みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

読書日記:社会学者・上野千鶴子さん 「悪魔の光線」以後の世界で/優雅に咲くカサブランカ

2016-07-15 20:39:06 | ジェンダー/上野千鶴子
谷汲に行って、百合を生産しているところから直接カサブランカを仕入れてきて、
友人のお誕生日プレゼントに発送しました。
カサブランカを全国に発送しているお店には、
年一回この時期に行くので、「今年も来たね」と覚えていてもらえます。

一束(3本)分を自宅用にのこしておいて、
水あげして花瓶に挿して、薪ストーブの上に置きました。

活けてすぐに一輪咲いて、いまは3輪咲いています。
品質と花持ちが良くて、最後の一輪まで咲ききるので、長いあいだ楽しめます。

カサブランカの優雅に咲く白い大きな花は、
百合のなかでも別格で、やっぱりいちばん好きです。

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7月に咲くカサブランカを毎年お送りしているのは、上野さん。
ちょうどお誕生日に、毎日新聞夕刊に、読書日記が掲載されました。

  読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 「悪魔の光線」以後の世界で
毎日新聞 2016年7月12日

 *6月14日〜7月11日
 ■キュリー夫人伝(新装版)(エーヴ・キュリー著、河野万里子訳・2014年)白水社・2808円
 ■マダム・キュリーと朝食を(小林エリカ著・2014年)集英社・1404円
 ■光の子ども 1、2巻(小林エリカ著・2013、2016年)リトルモア・1512、1728円


 3・11から4回目の国政選挙で、原発は争点の中心にはならなかった。わたしたちはあの悪夢を、もう忘れてしまったのだろうか?

 放射能の発見から世界を何度でも破壊できる核兵器の開発まで、わずか半世紀足らず。その発見者、ノーベル賞を2度受賞した女性科学者、マリー・キュリーの次女エーヴ・キュリーによる伝記「キュリー夫人伝」が、新訳刊行された。

 大きくなったら何になる?……キュリー夫人みたいになりたい。どれだけの女の子たちがそう言ってきたことだろう。長じてのち、「キュリー夫人みたいになる」ことがどんなに至難かがわかるのだけれど。とはいえ、彼女の存在はどれほどのリケジョたちを励ましただろうか。

 夫をむごい馬車の事故で亡くしてから、彼女は38歳の若い未亡人になる。それから1934年に66歳で死ぬまでのおよそ30年間に世界を股にかけて獅子奮迅の働きをする。最後は長年の放射能実験のせいで、白血病でぼろぼろになって死ぬ。まだ放射能の怖さは知られていなかった。

 「悪魔の光線」を見つけてしまった人類のその後。科学の発展はやまず、やがてマンハッタン計画を経て、広島、長崎に原子爆弾が落とされるまではあっというまだった。

 若い女性作家、小林エリカが「マダム・キュリーと朝食を」で、放射能汚染以後の世界を描く。フクシマ以後の街で、自由になった猫が主人公だ。街も公園のブランコも、猫も光る。人間には目に見えない「光」が、猫には見える。時空を超越して、ラジウム発見以前と以後の世界を文章の力だけで縦横に旅する。破局の予感に胸がしめつけられるようだ。なぜなら私たちはその後、を知っているから。

 小説家かと思っていた小林エリカに、「光の子ども」というコミックがあることを知った。13年に1巻が出てから3年かけて2巻目が出て、完結した。これをコミックと呼ぶべきだろうか。あるいはコミックエッセイと? たしかに絵と吹き出しとコマ割りはある。ダイナミックなコマ割りの構図のなかに、核分裂の数式が書かれ、岡崎京子の線を思わせるタッチで、キュリー夫人の一生が、彼女の生きた世界史の文脈に織り込まれて、鮮明に描かれる。破滅の予感が全編に漂う。そして最後は……広島の焼け跡だ。それを見ているのは現代の少年、光と猫だ。破局を知っているのに、止めようとしても止められない人類の運命。

 78年生まれの小林の世代には、抜きがたい終末感が色濃くあると感じてきた。95年の阪神大震災とオウム事件のときには、多感な10代だった。20代で9・11を経験し、30代で3・11を経験している。それにしても、中村文則が「マンガ表現の最先端」と呼ぶ彼女の表現を、いったいどんなジャンルと呼べばよいのだろう。日本のコミック文化が、今や世界中どこにもないユニークな達成を生んだ。あまりにユニークなので、誰にも、どの分野においても、評価することがむずかしいだろうとすら思わされる。この世代は言語表現以前に映像による自己表現を学んだ世代だ。端倪(たんげい)すべからざる才能である。

 マダム・キュリーがもし放射能を発見していなかったら。ヒロシマ、ナガサキはなかったのか。そしてフクシマは? だが、誰もそれを止められない。そして破局のあとで、「世界の終わり」のような光景を目にしながら、それでも生きていかなければならない「光の子ども」たち……ポスト3・11の世代は、どんな選択をするだろうか。

 筆者は上野千鶴子、松井孝典、津村記久子、松尾スズキの4氏です。
 ■人物略歴
うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。 


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7月14日(木)のつぶやき

2016-07-15 01:09:19 | 花/美しいもの
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