ」
悲鳴を上げた坂本が気がつくと、居酒屋にいる。
周囲には飲み仲間がいる。「また飲みすぎたな」「夢でも見たか」
坂本は自分の身なりを確かめるが、何の異常もない。
やれやれ、夢か、それにしてもリアルだったなと気を取り直して飲みなおす。
やがて坂本は勘定を済ませ、暑いので上着を肩に担いで出て行く。
おとなしく駅に入りホームで並ぶ。
風が吹いてきて寒いので、坂本は上着を着た。
気づいていないが、上着の背中にいつのまにかできた鍵裂きがある。
電車が近づいてきた…。

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