ある家の娘のもとに、ある夜、容姿端麗な男が訪ねてきた。男と娘はいろんな話をして夜をふかすが、それからというもの、夜毎に男は通ってくるようになった。娘は男の来訪を待つようになり、男は一夜もかかさず通い続けた。女は男の素性を知りたかったが、なぜか素性について語ろうとしない。男の来訪が続くにつれて女は痩せていった。
素性を明かさない男に疑問を持ち始めた女は、親にことの次第をうちあけて相談した。親は男の着物の裾に糸を縫いつけ男の居場所をつきとめるように教える。娘が男が引きずっていった糸を辿っていくと山奥の沼のなかに消えてしまっている。女は男が魔性の者であることをはっきりと知った。
親はその男は沼に住む蛇に違いないと言って、千本の針とひょうたんを持たせ、これを沈めたら妻になると言えと教えた。ある夜、女は男と連れだって男の家に向かった。行きながら男は自分は沼の主の大蛇であることを告白した。女はふところからひょうたんを取りだして、これを水に沈めたら、私はあなたの妻になりましょう、と言って沼に投げ入れた。
男はよろこんでひょうたんを沈めようとするが、何度しずめたても浮き上がってきてもてあます風であった。とうとういきり立って蛇に姿を変え、ひょうたんを沈めようした。それを見た娘は大蛇の姿に恐れおののきながらも、親に持たされた千本の針を沼に投げ入れた。針は蛇になった男の肌につきささり、蛇は苦しみながら死んでいった。娘は憑き物が取れたように、気も晴れて家に帰っていった。