曇、22度、93%
香港にいる頃は香港島の中腹に住んでいました。どこに行くにも坂の上り下りでした。モモとの散歩も上ったり下りたりでしたが、よく歩くモモでした。暑い夏もガハガハ言いながら、上ったり下りたり。日本に帰国を決めたのはモモが12歳の頃です。そのモモに言いました。「日本に行けば、坂を上らなくていいよ。お散歩が楽になるね。」
帰国したのは立春の頃、寒い中をよく歩きました。ある日、夕方の散歩の時です。遠くまで来てしまいました。さあ家に帰ろうと角を曲がると目の前には急な坂があるではありませんか。その坂を上って下りると我が家です。「モモごめんね、坂があるよ。」
私の家の前は緩やかな上り坂です。といってもほとんど坂とは気付きません。右に行くとほんの数メートルで大きな国道に出ます。左に行くと緩やかですが坂が続きます。私は高校を出るまでこの家に住みました。そして40数年ぶりにモモと一緒にこの家に戻って来ました。高校までの私は家を出て右にしか行かなかったように覚えています。左に向かうと佐賀との山越えの県境まで行きます。左に行くのはほとんで父の車でした。だからでしょう、この街には坂がないと思い込んでいたのです。
やっと涼しくなって、ココとの散歩の距離が延びました。ココは気管が極端に短いので、無理な散歩は冬でも避けています。金木犀が匂う中、ついつい足があっちにこっちに。ココも久しぶりに坂を上ります。ゆっくりと上ります。
写真はココです。この街に坂があったと気づいた坂ではありません。坂のある街だと気づいて、あることを思い出しました。この家の旧住所は「逢坂」です。自分のそそっかしさをクスリと笑いながら、モモとも歩いた緩やかな坂をココとゆっくり散歩します。