夏の風物詩といえばやはりスイカだろう。尾花沢の親戚から毎年のスイカが送られてきた。冬の大雪、6月末からの大雨を経て、無事収穫された小玉スイカだ。スイカは両手で抱えきれないほどの大きさであったが、小家族化で大きなスイカが売れなくなり、最近の主流は冷蔵庫にそのまま入る小玉スイカである。皮が薄く赤い実がびっしりと詰まり甘みも強い。
井戸で冷やしたスイカを簾から入る風を受けながら食べるのは昔ながらの風景である。実家の北海道でも畑にスイカを植えた。父は甘いスイカを作るのが自慢で、とくにスイカの生長には目をかけた。何よりも元肥が一番大切であった。勢いよく地を這う蔓のあちこちで花が咲くと、雌花に雄花なの花粉を受粉させる父の姿は今も記憶に残っている。
スイカの玉は次第に大きくなっていくがどれくらいになると熟すのか、その見極めも父の仕事であった。くみ上げた井戸水に冷やしたスイカを割るのは母の仕事であった。上手に包丁を入れると真っ二つに割られスイカの甘い匂いが部屋中に広がる。大勢の兄弟がわれ先にと手を伸ばしてスイカにかぶりつくのはひとつの醍醐味であった。
農夫躍りつ朝日に西瓜抱へけり 渡辺 水巴