みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

福島第1原発:深刻な地下水汚染/地下ダム計画文書 東電が作成を認める/株価より汚染防止だ=山田孝男

2011-06-22 18:28:05 | 地震・原発・災害
きょう6月22日は夏至(げし)。
いわずと知れた、1年でいちばん昼が長い日です。
昼間は、岐阜は1カ月ぶりの真夏日になりました。

夜は各地で、「夏至 キャンドルナイト 2011」のイベントが行われます。
キャンドルナイトとは、北米で脱原発運動の一環として始まった運動で、
夏至と冬至の夜に2時間ほど電気を消し、ろうそくの光で過ごすものです。

福島第1原発では、深刻な地下水汚染が拡大しています。
メルトダウン(炉心溶融)した炉心から漏れた高濃度の放射能汚染水で、
なんと最大毎時430ミリシーベルトもの数値とのこと。

 福島2号機の汚染水、最大430ミリシーベルト
2011年6月22日 中日新聞

 福島第1原発の事故で、東京電力は22日、2号機の原子炉建屋地下に大量にたまっている汚染水の表面で最大毎時430ミリシーベルトの放射線量を計測したと発表した。水位は地下1階の床から6メートル。事故後、地下への階段に初めて入った。
 東電と協力会社の社員10人が21日午後1時すぎから10分間、建屋に入って調べた。階段途中まで濃い茶色の汚染水がたまっていた。棒の先に付けた線量計で測定し、メルトダウン(炉心溶融)した炉心から漏れた高濃度の放射能汚染水であることを確認した。
 計測された430ミリシーベルトは、今回の事故に限って引き上げられた作業員の累積被ばく限度の250ミリシーベルトに40分足らずで達するレベル。東電によると、地下での作業の予定はない。
(中日新聞)


毎日新聞は、京大の小出裕章さんの、
「東京電力の発表を見る限り、福島原発の原子炉は、ドロドロに溶けた核燃料が、圧力鍋のような容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。一刻も早く周辺の土中深く壁をめぐらせて地下ダムを築き、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を食い止めねばならない」
という、とてもこわい発言を報じています。
原発事故は収拾するどころか、わたしたちの見えないところで、
今まさに「チャイナシンドローム」が進行しているのです。

 風知草:株価より汚染防止だ=山田孝男 

 そろそろ原発以外の話題をとり上げたらどうかと心配してくださる向きもあるが、そうもいかない。福島原発震災は収束どころか、拡大の兆しが見える。この大事と無関係に政局を展望することはできない。
 京大原子炉実験所の小出裕章助教(61)といえば、いま最も注目されている反原発の論客の一人だ。原発が専門だが、名利を求めず、原発に警鐘を鳴らし続けてきた不屈の研究者として脚光を浴びている。
 その小出が16日、テレビ朝日の番組に登場し、こう発言して反響がひろがった。
 「東京電力の発表を見る限り、福島原発の原子炉は、ドロドロに溶けた核燃料が、圧力鍋のような容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。一刻も早く周辺の土中深く壁をめぐらせて地下ダムを築き、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を食い止めねばならない」
 さっそく政府高官に聞いてみると、いかにも地下ダムの建設を準備中だという。
 ところが、さらに取材すると、東電の反対で計画が宙に浮いている実態がわかった。原発担当の馬淵澄夫首相補佐官は小出助教と同じ危機感を抱き、地下ダム建設の発表を求めたが、東電が抵抗している。
 理由は資金だ。ダム建設に1000億円かかる。国が支払う保証はない。公表して東電の債務増と受け取られれば株価がまた下がり、株主総会を乗り切れぬというのである。
 筆者の手もとに、東電が政府に示した記者発表の対処方針と応答要領の写しがある。6月13日付で表題は「『地下バウンダリ』プレスについて」。バウンダリ(boundary)は境界壁、つまり地下ダムだ。プレスは記者発表をさしている。
 対処方針は5項目。要約すれば「馬淵補佐官ご指導の下、検討を進めているが、市場から債務超過と評価されたくないので詳細は内密に」だ。
 応答要領の中でも愚答の極みは「なぜ早く着工せぬ」という質問に対するもので、ぬけぬけとこう書いている。
 「地下水の流速は1日5センチメートルから10センチメートルなので、沿岸に達するまで1年以上の時間的猶予があると考えている」
 記者発表は14日のはずだったが、東電の株主総会(28日)の後へ先送りされた。
 福島原発の崩壊は続き、放射性物質による周辺の環境汚染が不気味に広がっている。株価の維持と汚染防止のどちらが大切か。その判断もつかない日本政財界の現状である。
 政府当局者の一人がこう言った。「あの(太平洋)戦争でなぜ、指導部が的確、着実に作戦を遂行できなかったか。いまは分かる気がします」
 誰も信じない、東電の「収束に向けた工程表」という大本営発表が続いている。
 菅直人を東条英機になぞらえる向きがある。万事に細かく部下を怒鳴るからだ。東条はサイパン島陥落で敗戦濃厚となった1944年7月退陣。後継首相の小磯国昭が8カ月半。さらに鈴木貫太郎に代わり、原爆を二つ落とされ、天皇の聖断を仰いで戦争は終わった。
 なぜ、早く停戦して戦禍の拡大を防げなかったか。無理筋の戦局打開案が飛び交い、常識が見失われ、国の意思決定が遅れたからだ。今と似ている。いま最も大事な課題は放射能汚染阻止だ。空論に惑わされず、核心へ集中するリーダーシップが求められている。(敬称略)(毎週月曜日掲載)
毎日新聞 2011年6月20日 東京朝刊 


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以下、地下ダム関連の記事です。

福島第1原発:東電、遮蔽壁費用公表せず 債務超過懸念で 
毎日新聞 2011年6月20日

東京電力が福島第1原発事故をめぐる地下水の汚染防止のための遮蔽(しゃへい)壁(地下ダム)の設置に関し、設置費用が1000億円レベルになるとの見通しを立てながら、公表しない意向を政府に伝えていたことが分かった。政府と東電の費用負担が明確でない中、東電が費用計上すれば債務超過に陥りかねないことを懸念したためだ。抜本的な汚染水対策の先送りとの批判の声も出てきそうだ。
 東電が政府側に渡した文書は13日付で、遮蔽壁の基本仕様などが図面を添付して説明されている。「『地下バウンダリ』プレスについて」という遮蔽壁の記者発表に関する文書もあり、発表に臨む際の東電の対処方針が5項目にまとめられている。記者との主な想定問答もあり、14日を発表予定日としていた。
 記者発表の文書によると、東電は、以前から地下水汚染の防止策を検討しており、「最も有力な対策」と指摘。「今後の設計次第では1000億円レベルとなる可能性もある」と見通しを立てた。しかし、東電はすでに11年3月期の連結決算で1兆2473億円の最終赤字を計上。このため、「仮に1000億円レベルのさらなる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいたとの厳しい評価を受ける可能性が大きい」と債務超過についての強い懸念を指摘。その上で、記者会見で「着工時期や費用は今後の調査・設計次第で不明」との立場で臨むと政府に伝えている。
 同時に東電は、国と東電の費用分担がはっきりしていないことを強調。メディアからの「詰問」も懸念し、債務超過に陥りかねないとの危機的な認識が、抜本的な汚染水対策を先送りさせていた実態が浮き上がった。
 結局、14日に発表は行われず、17日の事故収束を目指す工程表改定の発表の中で「遮蔽壁の検討」という形で盛り込まれた。

 ◇「具体的設計まだ」…東電
 東電は20日午前の記者会見で「(遮蔽壁については)17日に説明させてもらった」との認識を示した上で、「どういった形で設けるか検討中。まだ具体的な設計まで行っていない。場所や期間などを調べている」と答えた。

 ◇「急ぐ必要ない」…保安院
 経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は20日の会見で「大規模な対策で費用もかかる。地下水脈などの状況を踏まえ十分議論してから実行するものだ」と述べ、対策を急ぐ必要はないとの認識を示した。 


福島第1原発:地下ダム計画文書 東電が作成を認める

福島第1原発:地下ダム計画文書 東電が作成を認める
 東京電力が福島第1原発事故で地下水の汚染防止のため設置を検討している遮蔽(しゃへい)壁(地下ダム)の費用が1000億円レベルになるなどと記した文書(6月13日付)について、東電は21日の会見で「当時の考え方をまとめたもの」と同社が作成した文書であることを認めた。
 東電は内容について14日に発表する予定だったが、費用計上による債務超過を懸念。毎日新聞が20日に報じて明らかになった。
 文書は、債務超過で市場から厳しく評価されないよう、国の支援がないと設置事業を前倒ししないという趣旨が記載されている。この点について、東電は「まだ合理的な費用の見積もりができていないなかでの表現」と釈明。具体的な工期などの見通しは示さなかった。【奥山智己】
毎日新聞 2011年6月21日

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福島第1原発:東電が政府側に渡した文書の全文  

東京電力が政府側に渡した汚染水遮へい壁に関する文書の全文は次の通り。
 ◇
 平成23年6月13日
 東京電力株式会社

 福島第1原子力発電所地下バウンダリの基本仕様について
 平成23年5月17日にお知らせした「『福島第1原子力発電所・事故の収束に向けた道筋』の進捗(しんちょく)状況について」にもとづき、当社福島第一原子力発電所において、海洋への汚染拡大を防止する観点から、地下水の遮へい工法について検討をすすめているところです。地下水の遮へいの構築については、中期的課題と位置付けておりますが、このたび、早急に対策工事に着手するために必要な、地下バウンダリ構築にあたっての基本的な考え方と基本仕様を示すことにいたしました。

添付資料
・別紙:地下バウンダリの基本仕様について

 ◇地下バウンダリの基本仕様について
1.基本的な考え方
○東京電力(株)は、これ以上海を汚染させないために、地下水の遮水について万全の対策を講じる。
○この一環として、地下バウンダリの具体的な設計に着手する。なお、設計がまとまり次第、統合対策室の承認をいただいた上で、対策エ事に着手する予定である。

2.地下バウンダリを設置する目的
○地下を通じた放射性物質の拡大による海洋汚染を防止すること。
○高濃度の滞留水がこれ以上海洋に流出させないために「後追いにならない備え」とすること。

3.地下バウンダリの基本仕様
○遮水範囲
 1~4号機原子炉建屋およびタービン建屋の周りに遮水壁を構築する。範囲は図-1において赤線で示す部分を基本とし、他構造物の干渉等を考慮して適切な範囲を設定する。
○遮水壁の仕様
 遮水壁は、基本的にスラリー連壁とし、難透水層の深さまで到達させる。海側については、遮水壁の施工性を考慮して、はじめに鋼管矢板等を設置し、その内側を一部埋め戻した上でスラリー連壁を構築する(図-2)。
○その他
 遮水壁内の汚染水を揚水(回収)し、外界へ放出されるリスクを低減する。また、雨水等の浸透を避けるために地表面をフェーシングする(図-2)。

4.課題
 今後、福島第1原子力発電所の安定化に向けたさまざまな対策工事と調整を図りながら、基本仕様をベースに以下の点について、より詳細な検討を継続的に進めるとともに合理化を図る。

○他のエ事、構造物との干渉箇所の調整及び対策
○揚水による汚染水の回収・処理の低減のための揚水計画の最適化
○配置計画の最適化
○遮水壁の構造の最適化
○工程短縮
以上

 ◇「地下バウンダリ」プレスについて
 (1)地下水の遮へい対策は、馬淵補佐官のご指導の下、『中長期対策チーム』にて検討を進めてきているが、「地下バウンダリ(発電所の周りに壁を構築し遮水するもの)」は現在、最も有力な対策と位置づけ。ただし、対策費用は現状不確定であるものの、今後の設計次第では1000億円レベルとなる可能性もある。

 (2)今回の検討の過程で、政府側から国プロジェクト化の示唆(当初は国交省予算)があり、その前提で、設計着手と工事着工の前倒し案が浮上。ただし、現状では、担当府省がどこになるかも含め、国プロ予算の具体化に目途が立っているわけではなく、経産省(原子力政策課)でも最近になり検討を始められたとの認識。

 (3)こうした中で、速やかにプレス発表をすべきとの馬淵補佐官のご意向を踏まえ、14日の実施に向け準備中であるが、工事の実施を前提とするプレス発表をした場合は、その費用の概算および当社負債の計上の必要性についてマスコミから詰問される可能性が高い。

 (4)また、現在、22年度の有価証券報告書の監査期間中であり、会計監査人から、当該費用の見積もりが可能な場合は、その記載を求められる虞(おそれ)が高い。しかし、極めて厳しい財務状況にある現下で、仮に1000億円レベルの更なる債務計上を余儀なくされることになれば、市場から債務超過に一歩近づいた、あるいはその方向に進んでいる、との厳しい評価を受ける可能性が大きい。これは是非回避したい。

 (5)したがって、馬淵補佐官のご意向を踏まえ14日にプレス発表とする際には、次のスタンスで臨むことについてご理解をいただきたい。
   (1)今回は「実現可能性調査」としての設計着手であり、着工時期や費用は今後の調査・設計次第にて不明であること。
  (2)費用負担のあり方(国プロ化)は、令後の検討の中で別途判断されていくものであること。            以上

 ◇「福島第1原子力発電所における地下水の遮へい工法の検討状況」の主なQA
Q.いつから着工する予定(見込み)なのか。
A.設計の検討結果次第にて現時点では不明。

Q.今年度中の着エはあり得るのか。
A.(設計の検討の結果次第にて)現時点では何とも言えない。

Q.早く着手しなければ地下水や海水の汚染が拡大するのではないか。
A.発電所敷地の地下水は山側から海側に流れている。ただし、流速は遅く(5~10cm/日)、仮に敷地地下に微量に汚染した水が浸透し、その地下水が海に向かって流れたとしても、時間的猶予(沿岸に到達するには1年以上)はあると考えている。

Q.1年後には対策を打つのか?
A.地下土中をゆっくり水が流れる際に、土壌に吸着される核種もあり、沿岸に到達する地下水が汚染されているか否かも含めた評価検討が必要。

Q.費用はどの程度か。
A.設計の検討結果次第にて現時点では不明。

SQ.概算でも言えないのか。10億円レベルなのか、数百億円レベルなのか、それ以上なのか。
SA.設計の検討ではさまざまな工法を検討するし、基本仕様そのものの見直しもあるかもしれないので、現時点では何とも言えない。

Q.費用について何らか計上すべきではないか。隠れ債務ではないか。
A.費用負担については、国のプロジェクト化も含め、国の直接的な負担の可能性について、政府に相談してきているところ。概算も不明であり、またその費用負担のあり方も今後の検討事項のため、当社の費用として計上すべき段階でない。         以上
2011年6月20日


IAEA:原発事故評価見直しへ 「レベル8」新設も
 

【ウィーン樋口直樹】東京電力福島第1原発事故を受け、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)は原発事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)の見直しに着手する。現行の0から7までの8段階を細分化するなどして、事故による環境や健康への影響度をより実態にあった形で評価する考えだ。「レベル8」以上の新設や従来の「レベル7」までをさらに細かく分類する可能性がある。
 IAEAの天野之弥事務局長は20日の閣僚級会議で「INESは重要な情報手段だ。しかし、福島第1原発事故については、INESの評価は役に立たないことが判明した」と述べ、INESの諮問委員会に尺度の改善を要請することを明らかにした。
 福島事故は今年4月、史上最悪とされているチェルノブイリ原発事故(86年)と同じ「レベル7」に引き上げられたが、天野氏は事故の構造も周辺への影響度もチェルノブイリ事故に遠く及ばないとの見解を示してきた。評価尺度の細分化で両事故の深刻さの違いを明確にする狙いがありそうだ。
 INESはレベル7の評価要件の一つとして「放射性物質ヨウ素131等価で数万テラベクレル以上の放射性物質の外部放出」を挙げている。福島原発の放出量はこれに該当するが、チェルノブイリ事故放出量の10分の1程度とされている。
毎日新聞 2011年6月22日 11時33分(最終更新 6月22日 12時23分) 



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