「マークスの山」(BS日テレ、141ch)の第5回(最終回)を見た。
第1回からきちんと毎週見たドラマは久しぶりである(上の写真は同番組のエンドタイトル。部屋の照明器具が映り込んでしまった)。
原作の高村薫『マークスの山』はかつて読んだけれど、その記憶もかなり怪しくなっていたので、ほぼ初見に等しかった。そして面白かった。最近のテレビドラマに比べると出色の出来であると思った。
高村の原作自体が、同時期の他の直木賞受賞作に比べて群を抜く圧倒的な筆力で書かれていた。
その原作では、「が-------」のような擬音が頻出してうるさかった記憶があるが、テレビドラマの方では、効果音が異様に高まる場面があった。あの原作の「-------」の場面を音声化しているのだろう。
都立大裏!の公園(もちろん目黒のほうの都立大)で殺人事件が発生し、事件に関わりのある人物の自殺や殺人事件が相つぎ、関係者が刺客に襲われる事件も起きる。
殺人事件を捜査する碑文谷中央署の刑事(上川隆也)は、事件の背後に潜む政財界、法曹界の巨悪シンジケートに肉薄するのだが、警察、検察の上層部から捜査中止の圧力がかかる、といったストーリーである。原作にはあった所轄警察署の間の縄張り争いはカットされていた。
「マークスの山」というのは、富士山に次いで日本で二番目に高い山にもかかわらず、登るのが困難なため余り知られていないという北岳のことである(冒頭の写真の背景が北岳だろう)。
「暁成大学」山岳部の同窓生たちが、この北岳を舞台に何をしたかの究明がストーリーの主軸になるのだが、目撃者のことも、ラストシーンもすっかり忘れていた。
最近のテレビ・ドラマとしては出来は良いほうだと思うが、主演の刑事役上川の恰好に最後まで違和感が残った。皺ひとつないスーツ、糊のきいたワイシャツの襟もとにはしっかり締められたネクタイ、バリッとしたステンカラー・コートを着ていながら、靴は白いスニーカーという恰好に最後まで馴染めなかった。チラッとのぞいたコートの裏地はバーバリーのようだった。
どうしても視線が上川の足元に行ってしまう。足で稼ぐ刑事ということなのだろうが、その割には、スーツ、ネクタイが折り目正しいサラリーマン風であるうえに、ワイシャツの襟もバリッとしすぎていて、スニーカーにはなじまない。白のスニーカーは原作にあったのかもしれないが、文字で読むのと、画像で見せつけられるのとでは印象が違う。
権力者たちの出身大学が「暁成大学」というのも(これも原作のとおりだが)なじめなかった。
ストーリー的には「東京大学」だろうが、目黒近辺の私立大という設定だから「目黒大学」でも「柿木坂大学」でも「鷹番大学」でも「碑文谷大学」でも「上野毛大学」でもよかっただろうに、「暁成」とは・・・。
「暁成大学」の正門や本館が画面に出てきたが、撮影したのはどこの大学だろう。よく撮影を承諾したと思う。
北岳の所轄署の刑事役の大杉蓮もよかった。ところで、あの看護婦さんは犯人の何だったのか?肝心のところを見落としてしまった。
2023年10月19日 記