日本国内各地の鉄道やバスの車内・駅構内やバスターミナルなどでは、「ICカード全国相互利用」が盛んに告知されており、あと1ヶ月程でKitaca(JR北海道)/Suica(JR東日本など)/PASMO(首都圏私鉄・地下鉄・バスなど)/TOICA(JR東海)/manaca(名鉄・名古屋市交など)/ICOCA(JR西日本など)/PiTaPa(関西私鉄・地下鉄・バスなど)/nimoca(西鉄など)/SUGOCA(JR九州)/はやかけん(福岡市交)の各事業者で取り扱っているICカードが、他地域の相互利用対象事業者においても利用可能となります。
(既に一部は現段階で相互利用が実現していますが…)
このICカード相互利用開始によって、大都市圏在住者はとりあえず地元の交通機関で発行・発売している相互利用対象のICカードを一枚持っていれば、他地域の鉄軌道やバスを利用する際にも便利になる事は確かですが、各カードで実施している各種特典(PASMO/Suicaの「バス特」や、nimocaの乗車ポイント付与・乗継割引など)の恩恵に授かる事は出来ません。
そのため他地域の交通機関を利用する機会もそこそこあり、ICカードで利用する際の特典に授かりたい場合は、全国相互利用開始後も複数のカードを使い分ける必要が生じます。
(日頃首都圏に身を置くMAKIKYUが、福岡の西鉄グループ路線バスを利用する際に、最大80円割引となる路線バス乗継割引を受けたい場合、PASMO/Suicaとは別にnimocaを持ち歩く必要が生じるなど)
この点は既に全国ICカード相互利用が進み、他地域の交通機関でもICカード利用による割引運賃適用(概ね1乗車で1割引程度)や乗継割引(場合によっては乗継1回無料や、乗車距離通算による地下鉄とバスの一体運賃適用)の恩恵に授かれる大韓民国(韓国)とは対象的です。
その反面日本の全国ICカード相互利用では、他地域の相互利用対象事業者においても入金(チャージ)の取り扱いが可能(現段階でも、岡山地区の両備グループが運行するHareca対応電車・路線バス車内では、利用可能なPiTaPa/ICOCAの入金は不可といった事例も存在するのですが…)で、日頃利用している交通機関のICカードに、他地域事業者の入金履歴も残せますので、他地域のカード入金が出来ない韓国とは、この点も大きく異なります。
(韓国で交通系ICカードを購入する場合は、余り利用機会のない都市のカードは非常に使い難く、韓国人の中には地元とソウルのカードを双方所持している事例も存在します。
訪韓時の訪問都市が殆ど釜山で、ソウルなどで発売しているT-moneyを持っている場合などは、T-money取り扱いエリアに出向いた際にまとめて入金する必要が生じ、逆に訪韓時の訪問都市がソウルやその周辺地域ばかりで、釜山で発売しているHANARO CARDを持っている場合も同様です)
このICカード全国相互利用開始によって、各カード取り扱い事業者の大半で、鉄軌道や路線バスの乗車運賃充当や乗車券購入に各種ICカードが利用できる様になるのですが、定期券組み込みなどは相変わらず利用事業者取り扱いカードのみ、またIC一日乗車券などは相互利用対象外で、電子マネー機能もPiTaPaは相互利用対象外ですので要注意です。
相互利用対象のカード各種で利用できる路線以外にも、りゅーと(新潟交通)やSAPICA(札幌市交通局)においても、各種カードの片利用(りゅーとやSAPICAは、それぞれの事業者でのみ通用)が可能になりますが、現在ICOCAが片利用可能となっているPASPY(広島電鉄市内電車・アストラムライン・広島県内路線バス)エリアでの利用はできません。
PiTaPa/ICOCAの利用が可能なPiTaPaエリアの路線バスも、PiTaPa以外に入金時にプレミアが付与される独自ICカード(奈良交通CI-CA/神姫バスNicoPa/岡山地区Harecaなど)を発行している事業者も含め、大半が相互利用対象外となっており、当然ながらこれらの独自ICカードでの他エリアでの利用は不可です。
(写真のMAKIKYUが所持している各種ICカードの中で、「×」を記したカードはICカード全国相互利用の対象外、また記名カードの氏名部分記載は画像加工を施しています)
またICカード全国相互利用対象となる各種カードのいずれかを、相互利用以前から発売・通用している事業者の中でも、manacaエリアのあおなみ線など、一部ICカードのみの通用となり、ICカード全国相互利用の対象から外れる事例も存在します。
あおなみ線では、manaca/TOICAの他に、ICカード全国相互利用と同時にSuicaの利用が可能になりますが、名古屋地区にも路線を持つ近鉄でも取り扱っているICOCA/PiTaPaをはじめ、PASMOやKitaca、九州の各事業者が発行するICカードの利用はできません。
あおなみ線は単に費用やシステム上の問題でこの様な扱いとなっているのか、それとも日頃ICOCA/PiTaPaを所持する近鉄利用者(名古屋市内や近郊では、結構多いと思います)よりも、日頃JR東日本をはじめ、東京モノレールやりんかい線、仙台空港鉄道など利用しているSuica所持者利用の方が多く見込まれると判断したのか気になる所ですが、もし後者だとすれば少々考え物と感じます。
一応ICカードを取り扱うJR各社と、大手私鉄・地下鉄のICカード利用対象路線に関しては、全てICカード全国相互利用の対象に含まれますが、あおなみ線以外にも首都圏や関西の一部中小私鉄などは、ICカード全国相互利用の対象外で、中には山陽電鉄や神戸電鉄の様に、他地域の人間にとっても比較的メジャーな存在の路線も含まれます。
そのため様々な地域の公共交通機関を利用する機会が多いとなると、最低でもSuicaとICOCAは持ち歩きたいもので、とりあえずこの2枚を持っていれば、ポイント付与や乗継割引などの特典は別として、乗車するだけなら大半は…といった所です。
ICカード全国相互利用とは言いつつも、他地域の交通機関を利用する際には利用者側の制度勉強が必須、これでは交通事業者従業員ですら、他地域におけるカード通用状況は…という少々難解な状況で、一月後にICカード全国相互利用開始を迎える事になります。
手元にあるICカードで利用可能な交通機関が増え、利便性が向上するという点では歓迎できる事ですが、今後システムや制度が改良され、相互利用対象となる各種ICカードならば、どのカードでも使える様になり、更に便利で分かりやすい制度になる事を願いたいものです。
近鉄線との接続駅を持つあおなみ線だけでなく、ゆとりーとラインもSuicaのみ新たに対応となると、システム改修に伴う資金投資の関連と言う可能性はかなり高いですね。
ただゆとりーとラインは、現在の運行車両が、一般道路区間(路線バス扱い)では「名古屋市交通局」のみの運営に統一され、その運行は名鉄バスに受託されている状況を踏まえると、名古屋市交通局などの扱いで全国相互利用に参入する事が出来なかったのだろうか…とも感じます。
とはいえ遠方の観光客などが利用する頻度は、さほど高い路線ではない気もしますので、遠方からの観光客利用も多いにも関わらず、むしろ鉄道(地下鉄)は全国相互利用に参加しながらも、バスは…という京都市交通局(PiTaPaエリア)などに比べれば、実害はさほどではないかもしれません。
全国相互利用開始では対応できなくても、今後のシステム改修が行われる際、対応可能になって利便性が向上する事を願いたいものです。