

今度の船旅で、ウクライナの民族弦楽器バンドウーラ(60本も弦がある)を演奏しながら、水晶のように透き通った歌声を聞かせてくれる”ウクライナの歌姫”ナターシャ・グジーさんのコンサートが二度ほどあった。”キエフの鳥の歌”等故国の歌のほか、秋桜、涙そうそう、防人の詩、見上げてごらん夜の星を、等日本の歌も、バンドウーラと彼女の声に合い、とても良かった。
日本語もとてもお上手で、演奏の合間にトークもされ、ご自分のことも語ってくれた。6歳のときに(1986年4月6日)、父親が勤務していたチェルノブイリ原発事故が起こった。3.5キロほどしか離れていない場所に住んでいて、はじめ、たいした事故ではないと知らされていた。しかし、次第に事の重大性が分かり、3日後に住民は遠方に避難させられた。今もって、故郷には誰も帰れないそうである。3日間も被爆し続けたわけだから、それが原因で亡くなる人も多数出たし、身体の不調が続いている人も多い。自分も被爆者なんですよ、と悲しそうな顔をされた。
今日は、広島原爆投下の日で、平和記念式典が開催され、ぼくもテレビでみていた。犠牲者のみなさまに1分間の黙祷もした。これまで一度も出席していなかった米国大使や国連総長が顔をみせたのは、良かったことだ。広島、長崎と人類史上最悪の一般人無差別殺人を二度も起こしながら、反省もしなかった米国をはじめとする、数々の”痴呆国家”の、これまでの核兵器の保有数競いには開いた口がふさがらなかった。ようやく、核廃絶への方向性が示されたことは、ほんの少し、1ナノメートルほど前進したということだろうか。
管総理大臣が挨拶で、原爆と言うところを”原発”とうっかり間違えて言ってしまった(すぐ訂正したけれど)。工学部出身の首相、思わず本音を言ってしまったのではないだろうか。ぼくは、先のチェルノブイリの前例があるにも関わらず、さらにまた、長期的にみてもリスクの高い原発の保有数競いをしている国々の考えには、どうもついていけない。
ウクライナの歌姫がアンコールで歌ってくれた”故郷”を聞いて、もう帰れない故郷をもつ彼女のことを想い、胸がいっぱいになってしまった。
。。。。。
故郷
作詞:高野辰之
作曲:岡野貞一
兎追ひしかの山、
小鮒釣りしかの川、
夢は今もめぐりて、
忘れがたき故郷
如何にいます、父母、
つつがなしや、友がき、
雨に風につけても、
思ひいづる故郷
