十日ほど前に蒲公英、タンポポを話題にして書いたが、陽射しが強くなるにしたがって野原には一面のタンポポが見られるようになった。さすがに綿毛はまだ見られないが、再びタンポポを取り上げる。タンポポという名は古くからあったものではない。フジナ、二ガナというのが、古くからの名だ。ナとつくのは、出始めた若菜を食用としたためである。この黄色い可愛い花は鑑賞する対象ではなく、食用にされ、その苦さも他の山菜と同様に、春の味として親しまれきたものらしい。
あたたかくたんぽぽの花茎の上 長谷川素逝
このフジナはツヅミ草とも言った。花が咲き終わり、綿毛が飛んで行った後の形がいかにもツヅミに似ている。このツヅミ菜をタンポポと言ったのは、野に出てタンポポを遊びの対象として摘んだ子どもたちであったかも知れない。ツヅミがタン、ポン、ポンと鳴るをつづめてタンポポと呼ぶやりかたは、なんでも約めて言葉をつくる子どもたちは現代でもたくさんいるような気がする。