prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「メゾン・ド・ヒミコ」

2009年01月10日 | 映画
メゾン・ド・ヒミコ [DVD]

角川エンタテインメント

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ゲイが老後を過ごす施設の話にしては、案外家族とのつながりが強かったり、美術・衣装が芝居がかって凝っていたりで、一種のファンタジーとも見える。その分、あまり現実感や身近な感じがなくてかったるい。

田中泯が頭にターバンみたいに布を巻いているのが「蜘蛛女のキス」のウィリアム・ハートみたい。なんで頭に布巻くとゲイっぽく見えるのだろう。
(☆☆★★★)


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「アンダーカヴァー」

2009年01月08日 | 映画
邦題は誤解を呼ぶところあり(原題はWe own the night)。「フェイク」や「インファナル・アフェア」みたいな潜入捜査官ものを想像するとちよっと違うので、父と兄が警官なのにロシアン・マフィアとつるんでいる弟が主人公で、つまりスパイを送り込むのではなく、元から組織にいる人間を肉親のしがらみからスパイに仕立てていくわけ。ある意味肉親であることを「利用」しているわけで、タッチは当然かなり重く、ややかったるい。

父が兄と弟を分け隔てして育てていて、弟がコンプレックスを持っているというあたり、「エデンの東」あるいはそれ以前の創世記のカインとアベルの物語とも通じる。
潜入にあたって交換する立場というのは警察とマフィアである以上に、家族の中で割りを食う弟のとそうでない兄との立場のよう。今では比べられることもあまりなくなったけれども、リバー・フェニックスの弟という目で見られていたであろうホアキン・フェニックスと、本物の不良だったマーク・ウォルバーグというキャスティングは当然役者当人の背景を狙ってのものだろう。
ロバート・デュバルがさすがに貫禄。

ヴァイオレンス・シーンは少ないがかなり強烈で、豪雨の中のカーチェイスなどどうやって撮ったのかと思う。
ロシアン・マフィアが警察などミッキーマウスだとまるで恐れていないのが、それらしい。
(☆☆☆★)


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「赤い風車」

2009年01月07日 | 映画

ホセ・フェラーがロートレックの寸づまりの体躯を再現した(膝に靴を履いたとか)演技が見もの。さらに彼が反発するその父親の二役を演じてみせるのが、ちょっと精神分析的。

ジョン・ヒューストン監督=オズワルド・モリス撮影の、「白鯨」('56)に先だつ色彩撮影が実験的で、ロートレックの画調を映画のトーンとしてかなりの程度再現している。
英語版なのは仕方ないとはいえちょっと興醒め。
(☆☆☆★)


「4ヶ月、3週と2日」

2009年01月06日 | 映画

ジャズのジャムセッションのように一人一人の俳優が役を生き、その上で他の役者と反射しあって、人間集団としても生きていくのがまことにスリリング。 ちょっとジョン・カサベテスを思わせる演出力。
恋人の母親の誕生パーティの、大勢の人間が勝手に喋っているようで全体としてアンサンブルが成立しているのを据えっぱなしで通して撮ったシーンなど、すごい。

一見してただ人と待ち合わせをしているだけなのだが、あちこちでズレや不手際が重なっていく出だし。旧社会主義国の非効率性の表れでもあるだろうが、それがたとえばヒロインが恋人の男に、もし自分が妊娠したらどうするか聞き、結婚すればいいだろうといった「わかっていない」答えが返ってくるあたり、国の体制を越えた普遍的な意識のズレが鮮やかに表れている。

堕胎した、人間の形をしていない胎児を映画でまともに見せたのは初めてではないか。
(☆☆☆★★★)


「神童」

2009年01月05日 | 映画

天才・神童を映像で具体的に表現するのは難しいことで、たとえ天才的な俳優が演じても「音楽の」天才となるとまた別で、「アマデウス」みたいな逆手を使わざるを得なくなるというのが普通だろう。
で、ここでは生憎と「天才性」というのが話にもキャラクターにも肝になっているはずなのだが、まったく表現できていない。仏作って魂入れずもいいところ。どんな成算があってこの素材を映画にしたのか、理解に苦しむ。
(☆☆★★)

「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」

2009年01月04日 | 映画

松浦亜弥は蜷川幸雄監督の「青い炎」で見た時、アイドルとはいいながら、ずいぶん暗い役の似合う人だな思った。悲惨な展開を受け止めるラストの無言の長いカットなど、よく持った。

というわけで、ピンの主演となったらどんなものかと思って見たら、何やら同じ東映の「0課の女 赤い手錠」(1974)みたいな恨みがましい情念がかった劇画的な雰囲気の一作になっていて、荒唐無稽な割に変にシリアスでどうも楽しくない。アクション・シーンはかなりハードで大変だったろうとは思うが、ヨーヨーを武器にしているのがこっちが先なのにもかかわらず「キルビル」がかって見える。

アングラサイトの名前が「エノラゲイ」(広島に原爆を落とした爆撃機の名)っていうのは同じ深作健太監督の「バトルロワイヤル2」にも通じる反米的空気。
(☆☆★★)


「オリヲン座からの招待状」

2009年01月03日 | 映画
未亡人に対する無償の愛の物語という点で、劇中しきりと上映される「無法松の一生」とだぶるようになっているのね。
経営が苦しくなってもピンク映画はかけないという方針は「純愛もの」としては仕方ないか知りませんが、実際問題として成人映画の作り手が今の日本映画のかなりの部分を支えているのだから、あまりいい感じはしない。そこまで奇麗ごとにしなくていいのではないか。
「ニューシネマパラダイス」みたいに映写機が一台しかないなんて初歩的な考証上の大ポカが目立たないのはいいけれど、案外映画人が描く映画館って、リアルではない。

よく映画館が閉館する時だけ押しかける連中っているけれど、それだったら普段から行けばいいだろうと思う。だからラスト・ショーで客が押しかけているシーン、なんだかひっかかった。
それに昔の映画館がそんなに懐かしがるようないい場所だったわけないのだ。汚くて寂れてて無愛想でぎすぎすしてて。シネコンは味気ないには違いないが、それにとって代わられたのには、それなりの理由があってのこと。
(☆☆☆)


「ウォーリー」

2009年01月02日 | 映画
ちょっとよくわからないのは、せっせとスクラップを積んでいくウォーリーの行為が、地球を浄化する作用とは直接関係ないであろうこと。植物が生き延びてきたのは、植物自身の生命力のせいではないか。なんで日の当たらない冷蔵庫(?)の中に生きていたのか。図式的な環境問題、あるいはノアの箱舟の物語のエピゴーネンとして見ると、微妙なずれがある。あんなメタボ人間たちが荒廃した地球で生きていけるものだろうか。

後半、船の舵の真ん中に明らかに「2001年宇宙の旅」のHAL9000を模した赤いランプをつけたシステムが人間に対して叛乱を起こす。船の操舵が船長に対して叛乱を起こす格好。巨大宇宙船の中でどうやって重力を作っていたのかわからないが、船が傾いてわーっとメタボ人間たちがごろごろと一斉に転がってくるあたりは「タイタニック」のパロディがかっている。

700年前の人類は実写で、現代の人間はCGで表現されているのが皮肉。
何より見ものは、あまり擬人化されていないメカの驚くほど豊かな感情表現。発音かる語彙がきわめて乏しいのに表現のニュアンスが豊かなのは「E.T.」を思わせる。感情表現の仕方が人間の真似ではないのだね。

「ハロー・ドーリー」や、ルイ・アームストロングの「バラ色の人生」などのノスタルジックな曲調が、ゴミ溜めと化した地球に流れるコントラスト。

寸詰まりの四角い錆びた鉄製のボディのロボットが鉄屑を集めてスクラップにしている格好を見て、どこかで見たような気がしていて、終わってから気がついた。「ウルトラセブン」の「勇気ある戦い」に出てきたロボット〝クレージーゴン〟だ。地球に鉄などの資源として自動車を集めに来てプレスして持っていってしまうという奴で、ほぼ人体サイズのウォーリーは可愛いが、宇宙船の中の廃棄物を集める相似形だが巨大な怪獣のようなロボットにもウォーリーと描いてあったみたいだった。
(☆☆☆★★)


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