ムクゲ
2013年07月19日 | 花
公園でサルスベリが花を咲かせた。そのすぐそばにムクゲの美しい花が4~5個咲いていた。この花は韓国の国花で、無窮花(ムグンファ)、永遠の花として愛される。日本には平安時代に到来した。沖縄の夏を彩るハイビスカスはこの仲間である。朝咲いて、夕方にはしぼんでいまう一日花だ。小林一茶はこの花を詠んで
それがしも其の日暮らしぞ花木槿 一茶
いかにも、一茶の面目躍如とした句である。文化元年、一茶42歳のときの句に
秋の風乞食は我を見くらぶる 一茶
という句を読んでいる。乞食の方でこの俺を乞食じゃないかと見ていやがる。自分はあの乞食よりもましだろうと、比べている。一茶は、俳諧師の自分を乞食と同様のものとして見ている。金もない、他人から金銭を恵んで貰ってその日を生き伸びている。そのことに悪びれる風もなくこの句を詠んだ。
一茶の生涯を辿って見ると、その暮らしぶりは現代の住む場所を失った人びとに通じるものを感じる。社会は一茶の時代とそれほど大きくは変わっていないのだ。親のいる柏原の家を出て、江戸で丁稚奉公をしたが、俳諧の世界に紛れこんでその日ぐらしに甘んじて生きた一茶の半生は、その厳しさをバネにして晩年の実弟を相手どった遺産訴訟へと突き進む。
世の中はあなたまかせぞ七転び八起きの春にあひにける哉 一茶
52歳で初めて妻を娶った一茶の春は、その激しい訴訟で勝ち取ったものだが、生れてくる子を次々に亡くし、妻を亡くし、自らは中気にあてられて不遇の死を遂げるという悲惨な生涯であった。一茶の俳諧歌には、生きる厳しさを斜に見る独特の視点がある。