今年も東北芸工大のキャンパスに光のオブジェが登場した。夜見るとオブジェのなかに明かりが灯り一層幻想的だろうが、昼間でもなかなか面白い。今年のオブジェはどれもカラフルだ。キャンパスのグリーンのなかで、オブジェの個性が光っている。水辺に置いたオブジェが、水に写りこんでとてもきれいだ。
見たこともない巨大な亀が水から上がろうとしている。もう何万年も、その体内に抱き続けた卵を産み落とそうとしているのだろうか。どこへ向かうのか、誰も知らない。その視線は目的を見つめて微動だにしない。その大きな手はしっかりと大地をつかみ、いままさに全身が陸地に姿を現そうとする瞬間だ。足元の水が亀の動きで大きく波立っている。若い感性と自由な発想は、非現実の世界を無造作にこの空間に置いた。
花のオブジェがキャンパスの夜に浮かびあがる。アメリカ芙蓉を思わせる花びらだ。そのピンクの色が、無機質な校舎にやららかな雰囲気をかもしだす。その前を一人の女学生が通り過ぎた。無気味な亀のオブジェにも目もくれず、やさしい花にも気づかない様子だ。広いキャンパスには、彼女のほか誰もいない。