チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

織り

2013年01月24日 | 日々のこと

曇り、16度、89%

 20代からはじめた、目の細かい麻布に刺すデンマークのクロスステッチ。40代に入った頃、ひとつの事に気付きました。ひと刺し、ひと刺しに込められる、刺す人の気持ちです。昔から、洋の東西を問わず、女の人の手仕事には、その人のその時その時の気持ちが込められています。辛いこと、案じること、悲しいこと、嬉しいこと。そう気付いたのは、自分が針を持つと、すーっと心のざわめきが消えることからでした。女の人の手仕事は、自分の心宥めでもあったように思います。

 先日の帰国の折、40年ぶりの友人に会いました。彼女とは、小学、中学、高校と同じ学び舎で長く一緒だったにもかかわらず、深い付き合いがないままでした。その彼女が、私のブログを見て、連絡をっとってきてくれたのは、去年の秋のことでした。40年間、一度も会うこともなく、違う土地で暮らして来た二人です。彼女からの連絡をもらって以来、この巡り合わせは、きっと、40年間のお互いの中に築き上げて来た何かが、呼び合ったのだと思っています。

 40年ですからね、すぐに解るとたかをくくっていた私、すぐには彼女だと解りませんでした。お互い高校の時とは、いささか見た目も年を取ってしまいました。その彼女が、私に手渡してくれたのが、 この織り。彼女が、紡ぎ、染めて織り上げた布です。木綿のざっくりと節のある手触りです。

 香港に戻って、彼女との会話を反芻しながら、この布を眺めていました。ふと、木下順二の「夕鶴」を思い出しました。「鶴女房」、「つるのおんがえし」などと言われるお話です。鶴は、自分の命かけて、見事な織りを織ります。

 女の手仕事は、気持ちを込めるばかりか、それぞれの人の命を散りばめているように思います。縦糸に通す横糸の一手一手、針を持ち刺す、そのひと刺しひと刺し。

 50代になって、また、女の手仕事の意味が、ひとつ深くなりました。彼女とも、この織りのように響きあえたらと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする