きのう、詩吟の吟道講座があり、木村岳風記念館の館長濱岳優先生の俳諧歌の講座があった。講座では小林一茶の俳諧歌が取り上げられたが、そのルーツは万葉集の嗤笑歌にあるという指摘があった。
万葉集の巻第16には、顔の色の黒いのを笑いあったり、身体が痩せたり太ったりしているのを笑いのモチーフにした歌が収められている。そのなかでも大友家持の痩せた人を笑う歌は有名である。うなぎが登場しているのも興味深い。こんなに古くからの食べものであるうなぎが、絶滅危惧種の指定を受けようとしているのは、心配なことだ。うなぎを食べなくても生きていけるが、古くからの食文化が失われるのはいかにも惜しい。
痩せ人を嗤笑(わら)ふ歌2首
石麻呂に 我れ物申す 夏痩せに よしといふものぞ 鰻捕り喫(め)せ
痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 鰻を捕ると 川に流るな
2首で痩せた石麻呂の老を笑いのめしている。1首目では、かしこまって老をいたわる風であるが、2首目では一転ことば使いもぞんざいに、やせていたって生きていればもうけもの、万が一川で鰻をとろうとして、流されなさんなよ。
古今集の俳諧歌は万葉に流れを汲んでいる。
むめの花みにこそきつれ 鶯のひとくひとくといとひしもおる
鶯の鳴き声をひとく、ひとくときいたものだが、梅見の連れの女がひとく、ひとくといやがっているようにもとれる。
詩吟は難しい漢詩を吟じているが、こうしたルーツを持つ俳諧歌で都都逸とまではいかずとも、ユーモアと哀歓を吟じて老いの身の楽しみとするのもよいだろう。