
これは、この8月8日のブログにも掲載した、新藤兼人監督の八幡さまぼんぼり祭りの雪洞である。”今日はお祭りですが/あなたがいらしゃらないので/何の風情もありません 兼人”
ぼくは、この意味を、兼人さんの奥さま、乙羽信子さんのことを偲んで書かれたものと思っていた。新藤兼人監督のメガホンのもと出演した”午後の遺言状”の撮影を終えた1994年12月に乙羽さんは肝臓癌がもとで亡くなる。70歳だった。すでに病魔に侵されていた乙羽さんの遺作になるという覚悟で映画はつくられた。
あるいは、いつも隣りに仲良く置かれていた平山郁夫画伯の雪洞が今年からなくなってしまうからだろうか、とも思っていた。
昨日の朝日新聞の文化欄の新藤兼人監督の記事をみて驚いた。なんと、その記事の中にこの文章を見つけたのだ。
今年98歳となる新藤監督は、自らの体験をもとに、戦争の非人間性を追求する映画”一枚のハガキ”を制作中で、記者が訪れた場面が紹介されている。歴史的建造物である、群馬県の富岡製糸場を兵舎にみたて、定造が、妻からの手紙を啓太に渡すシーンが撮られていた。定造は前線に出て戦死し、生き残った啓太が、戦後、そのハガキをもって、奥さんを訪ねるという筋立てになっている。
そのハガキの文面が、この夏の雪洞の文章だったのである。短い文章に奥さんの万感の思いが込められている。
新藤さんが独立プロを立ち上げてから、60年になるという。この間、倒産の危機もあったが、もちこたえ、これが最後の映画のつもりで、つくっているという。映画人としてやるべきことはすべてやった、これ以上望むことはありません、とも語っている。
今日はお祭りですが
あなたがいらしゃらないので
何の風情もありません
映画は、来年公開の予定だという。是非、観にいこうと思う。
。。。
朝日新聞の記事

昨年のぼんぼり祭り、新藤監督の雪洞

遺作となった平山郁夫画伯の昨年の雪洞

大銀杏も昨年は元気だった。
