晴、30度、68%
「帰ってきたらで何が食べたい?」と香港に戻る前には必ず主人が尋ねてくれます。主人の頭の中では「あわび」「ダック、アヒルのロースト」「フカヒレ」と思い浮かべてくれています。確かにどれも私の好物に違いありません。でも、心底食べたいのは「ワンタン麺」「お粥」です。
「ワンタン麺」のおすすめのお店は香港中それぞれの贔屓があるので、「ここ!」とは言えません。どの店も開店前に「ワンタン包み」をしています。大きなボールにコロコロのエビと豚肉を積んで手際よくワンタンに包みます。このワンタンの中身も店によって配合、味が変わります。包んだ「ワンタン」だけを「一打」つまり1ダース12個売ってもらい、家で湯掻いて食べることもしばしばありました。エビが多い店、豚肉がいっぱいの大きなワンタンの店。麺なしでも美味しい「ワンタン」です。
お昼ご飯は滞在中、中一日だけ、セントラルの銀行の用事を済ませると「ワンタン麺」を目指します。長年住んだ地元です。どこに行けば食べられるか足が自然に動きます。よく行った店にはすでに長蛇の列ができていました。韓国人観光客です。ガイドブックを手にトランクまで引っ張っています。ここ福岡でも韓国人観光客は「うまい、安い」とガイドブックに書かれた店では並んでいます。対面にも古くからの店があるので入りました。「麥奀雲吞麵世家」です。
お昼時、地元の人もたくさん。丸いテーブルに背もたれなしの椅子はどこも同じです。「鮮蝦雲呑麺」2椀。この店は麺が上に乗って出てきます。麺をひっくり返すと、ワンタン登場。 スープを啜るとエビの香りと「大地魚」の出汁が唸るほど美味しい。このスープが熱々でない店はいただけません。思い出しただけで元気になるスープ、麺は細め腰のあるワンタン用の麺です。ちょっと心を整えて「ワンタン」を頬ばりました。「??」2個目、美味しさの秘密がわかりました。この店はエビ丸々一匹だけ、豚肉なしの「ワンタン」でした。麺の下の「ワンタン」と一緒に「黄色いニラ」が添えられています。ネギとは違い柔らかな味です。スープ、麺、ワンタン3拍子揃った美味しさに、心から満足。
「ワンタン麺」のお値段もずいぶん上がっています。そこでハタと思いつき、韓国人が並んでいた店の値段を調べました。この店は大きな豚肉で膨らませた「ワンタン」が売りです。ところが値段は「麥奀雲吞麵世家」より10ドル安い、韓国人が並ぶ理由を納得しました。
美しい夕日を見て、大事な仕事を終えて、「ワンタン麺」を食べて、私は興奮気味でした。