曇り、10度、74%
年末も押し迫った早朝のことでした。いつものように大濠公園に向かって走りその帰路のことです。クリスマスからこっちは早朝でも酔人がフラフラ、用心しながら走ります。前方に若い男性2人、一人は自転車を押して肩を並べて歩いています。私が5メートル程まで近づいた時、ちょうど彼らは交差点で別れるところでした。話し声が聞こえます。「じゃあ来年。」と二人は手をあげました。その後自転車の青年が「寒くないかい?」と声をかけながら自転車をまたぎました。自転車の青年は私に気付いていませんでした。自転車は大きく回って私に近付きました。何となくそれを想定していた私は、身を避けるように道の端を走りました。近づく自転車に「あら!」と声を出したように思います。自転車の青年「すみません。」と私と同じ方向に走り出しましたが、「大丈夫ですか?」と速度を落として私の横を走ります。「早くから走るんですね?」「どのくらい走ってるんですか?」そんな話をしながら5分ほど自転車と私は並んで走りました。街灯は灯っていますが昼間ではありません。顔がはっきり見えるわけではありません。私が62歳だと告げるとびっくりした様子です。3辻のところで「僕、あちらですから。」と手を上げました。その青年に向かって「同じ年代の友人に寒くないかい?と声をかけるなんていい人だなあって思ったのよ。一緒に走ってくれてありがとう。楽しかったわ。」と私は応えました。ちょっと照れたように走り去って行きました。
きっともう2度と会うこともないと思います。友人を気遣う様子や私への気配りなど本当に短い時間でしたが、「いい青年に会ったなあ。」と胸にポッと火が灯りました。
もう一つ、年も明けて街に買い物に出かけました。昨年で懲りていますから、「初売り、福袋」の時期を過ぎてのことです。車の量も平常、いつもの交差点では渋滞で長い信号待ちをします。前の横断歩道を信号が青に変わるのを待っていた歩行者に紛れて自転車が一台出てきました。高めの自転車にすっと足を掛けて滑り出したのは私より年上と思われる婦人でした。軽装にリュック姿。パーマなしのショートヘヤーはグレーで化粧っ気はありません。自転車に乗った姿の美しいこと!はっと目を見開くほどでした。私の横を抜けるときの横顔も凛としています。思わず「素敵な人だわ。」とつぶやきました。そして、走り去って行くその婦人と自転車をずっとバックミラーで追いました。
福岡の街は老人のヨタヨタな自転車が多く走っています。自転車が走っていることのない香港での運転からすると気が気ではありません。この婦人、自転車に乗り慣れているというよりまるでレースにでも出るかのような軽快さでした。服装だって地味で目立ちはしません。体が軽やかで目が涼しげな人でした。「あんな風になれたらいいなあ。」と自分に引き比べます。
この10日ほどの間で私の記憶と心に残った、いい話です。
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