みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

読書日記:社会学者・上野千鶴子さん 「当事者研究」の成長見守る

2013-08-21 21:03:29 | ジェンダー/上野千鶴子
昨日の毎日新聞夕刊の「読書日記」は上野千鶴子さん。
「当事者研究」がテーマです。


毎日新聞夕刊 2013年08月20日

『べてるの家の「当事者研究」』は出てすぐに買って読んだのですが、
今年出版された他の二冊はまだ読んでないので、読んでみたいです。
 
  読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 「当事者研究」の成長見守る  
毎日新聞夕刊 2013年08月20日

 *7月23日〜8月19日
 ■当事者研究の研究(石原孝二編、2013年)医学書院
 ■べてるの家の「当事者研究」(浦河べてるの家、2005年)医学書院
 ■闘争性の福祉社会学(副田義也編、2013年)東京大学出版会


 当事者研究がブームである。

 「当事者研究」の名を世に知らしめた「べてるの家の『当事者研究』」が出てからおよそ8年。とうとう「当事者研究の研究」という書物が出るに至った。東京大学の哲学者や倫理学者たちが乗りだして、「当事者研究とはいったい何か?」という研究プロジェクトを組んだ。その成果に、当事者による当事者研究が加わったもの。いや、この言い方はとてもヘン。当事者研究とは当事者によるもの。専門家から研究をうばいかえすためのものだったはずだ。それが蓄積されてきて、当事者研究の名においていったい何が行われているかに、関心をもった研究者たちが、当事者研究のメタ(超)研究に乗りだしたというところだろうか。

 当事者研究は「当事者」+「研究」の合成語。当事者とは「問題を抱えた人」のこと。研究とは実証的科学的な知見。問題を抱えた人が、自分で自分の問題を「研究」したとたん、これまではそれは「研究」にならない、と言われてきた。なぜなら客観的でも中立的でもないから、と。問題を抱えた人は、その問題を処理できないほど、無力で受動的な存在だと考えられてきた。それが、当事者は自分の問題の「専門家」である、という考え方が登場し、それに専門家が耳を傾けるようになったのだ。そのなかには、浦河べてるの家のように統合失調症の患者さんもいれば、発達障害の当事者もいる(綾屋紗月、熊谷晋一郎「発達障害当事者研究」・医学書院)。脳性麻痺(まひ)の当事者もいれば(熊谷晋一郎「リハビリの夜」・同)、薬物中毒の当事者もいる(上岡陽江、大嶋栄子「その後の不自由」・同)。障がい者の人たちのつくりだした障害学もあるし、不登校の経験者の語りもある。さらにはアルツハイマー症の患者さんの発言もある。

 このところ次々に登場した書物の数を見ると、時ならぬブームの感を深くする。同じ出版社に偏っていると感じるひともいると思うが、さよう、当事者研究ブームには仕掛け人がいる。どんなメッセージも、ないところからそれをどう生み出すか、そしてどんなパッケージで読者に届けるか、というなかだちをする役回りがある。医学書院の編集者、白石正明さんがその名伯楽である。
 当事者研究には「誰に研究の資格があるか」という問いと、「何が研究の主題として適切か」という問い、「研究とはどのようにして行うか」という方法についての問いに対する挑戦がある。副田義也編の「闘争性の福祉社会学」に収録したわたしの「『当事者』研究から『当事者研究』へ」はこの問いに答えたものだ。79歳になる編者、副田さんの、福祉を「闘争の場」ととらえる視点が若々しい。

 当事者研究は学問のメニューに新しい主体と主題をつけ加えただけになるのか? それともこれまでの学問のあり方そのものをゆるがす挑戦になるのか? はたまた学問のなかのちょっとしたスパイスとして、そんなこともあったっけ、とひとつのエピソードに回収されてしまうのだろうか。自分たちのやっていることを「研究」と呼んだとたんに、学知の再生産の制度化をめぐる、ありとあらゆるお約束ごとがおしよせてくる。「ミイラ取りがミイラになる」先例はこれまでにもある。「科学的な知」とは知の中でも特殊な知の一種にすぎないのに、それはおそろしく大きな抵抗勢力として立ちはだかるだろう。

 当事者研究はよちよち歩きを始めたばかりだ。その成長を見守りたい。

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 筆者は上野千鶴子、福地茂雄、朝吹真理子、苅部直の4氏です。
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 ■人物略歴
 ◇うえの・ちづこ
 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。


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毎日新聞夕刊の「読書日記」は、4人の執筆者が順番に書いて毎週火曜日に載ります。
6月と7月の上野千鶴子さんの読書日記も紹介します。

 今週の本棚:<おんなの思想>/読書日記:社会学者・上野千鶴子さん 就職戦線 埋まらない男女の差(毎日新聞)
(2013年07月30日 みどりの一期一会)

 読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 就職戦線 埋まらない男女の差
毎日新聞夕刊 2013年07月23日 

 *6月24日〜7月22日
 ■就活生の親が今、知っておくべきこと(麓幸子著、2011年)日経プレミアシリーズ
 ■しあわせに働ける社会へ(竹信三恵子著、2012年)岩波ジュニア新書
 ■女子のキャリア(海老原嗣生著、2012年)ちくまプリマー新書


 大学生の就活開始時期が3年生の3月に延期されたという。一昔前「就職協定」があった頃には7月開始だった。それがどんどん前倒しになり、3年の秋から。2年生や3年生の夏にインターンを導入している企業もある。4年の5月にはほぼ内定をゲット。それ以降にも決まらない学生は卒業まであせりまくる、という就活の「定番」はいつからできたのか。このせいで3年後期から学生は浮足だち、内定をとればとったで学習意欲がいちじるしく低下して4年制大学の後期教育課程は崩壊の危機に直面している。

 不況下で新卒内定率は依然、低いままだ。景気が上昇しても先進国では「雇用回復なき景気回復」のパターン。海外での雇用は拡大するかもしれないが、国内雇用は精選される。湯浅誠さんが「どんとこい、貧困!」(イースト・プレス)でいう「椅子取りゲーム」の椅子の数が大幅に減少していることを学生たちはよく知っているからこそ、就活に血眼になる。今でも彼らの望みは、大企業の終身雇用をゲットすることだ。

 就活の学歴差、学校間格差の大きさはつとに指摘されているが、それと並んで大きいのがジェンダー差。就活戦線は男子と女子とではいちじるしく違う。

 日経ウーマンの元編集長、麓幸子さんには「就活生の親が今、知っておくべきこと」がある。「母と子の444日就活戦争」と帯にある本書は、ご自分の息子さんの就活体験にもとづいて書かれたものだが、そのなかに、「女子学生とその親たちに伝えたいこと」という章がある。麓さんは本書刊行から2年後、下の娘さんの就活期を迎えて、リアルタイムで「続・母と子の就活戦争」を日経電子版でWeb連載中。読者もつい応援団の気分になる。

 「雇用のカリスマ」海老原嗣生さんの「女子のキャリア」は、帯に「<男社会>のしくみ、教えます」とある。海老原さんは雇用の「一番の問題はジェンダーでしかない」と言い切る。もう1冊似たようなテーマを扱った本に、永濱利廣「男性不況」(東洋経済新報社)がある。が、この種の本にありがちな「男の職場を奪ったのは女」ととられかねないあおりがあるのは、感心しない。副題に「『男の職場』崩壊が日本を変える」とあるが、「男の職場崩壊」を招いたのは女性ではないし、かえってこれまで男性がその能力にかかわらず不当に「優遇」されてきたことを証明するようなものだろう。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


読書日記:上野千鶴子さん 「コミュニケーション保障」が重要(毎日新聞)
(2013年6月26日 みどりの一期一会)

 読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 「コミュニケーション保障」が重要
毎日新聞夕刊 2013年06月25日 

 *5月28日〜6月24日
 ■わたしは目で話します(たかおまゆみ著、2013年)偕成社
 ■さとし、わかるか(福島令子著、2009年)朝日新聞出版
 ■声に出せないあ・か・さ・た・な(天畠大輔著、2012年)生活書院


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 このところ、ことばと人間についてふかく考えさせられる本をいくつか、立て続けに読んだ。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のたかおまゆみさんの「わたしは目で話します」。筋肉がしだいに麻痺(まひ)して動かなくなるという進行性のこわい病気だ。呼吸器をつけて声を失ったが、ベッドに寝たきりでも、文字ボードを使って話ができる。「通訳」と目と目を合わせて文字を拾う、というやりかただ。それで彼女は、本を1冊書いてしまった。49歳で発症するまで、たかおさんはドイツ語通訳と盲聾(もうろう)児教育の経験がある。いわばコミュニケーションのプロだった。見えない、聞こえない子どもにことばを教えるということ……。ヘレン・ケラーがwater!と叫んだとき、彼女の世界にいっきょに光が差しこんだように、たかおさんは「言葉が人間を人間にする」という。そういえば、盲聾の多重障がいを持つ初の東大教授、福島智さんは、指点字というまったくユニークなコミュニケーションの方法を子ども時代にお母さんと考え出した。その感動的ないきさつは、母、福島令子さんの「さとし、わかるか」に描かれている。福島さん自身の「盲ろう者として生きて」(明石書店)という著書もある。

 障がいのあるひとにさまざまな支援が提供されているが、ただ食べて寝てという生存保障だけではじゅうぶんではない。人間は他者との「あいだ」に生きている。それならひととひとをつなぐ「コミュニケーション保障」は不可欠ではないか。最近ようやく定着してきたメディアやイベントにおける情報保障や緊急時の伝達保障にとどまらない。それは、自分が自分であるための、たかおさんのことばを借りれば「人間が人間である」ための必須の条件だからだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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8月20日(火)のつぶやき

2013-08-21 01:09:31 | 花/美しいもの

自らを「永遠の偽善者」と呼ぶ若手首長は、なぜ住民のために生きることを決意したのか――山中光茂・松阪市長インタビュー|“ニッポンの地方”再生物語|ダイヤモンド・オンライン diamond.jp/articles/-/404… @dol_editorsさんから

1 件 リツイートされました

8月は、日本軍「慰安婦」問題=軍事性奴隷制度を考える月に ⑧ | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=118…


はだしのゲン:閲覧制限 前教育長、教育委員に諮らず決定 mainichi.jp/select/news/20…


はだしのゲン:鳥取市立中央図書館でも事務室に別置き mainichi.jp/select/news/20…


「はだしのゲン」貸出禁止にモノ申す! 言論の自由が、ヘイトスピーチに屈する社会 | グローバルエリートは見た! - 東洋経済オンライン toyokeizai.net/articles/-/178… @Toyokeizaiさんから


社説:はだしのゲン 戦争知る貴重な作品だ/はだしのゲン―閲覧制限はすぐ撤回を blog.goo.ne.jp/midorinet002/e…


松江市教委事務局、独断で要請 「はだしのゲン」閲覧制限 - 中国新聞 chugoku-np.co.jp/News/Sp2013082… @ChugokuShimbunさんから


福島、甲状腺がんの子ども18人に 県健康調査  :日本経済新聞 s.nikkei.com/14wIm6I 甲状腺がんと診断が「確定」した子どもは、前回6月の12人から6人増え、18人になったと報告された。「がんの疑い」は25人(前回は15人)。

寺町みどりさんがリツイート | 49 RT

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社説:はだしのゲン 戦争知る貴重な作品だ/はだしのゲン―閲覧制限はすぐ撤回を

2013-08-20 11:39:16 | 「ジェンダー図書排除」事件
『はだしのゲン』が松江市の学校図書館で排除された事件の
報道を発端に、閲覧の自由を求める署名がはじまり、
全国に、松や市教育委員会の対応に抗議の声がひろがっています。

朝日新聞と毎日新聞も、きょうの社説で取り上げました。

きょうのブログは、事件の続報を集めました。

 
  社説:はだしのゲン 戦争知る貴重な作品だ
毎日新聞 2013年08月20日 

 原爆や戦争を教育現場で学び、その悲惨さを知る機会を子供たちから奪うことになるのではないか。

 自らの被爆体験を基に描いた故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」が松江市内の小中学校の図書室で自由に閲覧できなくなったことだ。

 市教委は昨年12月、過激な描写があるとして、書庫に収める閉架措置を取るよう校長会で求めた。旧日本軍のアジアでの行動などで暴力的な場面があり、子供が自由に読むのは不適切と判断したという。全10巻を保有する39校全てが応じた。

 この措置が先週明らかになると、市教委に全国から抗議や苦情が多数寄せられた。現場の教員からも、子供の知る権利の侵害だという批判が相次いでいる。

 戦争の恐ろしさを知り、平和の尊さを学ぶことは教育の中でも非常に重要な要素だ。平和教育を推進すべき教育委員会がそれを閉ざす対応をとったことには問題があり、撤回すべきだ。また、今回の措置は教育委員が出席する会議には報告していないというが、学校現場の校長らも含めてしっかり議論すべきだろう。

 市教委がこのような判断をしたきっかけは、松江市議会に昨年8月、1人の市民から「誤った歴史認識を子供に植え付ける」と学校の図書室から撤去を求める陳情があったことだ。市議会は、過激な部分がある一方で、平和教育の参考書になっているとの意見があり、陳情を不採択にした。だが、独自に検討した市教委は「旧日本軍がアジアの人々の首を切るなど過激なシーンがある」として小中学生が自由に持ち出して読むのは適切ではないと判断した。

 1973年から少年漫画誌で連載された「はだしのゲン」は、戦争が人間性を奪う恐ろしさを描いた貴重な作品として高い評価を得てきた。約20カ国語に翻訳され、原爆被害の実相を広く世界に伝えている。松江市教委も、作品が平和教育の重要な教材であること自体は認め、教員の指導で授業に使うことに問題はないと説明している。

 作品に残酷な描写があるのは、戦争や原爆そのものが残酷であり、それを表現しているからだ。行き過ぎた規制は表現の自由を侵す恐れがあるだけでなく、子供たちが考える機会を奪うことにもなる。今回のような規制が前例となってはならない。

 中沢さんは生前、「戦争や原爆というテーマは奥が深い。ゲンを入り口にいろいろと読んで成長してくれれば作者冥利に尽きる」と話している。被爆者が高齢化する一方、戦争を知らない世代が増え、戦争や原爆被害の体験を語り継ぐことがますます重要な時代を迎えている。こうした継承を封じてはならない。


 社説:はだしのゲン―閲覧制限はすぐ撤回を
朝日新聞 2013年08月20日

 広島での被爆を主題にした漫画「はだしのゲン」を、松江市教委が小・中学校の図書館で自由に読めなくするよう指示していたことがわかり、全国から批判が相次いでいる。

 作品の終盤には、旧日本軍がアジアの人々の首を切断するなどの描写がある。市教委は昨年12月、「過激な表現だ」として、学校の許可なしで見られなくするよう校長会に求めた。貸し出しも認めないという。

 「ゲン」は昨年12月に死去した漫画家の中沢啓治(なかざわけいじ)さんの作品だ。実体験した原爆の惨状と戦後の苦難に加え、資料などで知った戦場の様子を強烈なタッチで描いて反響を呼んだ。

 学校図書館で読める数少ない漫画として「ゲン」を手に取り、初めて原爆に関心を持った子どもも少なくない。

 市教委の指示は、子どもたちのそうした出会いを奪いかねないものだ。しかも重要な決定の場合、公開の教育委員会議にかけるべきだが、今回は事務局の判断で決まっており、不透明というしかない。市教委はただちに指示を撤回すべきだ。

 きっかけは、ある男性から昨年8月に市議会に出された陳情書だった。「ありもしない日本軍の蛮行が掲載され、子どもたちに悪影響を及ぼす」とし、学校からの撤去を求めていた。

 陳情は不採択となったが、一部市議から「不良図書」ととらえ、市教委が適切な処置をすべきだとの意見があり、閲覧制限の指示につながった。

 「ゲン」には連載当時から「残酷」という声が寄せられ、中沢さんも描き方に悩んだと述懐している。旧軍の行為や昭和天皇の戦争責任を厳しく糾弾している点から、「偏向している」「反日漫画だ」といった批判も保守層の間で根強い。

 それでも、「ゲン」が高い評価を得たのは、自身が目の当たりにした戦争の残酷さを力いっぱい描くことで、「二度と戦争を起こしてはならない」と伝えようとした中沢さんの思いに子どもたちが共感したからだ。

 漫画を否定しがちだった先生たちが、限られた図書館予算の中から「ゲン」を積極的に受け入れたのも、作品のメッセージ力が強かったからこそだ。

 旧日本軍の行為や天皇の戦争責任をめぐっては今もさまざまな見方があり、「ゲン」に投影された中沢さんの歴史観にも議論はありえるだろう。

 それこそ、「ゲン」を題材に、子どもと大人が意見を交わし、一緒に考えていけばいい。最初から目をそらす必要はどこにもない。  


 <はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」
/昨年12月議会で撤去を求める陳情不採択も(2013.8.17 みとせりの一期一会)
 


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 はだしのゲン:松江市教委の閲覧制限要請 怒りや疑問の声 /広島  
毎日新聞 2013年08月17日 地方版

 原爆被害を伝える貴重な作品として、教育現場でも広く活用されてきた漫画「はだしのゲン」について、松江市教委が「描写が過激」だとして、市内の小中学校に対し、児童や生徒へ自由に閲覧させないよう閉架措置を取るよう求めていたことが16日判明し、広島の関係者からは怒りや戸惑いの声が挙がった。

 「ゲン」は昨年12月に73歳で亡くなった中沢啓治さんが、被爆した自らの体験を基に描いた漫画。中沢さんの妻ミサヨさん(70)は「信じられない。残虐な描写があるとのことだが、現実はこんなものではなく、主人は文献などを調べながら、どうやれば子どもたちに伝わるか考え、漫画を通して伝えてきた」と話し、「(ゲンの連載が始まってから)40年続けて訴えてきたことは何だったのか。夫は怒っているだろう」と疑問を投げかけた。

 中区の原爆資料館で開催中の「はだしのゲン」原画展を訪れていた人たちからも疑問の声が相次いだ。

 小学5、6年の娘2人と来た神奈川県鎌倉市の姜麗子さん(36)は、子供の頃からゲンを読み、中学校の文化祭ではゲンを題材に演劇をしたという。「大人になっても子供に伝えたいと思って来た。原爆の恐ろしさを伝えるのにいい作品。(閉架措置は)もったいない」と話した。

 小学校の図書館にあったゲンを夢中で読んだという滋賀県草津市の会社員、祖父江亮太さん(27)は「昔はただ怖いと思っていたが、今は戦争の原因などを考えることができるようになった。漫画だけど、事実が正確に描いてあり、リアルに当時を感じることができた」。友人の男性(27)も「漫画だから小学生も読みやすい。小学校の時に読んでいなければ今回、来ようと思わなかったかもしれない」と話した。

 会場に置かれたノートには「はだしのゲンは戦後や平成生まれの人に原爆の恐ろしさを教える貴重なしりょうでもあると思う」(12歳)「小学校の頃とはまた違う気持ちで見ることができました。子供にも読ませます」といった感想が残されていた。【植田憲尚、加藤小夜】


 はだしのゲン:閲覧制限 前教育長、教育委員に諮らず決定  
毎日新聞 2013年08月20日
 
 松江市教委が故中沢啓治さんが自らの被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を全小中学校に求めている問題で、当時の福島律子教育長が自身を含めた教育委員(5人)の会議に諮ることなく判断したことが19日、分かった。同市教委は22日の定例会議で委員に説明するが、委員から「少なくとも(委員に)報告するべきだった」との声があがっている。同市教委には19日夕までに1253件の意見がメールや電話などで寄せられ、9割が批判する内容だったという。

 古川康徳・副教育長によると、昨年8月に学校図書室からゲンの撤去を求める陳情が同市議会に提出され、当時の前教育長と副教育長2人、同市教委の課長2人の計5人で対応を協議。旧日本軍がアジアの人々の首を切ったり、女性に乱暴するシーンなどを問題視し、12月の校長会で教師の許可なく閲覧できない閉架にするよう口頭で求めた。教育委員に説明しなかったという。

 ある委員は「教育委員に報告するなり、会議にかけて決定する話だと思う」。別の委員も「これだけ全国的にも話題になっている。もう1回話し合う必要がある」と批判した。

 福島・前教育長は取材に「全教育委員に諮らなければならない事例とは思わなかった。反省している。私も全巻を読んで性描写のショックが大きく、簡単に子供が閲覧できる状況にしてほしくなかった。作品を否定するつもりはなく、見せ方を工夫してほしいというつもりだった」との見解を示した。

 一方、同市教委には19日夕までに全国からメールで979件、電話で205件などの意見が寄せられた。9割は苦情や抗議といい、子供の知る権利や表現の自由などを求める声が多かったという。【曽根田和久、金志尚】


 松江市教委事務局、独断で要請 「はだしのゲン」閲覧制限(2013.8.20 中国新聞) 


  はだしのゲン:鳥取市立中央図書館でも事務室に別置き 
毎日新聞 2013年08月19日

 漫画「はだしのゲン」を松江市の全小中学校が閉架措置とした問題で、鳥取市立中央図書館も2年前からゲンを事務室に移し、自由に手に取れない状態にしていたことが19日、分かった。

 同図書館によると、ゲンは児童書コーナーに置かれていたが、2011年夏にゲンを読んだ小学校低学年の児童の保護者から「強姦(ごうかん)などの性的描写などがあり、小さな子が目にする場所に置くのはどうなのか」とクレームがあった。貸し出しカウンター裏の事務室内に別置きする措置を取り、そのまま放置されていたという。希望があれば、閲覧や貸し出しには応じていた。

 同図書館は、29日に今後の取り扱いを協議する。西尾肇館長は「協議を怠り、反省している。市民の知る権利を守るのが図書館の役目なので、一般書コーナーに移動させるなどしたい」と話している。【川瀬慎一朗】


 「はだしのゲン」貸出禁止にモノ申す! 言論の自由が、ヘイトスピーチに屈する社会 
2013年08月18日 東洋経済オンライン

なに、ついに「はだしのゲン」が禁止される時代が来たか・・・。

松江市教育委員会がなんと、市内にある市立の全小中学校に対し、あの伝説の名著「はだしのゲン」を小学生に対して自由に閲覧できない閉架の措置をとるよう要請したことが注目を集めている。

これは「教育委員会、何やっとるねん!」ですむ問題ではなく、その背景に根深い現代社会の“言論の不自由”という問題点がある。そこで本日も香港の高層ビルの一室から、せっかくの日曜日で香港ディズニーに行くはずだったのに、地球の平和を守るため急旋回して出撃しよう。

「はだしのゲン」貸出禁止の背景にあるもの

皆様ご存じのとおり、「はだしのゲン」は実際に原子爆弾を被爆した作者によって書かれたもので戦争の真実を映し出しており、当時を知るための資料としても価値が高い。実際に戦争や原爆の悲惨さを伝える一級資料として、日本のみならず世界20か国で翻訳されて読まれ映画化もされてきた。そこには戦争で焼け野原になり、罪のない一般市民が殺されるという被害者としての側面と、戦争の加害者としての両面が鮮明かつ本質的に描き出されている。

したがって戦争の実態を捻じ曲げて教えたい歴史修正主義の人々に対しては目の上のタンコブとうことで、“はだしのゲン”は歴史を書き換えようとする勢力にとって、極めて都合の悪い歴史の証拠でもあった。

教育委員会側は“表現が過激だ”としているが、何十年の間、何千万の人に読まれた 「はだしのゲン」で、PTSDになった人でもいるのだろうか。

戦後70年の月日を経て、戦争と歴史の記憶にどう抗うかを考えるときに、教科書からもメディアからも歴史の実態を消そうという動きがある中で、メディアや報道機関があまりに無力なのが残念だ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「ゲン」自由閲覧求めネット署名 1万人、松江市教委に提出へ
2013年08月19日 河北新報

 松江市教育委員会が市立小中学校に「はだしのゲン」の閲覧制限を求めたことに対し、「自由に読めるように戻してほしい」と求める電子署名活動がインターネット上で始まり、19日夜までに約1万人分の署名が集まった。
 活動は署名サイト「change・org」で行われ、堺市北区の学童保育指導員樋口徹さん(55)が16日から署名を呼び掛けている。樋口さんは9月にも、集まった署名を松江市教委に提出する予定。
 樋口さんは、学童保育の平和教育にはだしのゲンを活用しており「6~9歳の子供も、作者の反戦のメッセージを受け止めている。残虐なシーンはあるが、子供はあまり問題視していない」と話している。 


 有識者「ゲンの撤去不適切」  
2013.8.19 中国新聞

 松江市教委が漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を小中学校に要請していた問題で、市教委が「ゲン」の学校図書館からの撤去を事前に有識者と相談し、「図書館の自由に基づけば不適切」と指摘されていたことが18日、分かった。市教委は「当初から撤去しない方針で、その論拠を補強するためだった」としている。

 市教委によると、担当者が昨年11月12日、図書館学を専門とする島根県内の短大講師と面会。日本図書館協会が図書館運営の基本を定めた「図書館の自由宣言」で、図書館に資料の収集、提供の自由が保障されている趣旨から「撤去は不適切」とされたという。

 また同10月には図書館を持つ市内の49小中学校に「ゲン」の保有状況と描写への意見を聞くアンケートを発送。同月末までに描写への賛否が寄せられたという。

 市教委は「ゲン」の撤去を求めた市民の陳情が市議会で不採択となった同12月以降も対応を協議した。理由を古川康徳副教育長は「歴史認識を問題とした陳情とは別の議論。陳情を機に確認した『ゲン』の過激な描写を問題視した」とする。専門家の指摘と協議の結果、「閲覧や貸し出しの全面禁止でなければ、図書館の自由を侵さない」と独自に判断し、閲覧制限を要請したという。

 日本図書館協会の会員である岡山県立図書館(岡山市北区)の岡長平副館長は「図書の閲覧制限は各図書館の責任で決めるのが大原則」とする。さらに「過去に行政から制限を求められた例は記憶にない」という。



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8月19日(月)のつぶやき

2013-08-20 01:09:01 | 花/美しいもの

「はだしのゲン、自由に読ませて」電子署名2日で6千人 - 朝日新聞デジタル (asahi.com) t.asahi.com/c5xm  呼びかけ人は堺市の人だって。署名しました。署名サイトはchn.ge/1ahoBHy

寺町みどりさんがリツイート | 3 RT

ネットと政治 居眠りしている暇はない/ネット選挙解禁 功罪を検証し政治に生かせ goo.gl/aJDful


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ネットと政治 居眠りしている暇はない(河北新報)/ネット選挙解禁 功罪を検証し政治に生かせ(読売社説)

2013-08-19 17:26:17 | 選挙関連
ワレモコウ(吾亦紅)が背丈より大きくなって
先っぽに丸い花穂をつけています。
陽がかげってから撮ったので暗いのですが、赤くてかわいい花です。



ワレモコウは、「割木瓜」とも書き、
「木瓜(もこう)」とは、
「鳥の巣と卵を表した漢民族の丸い模様のことで、
ワレモコウの小花の形が、割れ目を入れた木瓜の模様に似ているから」。

種から育てた「フレンチマリーゴールド」も咲き始めました。
  
春に咲いていた花たちも、実になっています。
  
姫リンゴ   フユサンゴ(冬珊瑚)   クジャクツバキの実

家の裏に回ると、甘い香りがたたよっています。

クサギの花です。

まだまだ暑いのですが、花たちには秋の気配が漂っています。

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昼間は外に出られないので、本を読んだり、P-WANのニュースセレクトをしたり。

昨日の河北新報の社説が、とてもおもしろく共感したので紹介します。
他のネット選挙の関連の記事も集めてみました。

・・・ だが、そうではあっても有権者と政治をつなぐ回路は一つでも多い方がいい。
 有権者がネットを適切に使いこなす能力「ネットリテラシー」は、選挙においても確実に向上していく。やすきに流され、次の選挙まで居眠りを決め込む政治家は、早晩見放されると心すべきだ。
 

  ネットと政治 居眠りしている暇はない  
2013年08月18日 河北新報

 有権者の政治不信を増幅させる原因は、多くの場合、政治の不作為による。選挙の際の意図的な争点隠しがその代表格。しかし、これからは、単なる無精も政治の不作為と見なされるのではなかろうか。
 インターネットを使った選挙運動が解禁された参院選から1カ月。東北6選挙区で立候補者のその後を調べてみた。案の定と言うべきか、短文投稿サイトや交流サイトの多くが休眠状態になっていた。
 ネット選挙は、世事の流行に乗ったものでもなければ、選挙に彩りを添える道具立てでもないはずだ。選挙が終わったからネットによる発信も終わり、では有権者への背信に等しい。
 選挙が公示された途端、さまざまな政治活動に規制が加わるさまを巧みにたとえた文章を見つけた。いわく「つい先ほどまでピンピンしていた魚が、瞬間冷凍されたようなもの」。
 確かに、これまでの選挙戦は「べからず」集の公選法でがんじがらめになり、やむなく名前を連呼するのが常だった。
 こうした寒々しい選挙風景を、政策本位の論戦へと塗り替える一助と期待されたのがネット選挙だった。最大の眼目は、政治と選挙の断絶を埋め、日常の政治活動を選択の基準にすることにある。導入を決めたのは政治家自身だ。
 ところが参院選では「何を発信したらいいか分からない」という陣営のため息を何度も聞いた。結果、遊説日程や応援弁士とのツーショット写真が繰り返し配信されることとなった。
 ネットを政策発信の日常使いにする努力を、この人から学んだらどうか。
 民主党の前衆院議員逢坂誠二氏(北海道8区)がネット配信する「徒然日記」は、2005年の初当選以来、ほぼ毎日更新しており、書き込みは2100回を超える。
 昨年12月の衆院選で落選したが、有権者との対話や内政、外交を問わない政見の発信がやむことはない。前述の瞬間冷凍のたとえも、参院選公示日の逢坂氏のブログからの引用だ。
 まだ北海道ニセコ町長だったころの逢坂氏には、こんな逸話もある。
 役場内で職員向けに配信していた「町長室日記」が、外部に漏れた。逢坂氏が取った対処は、漏出の責任追及ではなく、日記の全面公開だった。情報共有、説明責任を町政運営の柱に据えた氏の真骨頂と言えよう。
 参院選では、まっとうな政策論争を避け、ネガティブキャンペーンに傾く陣営もあった。玉石混交の情報が飛び交う仮想空間で政策を語ることに違和感を覚えた人もいるだろう。
 だが、そうではあっても有権者と政治をつなぐ回路は一つでも多い方がいい。
 有権者がネットを適切に使いこなす能力「ネットリテラシー」は、選挙においても確実に向上していく。やすきに流され、次の選挙まで居眠りを決め込む政治家は、早晩見放されると心すべきだ。 


 選挙制度改革 有識者の議論も聞いてみたい(8月18日付・読売社説)

 選挙制度のあり方は各党の消長に直結するだけに、政党間の話し合いでは合意は難しい。有識者に改革案作りを委ねる時期に来ている。

 自民党は近く、参院選で中断していた衆院の選挙制度改革論議の再開を各党に呼びかける。

 安倍首相は衆院議長の下に、有識者による第三者機関を作り、制度改革を諮問することを提案している。これを野党が受け入れるかどうかが焦点だ。

 与党は、有識者による改革案作りに理解を示す民主党、日本維新の会などと調整し、諮問機関の設置を目指す方針だ。その答申については、各党が尊重するよう取り決めておくことが大切である。

 有識者の検討期間や、答申に基づく立法化の作業、国民への周知などを考えると、衆院議員の残り任期が3年余りあっても、十分な時間とは言えまい。

 小選挙区中心の現行制度では、第1党が圧倒的な議席を獲得し、「チルドレン」と称される社会経験の浅い議員が大量に生まれる。政治家の質が低下してきたのではないかとも指摘されている。

 与野党協議では、定数削減が焦点となったが、各党が削減幅の主張を譲らず、合意形成の障害となった。定数を削れば、国会議員の法案審査がおろそかになるなど、弊害が大きい。定数削減は、選挙制度論議と切り離すべきだ。

 2012年衆院選の1票の格差を巡る訴訟では、各高裁から「違憲」判決が相次いだ。ただし、選挙制度は、1票の価値を平等にすればいいというものではない。

 完全な比例代表制とすれば、1票の格差は解消される。反面、中小政党が議席を得やすくなり、多党化は不可避だ。中小政党が政策決定の主導権を握るなど、政治は不安定化しかねない。

 地方は人口減が著しいだけに、投票価値の平等が行き過ぎると、地方の声が国政に反映されにくくなることが懸念される。

 民意を集約し、安定した政治を実現する視点が欠かせない。

 司法の要請と、政治の安定などを考慮すると、小選挙区比例代表並立制の手直しか、中選挙区制に戻すしか選択肢はなかろう。

 最高裁は参院選の1票の格差も「違憲状態」と判断している。参院の選挙制度が衆院と似通っていることが、参院に期待される「衆院の抑制や補完」という役割を損ねているとの指摘も出ている。

 衆参両院の役割分担を検討した上で、参院の選挙制度を併せて考えることが肝要である。
(2013年8月18日01時43分 読売新聞)


 ネット選挙解禁 功罪を検証し政治に生かせ(8月4日付・読売社説)

 7月の参院選で解禁されたインターネット利用の選挙運動は、どんな功罪があったのか。各政党はその点を十分検証し、国民の政治参加のあり方を考えてもらいたい。

 参院選で、各政党や候補者はホームページやブログを通じ、公約やプロフィル、遊説写真、動画などの情報発信に力を入れた。

 発信者と受け手の双方向性を持つソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では、自民党が主にフェイスブック、公明党はLINE(ライン)、共産党はツイッターなどをそれぞれ駆使した運動を展開した。

 選挙中に有権者が得られる情報量は、格段に増加した。

 ただし、その効果は、限定的であったと言えよう。

 投開票日の読売新聞の出口調査では、ネット情報を参考にしたと答えた人は、わずか11%だった。20歳代でも24%にとどまった。

 全体の投票率も低下した。

 有権者とくに若者の関心を高め、投票所に足を運ばせるという狙い通りには行かなかった。

 背景には、各党や候補者がまだ手探りの段階で、ネットを使いこなせなかったことがあろう。発信内容も、遊説日程の告知や街頭演説の動画にとどまり、政策に関する訴えや議論は少なかった。

 原子力発電所問題など賛否が大きく分かれる政策を掲げると、批判や反論が集中する、いわゆる「炎上」を招きかねない。そんな警戒感もあったようだ。

 一方、警察庁によると、懸念された候補者の「なりすまし」やホームページ改ざんといった悪質な選挙違反の摘発はゼロだった。

 政党と候補者以外の一般有権者には電子メールでの投票呼びかけを認めないなど、今回は制度面で安全運転を期したのも事実だ。

 公正な選挙を実施するうえで、違法行為を防止することが必要だ。そのための手だては、引き続き講じていかねばならない。

 特定の候補者に対して誹謗ひぼう中傷が集中する事例はあちこちで起きた。節度ある利用についての啓発活動も欠かせない。

 ネットによる選挙運動は、公職選挙法上の合法と違法の線引きがあいまいで、有権者にとって分かりにくいとの指摘もあった。与野党は、法律面でも、改善策を検討する必要がある。

 地方選でも今後、ネットの利用が拡大していくだろう。有権者にとってより身近な選挙となる。各政党や候補者は、利用の仕方に一層知恵を絞らねばなるまい。
(2013年8月4日01時22分 読売新聞)


 「理念なきネット選挙」 試される政治との距離感
ブロガー 藤代 裕之

2013/8/8 日本経済新聞

 「低調だった」「期待はずれ」という論調で振り返られている初のネット選挙だが、もしソーシャルメディアを利用して政党や候補者と有権者が政策論争を繰り広げるネット選挙が社会に浸透したらどうなるのだろうか。

■政治の話は人間関係を壊す
 「政治や宗教の話は人間関係を壊す」「ソーシャルメディアが選挙の話一色になるのは気持ち悪い」―。7月27日に行われた情報ネットワーク法学会の研究会「ソーシャルメディア社会における情報流通と制度設計」で出た意見だ。

 研究会は、ソーシャルメディアの普及によって、「誰もが情報発信者」となった社会の将来像とあるべき制度設計を考えるもので、メンバーは研究者やジャーナリストらで構成されている。筆者は敬和学園大学の一戸信哉准教授とともに主査を務めている。

 NTTコミュニケーション科学基礎研究所の木村昭悟氏は、「友だちのタイムラインでそういうのが流れるのは本当にいいのか。政治に興味がないとかではなく、自分の生活を脅かしかねない。結構危うい」と、ネットでの議論は建設的にならないこと、政治や宗教の話題は人間関係を壊す微妙な問題であると指摘した。

 確かに、終盤にネット上で激戦となった参院選東京選挙区の山本太郎陣営と鈴木寛陣営の対決の余波は、筆者のフェイスブックやツイッターのタイムラインにも及んだ。鈴木氏を支持する書き込みがある一方で、どちらの候補も応援することもできない、と表明する人も見られた。

 選挙では、ソーシャルメディアが、どの政党や政策を支持するのか、反対するのかといった思想の踏み絵になっている。選挙戦が過熱すればするほど対立は熱を帯び、旗幟(きし)を鮮明にすることを迫られる。そうすると、選挙から距離を置こうとする人が出るのも自然なことで、政治スタンスを知られたくないという人もいるはずだ。

■政治的匿名性が脅かされ始めている
 データ解析を行っているユーザーローカルの調査によれば、政党別のソーシャルメディアアカウントのファン数を調査したところ、選挙関連の報道で取り上げられることが多いフェイスブックやツイッターではなくラインが最も多かった。自民党では、ツイッターのフォロワーが6万4千に対して、ラインは9万4千。ツイッターのほうが多いのはみんなの党だけで、他の党はすべてラインが上回っている。いいね!を押したり、フォローしたりすると、周囲に分かってしまうが、ラインの場合は、どの政党の情報を見ているか他のユーザーには分からない。この政治的匿名性がライン利用を押し上げている可能性もある。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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8月18日(日)のつぶやき

2013-08-19 01:09:55 | 花/美しいもの

8月のシネエッセイ① 「母と娘の物語」 川口恵子 | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=120…


8月は、日本軍「慰安婦」問題=軍事性奴隷制度を考える月に ⑦ 岡野八代 | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=120…


河北新報 コルネット 社説 ネットと政治 居眠りしている暇はない kahoku.co.jp/shasetsu/2013/… @kahoku_shimpoさんから


中日新聞:民衆戦史を語り継ぐ 週のはじめに考える:社説(CHUNICHI Web) chunichi.co.jp/article/column…


8/31からあいち国際女性映画祭2013/三浦淳子監督の映画「さなぎ~学校に行きたくない」 goo.gl/VWeVKb


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8/31からあいち国際女性映画祭2013/三浦淳子監督の映画「さなぎ~学校に行きたくない」

2013-08-18 15:33:55 | ジェンダー/上野千鶴子
今年も、名古屋市のウィルあいちや西尾市などで
8月31日から「あいち国際女性映画祭2013」が開催されます。

よい映画が上映されるので、毎年観に行きたいと思いながら、
実はわたしは一度行っただけです。

   「あいち国際女性映画祭2013」の開催のお知らせ  

「あいち国際女性映画祭」は、今年で18回目の開催を迎えます。

国内唯一の国際女性映画祭として、女性監督が制作した作品を中心に、今年は36本(ショートフィルムを除く)の多彩な映画を上映いたします。

また、昨年から取組んでいる、ショートフィルム・コンペティションの実施、トークイベントの充実等の改革を、今年も一層進めてまいります。

特に今年はトークイベントをより充実させ、ゲストに吉永小百合さん、小山明子さんという2人の大女優をお招きして、映画に寄せる思いなどを語っていただきます。その他にも、戸田奈津子さんの講演や、新進気鋭の女性監督3人によるシンポジウム、『劇場版魔法少女まどか☆マギカ』の上映及び本作品を題材にジェンダー的考察を行うなど、さまざまな企画があります。

※作品の詳細については「あいち国際女性映画祭2013」のページを御覧ください。 



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「あいち国際女性映画祭2013」で上映される映画について、
8月16日に、中日新聞の稲熊さんが記事を書いていらっしゃいます。
題名は、「さなぎ~学校に行きたくない~」。
不登校の少女が、大学を卒業するまでの十四年間を追ったドキュメンタリー映画だそうです。

「さなぎ~学校に行きたくない~」と「いのちを楽しむ-容子とがんの2年間」
も観てみたい映画です。

  不登校の娘に寄り添う母 三浦淳子監督の映画「さなぎ」 
2013年8月16日 中日新聞

 長野県南部の喬木村で暮らす不登校の少女が、大学を卒業するまでの十四年間を追ったドキュメンタリー映画「さなぎ~学校に行きたくない~」。母は戸惑いながらも、少女に寄り添うことを決め、少女は毎日学校に通うようになり、児童会長を務めるまでになる。三十一日に開幕する「あいち国際女性映画祭2013」で九月三日に上映される。

 主人公は三浦淳子監督の友人のめいで、現在は社会人の木下愛さん(24)。映画は自然豊かな喬木村の自宅で、愛さんが小学三年生の朝、「おなかが痛い」と言いながら、母の洋子さんに促されて渋々登校の支度をする場面から始まる。

 愛さんは小学一年生の二学期から不登校になり、三年生のとき、三浦監督と出会った。監督自身、「運動が苦手で小学校に行きたくないときがあった。でも、行かないと人生がなくなってしまう感じがして、我慢して乗り切った」という。

 愛ちゃんは友達とよく遊ぶし、伸び伸びと生きている。三浦監督が抱いていた不登校のイメージは覆された。「不登校でも暗くない子がいる。でも、こういう子が学校では居心地が悪くなっていくことを知ってもらいたい」と、撮り始めた。

 後に不登校になった理由を愛ちゃんに尋ねると、「保育園のときは、自由に友達と遊べて楽しかった。小学校はもっと面白いと思っていたのに、緊張する時間が続いて楽しくない」と話したという。

 洋子さんには「おしゃべりする感じで、話してもらった」。小さなデジタルカメラを台に置き、隣で食事をしていたこともある。「淳ちゃん」と呼ばれていた三浦監督に、洋子さんは不登校だった時期の心境を吐露している。洋子さんは「どろどろとした、悩ましい時間」を乗り越え、「外へと開いていこう」と考えられるようになったという。

 タイトルの「さなぎ」は一見、死んでいるようにも見えるが、ダイナミックに羽ばたくために、じっとエネルギーを蓄える時期。「愛ちゃんにとっては、それが不登校の時期だったのではないか」。三浦監督はそう考えている。

◆31日から名古屋で映画祭
 映画祭は、三十一日から九月八日まで、名古屋市東区のウィルあいちなどで開かれる。がんの余命宣告後の生き方に迫った「いのちを楽しむ-容子とがんの2年間」や、愛知県田原市の産婦人科医を追った「潮風の村から~ある女性医師の軌跡~」、脳幹出血で倒れて寝たきりになった男性の回復を撮った「僕のうしろに道はできる~奇跡が奇跡でなくなる日に向かって~」など、女性監督による作品を中心に上映する。
 鑑賞券は当日千百円、前売り九百円。愛知県西尾市と弥富市、設楽町の会場は当日千円、前売り六百円。他の上映作品など、詳しい情報はホームページで公開している。(問)映画祭事務局=電052(962)2520
(稲熊美樹)  


ズッキーニのサラダと伏見甘長とうがらしとマーボ豆腐の夕ご飯。
   

翌朝は、そば粉のガレットと残ったおかずと、です。
   

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8月17日(土)のつぶやき

2013-08-18 01:08:20 | 花/美しいもの

<はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」/昨年12月議会で撤去を求める陳情不採択も goo.gl/9e3sn5


トラウマの重さとそこはかない希望 『トラウマ』 宮地尚子 | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/book/?p=6668


「ミニコミ図書館」の記事が読売新聞オンラインにアップされました! | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=120…


<はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」/昨年12月議会で撤去を求める陳情不採択も blog.goo.ne.jp/midorinet002/e…

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<はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」/昨年12月議会で撤去を求める陳情不採択も

2013-08-17 10:12:22 | 「ジェンダー図書排除」事件
昨日、中沢啓治さんの『はだしのゲン』(コミック版)が、
松江市内の全小中学校の図書館で「閉架措置」されているというニュースが
共同通信発で流れました。

閉架になった経過を調べてみたら、
昨年8月に、松山市議会に一市民から、
「松江市の小中学校の図書室から『はだしのゲン』の撤去を求めることについて」
という陳情が出され、9月議会で教育民生委員会に付託されて審査、
結果は、「閉会中の継続審査」となりました。

教育民生委員会は、閉会中の11月26日に委員会を開催し陳情を審査、
12月定例会では、「採決の結果、陳情第46号は挙手する者はなく不採択とすべきものと決しました。」との委員長報告があり、
本会議でも、小中学校の図書室から『はだしのゲン』の撤去を求める陳情は不採択となりました。
(議事録はブログの最後にアップしてあります)

議会が「不採択」と決した陳情を、教育委員会が陳情の含意を汲んで、
「事実上の撤去」ともいえる、「閉架措置」をとることは許されないこと。

現在、市内の学校図書館にある『はだしのゲン』は、閲覧するには教師の許可が必要、
「貸し出しは禁止」になっているようです。

一市民からの圧力に屈したと同時に、行政側が委員会で一人の委員から出た
「教育委員会みずからが判断をし、適切な処置をするべき」という発言に反応して、
「みずから閉架」にしたという経過は、福井県での図書排除(撤去)事件や、
堺市立図書館から「青少年に見せたくない図書」を閉架に移した、という事件と同じ。

まさに「松江市『はだしのゲン』排除事件」です。

松江市民で、税金(図書購入費)で子どもたちのために購入した図書を見せないなら、
「その分の税金を返せ」という「住民監査請求」をする人はいないのでしょうか。

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メディアからの情報としては、
共同通信の配信を受けて、地方紙がこの記事をwebに掲載。
続いて、毎日新聞がwebにアップ、
今朝は毎日新聞、朝日新聞、読売新聞の本紙に記事が出ています。

はだしのゲン「閉架」に 松江市教委「表現に疑問」(2013/08/16 共同通信)

 <はだしのゲン>松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」 
毎日新聞 8月16日

 漫画家の故中沢啓治さんが自らの被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」について、「描写が過激だ」として松江市教委が昨年12月、市内の全小中学校に教師の許可なく自由に閲覧できない閉架措置を求め、全校が応じていたことが分かった。児童生徒への貸し出し禁止も要請していた。出版している汐文社(ちょうぶんしゃ)(東京都)によると、学校現場でのこうした措置は聞いたことがないという。

 ゲンは1973年に連載が始まり、87年に第1部が完結。原爆被害を伝える作品として教育現場で広く活用され、約20カ国語に翻訳されている。

 松江市では昨年8月、市民の一部から「間違った歴史認識を植え付ける」として学校図書室から撤去を求める陳情が市議会に出された。同12月、不採択とされたが市教委が内容を改めて確認。「首を切ったり女性への性的な乱暴シーンが小中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだけ貸し出さないよう口頭で求めた。

 現在、市内の小中学校49校のうち39校がゲン全10巻を保有しているが全て閉架措置が取られている。古川康徳・副教育長は「平和教育として非常に重要な教材。教員の指導で読んだり授業で使うのは問題ないが、過激なシーンを判断の付かない小中学生が自由に持ち出して見るのは不適切と判断した」と話す。

 これに対し、汐文社の政門(まさかど)一芳社長は「原爆の悲惨さを子供に知ってもらいたいと描かれた作品。閉架で風化しないか心配だ。こんな悲しいことはない」と訴えている。

 「ゲン」を研究する京都精華大マンガ学部の吉村和真教授の話 作品が海外から注目されている中で市教委の判断は逆行している。ゲンは図書館や学校で初めて手にした人が多い。機会が失われる影響を考えてほしい。代わりにどんな方法で戦争や原爆の記憶を継承していくというのか。

 教育評論家の尾木直樹さんの話 ネット社会の子供たちはもっと多くの過激な情報に触れており、市教委の判断は時代錯誤。「過激なシーン」の影響を心配するなら、作品とは関係なく、情報を読み解く能力を教えるべきだ。ゲンは世界に発信され、戦争や平和、原爆について考えさせる作品として、残虐な場面も含め国際的な評価が定着している。
【宮川佐知子、山田奈緒】


はだしのゲン コミック版 (全10巻)(中沢啓治作・絵/汐文社)

夜になって、NHKでもこのニュースを取り上げました。

  「はだしのゲン」過激描写理由に「閉架」に 松江
2013.8.16 NHKニュース

松江市教育委員会が、中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」を、市内の小・中学校の図書室で子どもが自由に読むことができなくするよう学校側に求めていたことが分かりました。
市の教育委員会は、一部に過激な描写があるためとしています。

漫画「はだしのゲン」は、去年12月に亡くなった被爆者で漫画家の中沢啓治さんが、原爆の被害を受けた広島で力強く生きていく少年の姿を描いた作品です。この「はだしのゲン」について、松江市教育委員会は、去年12月に開いた小・中学校の校長会で、すべての学校に対し、子どもが図書室などで自由に読むことをできなくさせる「閉架」の措置をとるよう口頭で要請しました。
措置を要請した理由について、教育委員会は「漫画の中に、人の首を切る場面や女性が乱暴される場面など、一部に過激な描写があるため」としています。
教育委員会では、要請後の学校側の対応を把握していないとしていますが、学校の中には、図書室で読むには教員の許可を必要とした上で、貸し出しを禁止したところもあるということです。
松江市教育委員会では、「平和への願いなど、作品に込められた趣旨は高く評価しており、教員が指導して平和学習の教材として使うことには問題はないが、過激な描写が含まれており、子どもが自由に読むことについては疑問がある」として話しており、現時点では措置を変える予定はないとしています。

中沢啓治さんの妻「戦争の悲惨さを伝えられない」
「はだしのゲン」の作者である中沢啓治さんの妻のミサヨさん(70)は、「教育委員会が、『はだしのゲン』を自由に読めないようにしているという話はこれまで聞いたことがなく、大変驚いている。『はだしのゲン』は、子どもたちが読めるように描写も抑えている。それでも、一部の描写が過激だということだが、戦争や原爆の被害は決してきれいごとではないし、子どもたちに本当のことを知らせなければ、戦争の悲惨さや平和の尊さについてきちんと伝えられない。松江市教育委員会には、『はだしのゲン』を子どもたちが自由に読めるようにしてほしい」と話しています。

原画展の来館者は
広島市中区の原爆資料館では先月から、「はだしのゲン」をはじめ、中沢啓治さんがみずからの被爆体験をもとに描いた漫画や絵本の原画の展示会が開かれています。
兵庫県赤穂市から小学5年生の息子と訪れた男性は、「『はだしのゲン』は漫画という形で分かりやすく戦争体験を後世に伝えられる作品だと思うので、松江市教育委員会の決定は残念です」と話していました。
また、大阪市から中学2年生の娘と訪れた男性は、「教育委員会の心情も分かるが、漫画を読ませるかどうかは保護者が判断すれば良いと思います」と話していました。 


はだしのゲン「描写過激」…小中に閲覧制限要請(2013.8.16 読売新聞)

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以下は、関連の松江市議会本会議の議事録です。

【 平成24年第4回定例会 請願・陳情審査結果表-平成24年第4回定例会 請願・陳情審査結果表 】
○(受理年月日)24・8・24 陳情第46号 
松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて 
(提出者)中島康治  (審査結果)不採択


   【 平成24年第3回 9月定例会-10月05日-05号 】松江市議会
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 次に、陳情第46号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて」では、陳情者からの趣旨説明、執行部の見解を聞いた後、執行部に対する質疑では、「はだしのゲン」の映画については、全国のPTA協議会や文部省の推薦があったと聞いている、また、漫画でゲンが小学生だったころは、陳情に添付された資料のような過激なせりふはなく、戦争や原爆の悲惨さを伝えることが色濃く出ていた。しかし、ゲンが成長するに従って、過激にエスカレートした描写となったのではないかと記憶しているが、映画が放映された時期、PTA協議会と文部省が推薦した時期、陳情に添付された資料の部分が漫画として出版された時期が、それぞれいつかわかるかなどの質疑に対し、執行部より、全て時期を正確に承知していないが、昭和50年代ではなかったかと思うなどの答弁がありました。
 討論では、閉会中の継続審査とすべきものとして、この漫画を原作とした映画を国でも推薦しているし、松江市でも多くの学校にこの漫画を置いている状況の中で、もう少しこの問題については議論する必要がある。
 また、陳情に添付された資料は、漫画の一部を抜き出したものであり、全体的な流れがどうなのかを読んだ上で判断したい。
 そして、陳情に添付された部分を見る限り、過激な言葉と絵が羅列してある。これを人格形成途中の小中学生に対して提供してよいか疑問である。
 教育委員会が採用の根拠としているのは、PTA協議会や文部省の推薦、中四国地区の県庁所在市で置いてあるというだけのことであり、いつPTAや文部省が推薦したか、陳情に添付された部分がいつ出版されたか、きちんと調べた上で判断したいなどの意見がありました。
 一方、不採択とすべきものとして、この漫画を原作とした映画は、全国PTA協議会や文部省の推薦もある。そして何よりも、この漫画は戦争がいわゆる戦前の主権在君による政治で進められ、悲惨な広島、長崎の原爆投下があり、そしてたくさんの戦争犠牲者を出した点をきちんと報じていると思うので、この陳情こそが歴史認識が間違っているのではないかと思う。そして、まず大前提として、そもそも議会がこの図書を学校に置いてよいかどうかなどということに干渉をすべきではない。
 また、歴史認識はいろいろあり、また表現の自由もあり、さまざまな歴史認識が提供されることは民主主義にとって大事だと思う。こういうものを置くか置かないかは教育委員会で適切に配慮すべきことだと思うなどの意見があり、意見が分かれ、採決の結果、陳情第46号は賛成多数により閉会中の継続審査とすべきものと決しました。

 次に、陳情第47号「松江市内の小中高校生に授業の一環として竹島資料館を見学させることを求めることについて」では、・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・島根県としても密接な問題であり、いろいろな意見が出ているので、もう少し慎重に審議したいとの意見があり、意見が分かれ、採決の結果、陳情第47号は賛成多数により採択すべきものと決しました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


陳情第46号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて」は、
9月議会では「閉会中の継続審査」。
以下は12月議会の議事録。

  【 平成24年第4回12月定例会-12月05日-01号 】松江市議会
◆14番(南波巖)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 閉会中の継続審査となっておりました陳情3件につきまして、去る11月26日に委員会を開催し審査をいたしましたので、その経過と結果について御報告申し上げます。
 陳情第46号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求めることについて」では、執行部から、追加の見解を聞いた後、質疑では、全10巻の漫画の中でいろいろ問題があるとも言われているがどのような問題かとの質疑に対しては、執行部より、1巻から4巻または5巻までが第1部というふうに言われているが、暴力的なシーンなど、やや過激と言われるものは後半部分が多いと感じている。陳情に添付された資料も10巻の部分であるとの答弁がありました。
 討論では、一委員から、当初の教育委員会の見解では、映画が文部省や全国PTA協議会の推薦を受けていたり、漫画が中四国の県庁所在市の小中学校の図書室に置いてあることから優良図書と考えているということであった。しかし、1巻から10巻までを見ると、時代ごとにだんだんとエスカレートして大変過激な文章や絵がこの漫画を占めている状況であり、第1部までとそれ以降のものが違うものということではなく、「はだしのゲン」という漫画そのものが、言い方は悪いが不良図書と捉えられると思う。当初の優良図書としての根本が崩れたということであれば、やはり教育委員会みずからが判断をし、適切な処置をするべきであろうと思うとの意見がありました。
 また、不採択とすべきものとして、一委員から、表現に若干過激な面もあるが、全体としては戦争の悲惨さ、あるいは平和のとうとさを訴えているものと思っている。1980年代から多くの図書館に置かれている状況であり、平和教育の参考書として捉えられている側面が非常に強いようである。そういう面から考えると、小中学校の図書室に置いてあってもおかしい話ではないし、図書室に置くことの是非について議会が判断することには疑問があるので不採択とすべきと考えるとの意見がありました。
 採決の結果、陳情第46号は挙手する者はなく不採択とすべきものと決しました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 松江市教育委員会が「はだしのゲン」を閉架にしたのは、
在特会の脅かしに屈したから? (2013年08月17日 naverまとめ)
 


松江市議会に陳情を提出した「一市民」は、つぎは、
高知市の学校図書館をターゲットにして『はだしのゲン』の撤去を求めているようです。

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【図書館の自由に関する宣言】(日本図書館協会)

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、
資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。

この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
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8月16日(金)のつぶやき

2013-08-17 01:09:32 | 花/美しいもの

『<おんな>の思想 私たちはあなたを忘れない』 | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/ueno/?p=3263 「「わたしの血となり肉となったことばたち」?そう呼びたい。自分の理論や思想の骨格をかたちづくり、血肉の一部になってしまったもの」

寺町みどりさんがリツイート | 3 RT

これ、ものすごく重要かと。みなさまも、ぜひ、ご一読を! 原子力委員会委員長の提出資料。@tatsu0409さんからのを再リツイートです。cas.go.jp/jp/seisaku/gen…

寺町みどりさんがリツイート | 1 RT

母親ばかりが責められる 秋月ななみ | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=120…


☆8月は、日本軍「慰安婦」問題=軍事性奴隷制度を考える月に ⑥ 岡野八代 | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=120…


“はだしのゲン「閉架」に 松江市教委「表現に疑問」 - 47NEWS(よんななニュース)” htn.to/7rQuRu

寺町みどりさんがリツイート | 104 RT

松江市教育委員会が「はだしのゲン」を子供が自由に閲覧できないようにしていた - NAVER まとめ matome.naver.jp/odai/213766271…

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一度なったら治らない「紫外線アレルギー」/日光角化症の早期発見・治療/日焼け止め上手に使おう blog.goo.ne.jp/midorinet002/e…


はだしのゲン:松江市教委、貸し出し禁止要請「描写過激」 mainichi.jp/select/news/20…


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