豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

トマス・ハーディ『テス(上・中)』ほか

2023年10月23日 | 本と雑誌
 
 ホレーショ・ウォルポールの『オトラント城』をめぐって、ぼくは古本との相性がよくて、探している本は向うからぼくの目に飛び込んでくるなどと書いたが、まったく出会うことができなかった古本もいくつもある。

 トマス・ハーディ/山内義雄訳『テス(下)』(角川文庫、おそらく1980年)もその1冊である。
 1980年10月に、ナターシャ・キンスキー主演の映画「テス」が公開されるのに便乗して、角川文庫の「テス」全3冊も重版されたらしい。表紙のカバーもカバーの折り返しもすべて、映画の中のナターシャのスチール写真である。
 それから何年かして、『テス(上・中)』(角川文庫、1980年)が不ぞろいだったけれど、2冊で100円と安かったのを見つけて買った。高田馬場駅から早稲田大学に向かうバス道路に面した古書店の店頭だったと記憶する。
 そのうち、どこかの古本屋の店頭の廉価コーナーで『テス(下)』も見つかるだろう、とタカをくくっていたが、その後現在までまったく見かけない。

 途中で諦めたらしく、河出書房「世界文学全集」27巻のハーディ『テス』(1967年)というあの緑色の文学全集版を買った。裏表紙の扉に「相模大野ロビーシティー内古書 “旅の一座” で¥100」と書き込みがしてある。確かにそんな古書店があったような記憶がある。今もあるのだろうか。
 しかし、どっちにしろ結局ぼくは「テス」は読まなかった。「テス」は映画は見たが、本はオックスフォード出版局から出ていた Book Worms シリーズの Retold 版 “TESS of the d'Urbervilles” で済ませた。ひところ、行方昭夫さんが著書の中で、retold(rewrite)版でよいから速読せよと書いていたので、せっせと読んだ時期があった。
 ハーディは当時は好きな作家だったので、「テス」だけでなく、「キャスターブリッジの町長」「はるか群れを離れて」「日陰のジュード」「緑陰の下で」などを、同じオックスフォードの Progressive English Readers シリーズや、Penguin Readers シリーズなどで読んだ。ハーディらしい retold もあれば、ただの要約に近いものもあった。

 ハーディ『日陰者ヂュード(下)』(岩波文庫、1997年)も同じである。
 ケイト・ウィンスレット主演の映画「日陰のふたり」の上映に便乗した重版のようで、帯に映画「ふたり」のスチール写真が載っている。
 この本も(上)と(中)は結局見つからなかった。
 ハーディのしんどいストーリーを読むにはある程度の気力とゆとりが必要である。見つける前に、3冊本で読むほどの気力も暇もなくなってしまった。
 トマス・ハーディも断捨離である。本当は「テス」の下巻や、「ジュード」の上・中巻を持っている人にあげたいのだが。

 冒頭の写真は、「テス」「ジュード」、スティーヴン・キングなど、本来は2冊本、3冊本だけど、欠けている巻を結局見つけられなかった不揃いな本を何冊か並べてみた(ただし和久峻三はついでに捨てる本である)。

 2023年10月22日 記
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