サボテンの成長は遅遅としているが、それでも確実に大きくなる。以前娘がサボテンの栽培に熱中していた。もう10年も前のことだ。そのとき貰った親指大のものが、10年で拳ぐらいの大きさになっている。元気のいい個体はあの痛い針の色でわかる。針が元気だと語っているようでもある。花は忘れたころに咲いて、うっかりすると咲き終わってだらりと下を向いてしまっていることも多い。それだけ手間がかからず、水遣りもしないからつい見過ごすのだろう。
「サボテンの花」という歌があった。チューリップの歌う失恋の歌だ。1975年にこの歌が大ヒットした。小さないさかいから、恋人は傷ついて、一緒に住んでいた部屋を去って行った。どんないさかいか、一切語っていないから、想像したり、自分に当てはめて類推する以外にない。恋人が育てたサボテンの花が咲いたとき、恋は終わる。サボテンの花は一夜で終わってしまうことを暗示している。
思い出つまったこの部屋を 僕も出てゆこう
ドアにかぎをおろした時 なぜか涙がこぼれた
君が育てたサボテンは 小さな花をつくった
春はもうすぐそこまで 恋は今終った
チューリップは歌謡曲やフォークソングが主流であった日本の音楽シーンにJポップという新しいジャンルを開いた先駆者だ。ボーカル財津和夫の甘い歌声が、思い出の中に響いている。