この花の仲間には、姫紫苑や春紫苑などがあるらしいが、その違いが分らない。道ばたに群がって小さな花をつけていた。大学の女子寮の名が紫苑寮といっていたから、キク科の花であることだけは知っていた。だから、この花を見ると、つい青春時代を回想してしまう。私も寮に入っていたので、寮生の交流会で女子寮を訪ねたこともあった。紫苑寮の風呂はお湯がたくさん出なくて、仕舞い湯のころにはソックス風呂になるという話を聞いた。門限を過ぎて帰った学生はこっそり窓を開けてもらい、そ知らぬ顔で蒲団に入る豪の者もあった。寮の名に相応しからぬ行いではないか。
紫苑といふ花の古風を愛すかな 富安 風生
先日、北海道の高校のクラス会の案内があったが、日程の都合で参加できなかった。もっとも、日程とはいいながら、北海道まで飛行機で行くのはそう容易いことではない。つい行きそびれるというのが実際だ。そのクラス会の様子を幹事のk君が冊子にまとめて送ってくれた。懐かしい面々のスピーチの内容が詳しく書いあるので、まるでその場にいるような臨場感があった。そのなかに、パワーをもらうスピーチがあった。Yさんのスピーチだ。彼女はこのごろ足を悪くしているらしい。
足を少し引きずりながら、厨房の仕事を続けているという。年かさは上から2番目だが、50代の人たちとも一緒に働いている。彼女がよりどころにしているのは、若い人たちからの同情はいらない、そんなつもりで楽しんで仕事をしていると語っている。つまりは、若い人には負けないということだろう。以前一緒に働いていた友達を飲み会の帰りに凍てついた階段で足を踏み外して転倒して脳挫傷で亡くしたこと、そんな寂しさに耐え、友人のように失敗しないように、階段を踏みしめながら働いていると語っている。いつも明るいYさんが少し暗い話になるけれどもと、断りながら語る覚悟に力をもらった。