常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

うなぎ

2013年07月15日 | 詩吟


きのう、詩吟の吟道講座があり、木村岳風記念館の館長濱岳優先生の俳諧歌の講座があった。講座では小林一茶の俳諧歌が取り上げられたが、そのルーツは万葉集の嗤笑歌にあるという指摘があった。

万葉集の巻第16には、顔の色の黒いのを笑いあったり、身体が痩せたり太ったりしているのを笑いのモチーフにした歌が収められている。そのなかでも大友家持の痩せた人を笑う歌は有名である。うなぎが登場しているのも興味深い。こんなに古くからの食べものであるうなぎが、絶滅危惧種の指定を受けようとしているのは、心配なことだ。うなぎを食べなくても生きていけるが、古くからの食文化が失われるのはいかにも惜しい。

痩せ人を嗤笑(わら)ふ歌2首

石麻呂に 我れ物申す 夏痩せに よしといふものぞ 鰻捕り喫(め)せ

痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 鰻を捕ると 川に流るな

2首で痩せた石麻呂の老を笑いのめしている。1首目では、かしこまって老をいたわる風であるが、2首目では一転ことば使いもぞんざいに、やせていたって生きていればもうけもの、万が一川で鰻をとろうとして、流されなさんなよ。

古今集の俳諧歌は万葉に流れを汲んでいる。

むめの花みにこそきつれ 鶯のひとくひとくといとひしもおる

鶯の鳴き声をひとく、ひとくときいたものだが、梅見の連れの女がひとく、ひとくといやがっているようにもとれる。

詩吟は難しい漢詩を吟じているが、こうしたルーツを持つ俳諧歌で都都逸とまではいかずとも、ユーモアと哀歓を吟じて老いの身の楽しみとするのもよいだろう。
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