ねことわたしのやわらかな日々

17年一緒に暮らした愛猫を亡くしましたが、日々のささやかな幸せを、
手のひらで温めて暮らしています。

精一杯のFREUDE

2008年12月07日 22時28分26秒 | 音楽・アート
不安で第九の夢ばかり見て目覚めた、本番の朝。
重い気持ちと裏腹に、
抜けるように晴れ渡る、青い青い空。

9時過ぎに会場に到着し
姉が長年愛用した母の手作りの衣装に着替え、
「ここまできたら、この5ヶ月間のすべてを
とにかく出し尽くそう」と自分に言い聞かせて始まった
本番さながらのゲネプロ。

みんなが集中力を高めてきたのか
昨日の失敗をそれぞれに調整してきたのか
音もそろい、響きにも
昨日にはなかった生き生きとした色彩や躍動感が。
まだ不完全な箇所はあるものの
昨日とは生まれ変わったよう。

一晩であれだけ、変わるとは。
昨日は初めてで舞い上がってしまったのかな。
今日は腹をくくってベストを出そうという気迫が
会場全体から、感じられて。

そして観客の方も入場し、いよいよ迎えた本番。
例によって写真撮影禁止のため
何もお見せできないのが残念ですが、
第1部は、CHEMISTRYとソリストたちによる
うっとりするような、素敵な舞台。
わたしたちもバックコーラスで参加するのだけど
思わずそれを忘れてしまうほど。



そして第2部は、今年最初で最後の
わたしたちの歓喜の舞台。
オーケストラも、昨日のリハよりも
直前のゲネプロよりも格段にエネルギーを増し、
佐渡さんのエネルギッシュな指揮も
本番になると、もはや何かに憑りつかれたよう。
飛び散る汗がライトに照らされてきらきら光り、
彼の体全体から発せられる、
何か大きく、力強く、美しいものが
わたしたち全員を飲み込んでいく。

黙っていても、曲が進むにつれ、
みんなの緊張や集中が
会場いっぱいに満ちてくるのがわかる。
そして第4楽章の曲調が変わった瞬間
1万人が一斉に立ち上がった時には、思わず鳥肌が。

ソリストの艶と伸びのある独唱に続き
男声合唱がいつにない迫力で、FREUDE!
そして合唱が始まってからは、
わたしもただただ、無我夢中。

昨日は自信がなくて、遅れてしまったところも
「もう失敗しても不完全燃焼になるよりいい!」と
勇気を出して、思い切って歌いました。
うまく歌うことよりも、
気持ちのすべてで歌おうと。
1万人に紛れて歌うのではなく、
1万人いる主役のひとりとして歌おうと。

息が続かなかった vor Gott! のところは
本番での佐渡さんは、
おそらく今までの最高記録の伸ばしっぷり。
それでも死ぬ気で、息継ぎなしで最後まで歌いきり、
何かひとつになれたような満足感と高揚感に、
思わずぐっと涙が出そうに。
歌い終わった後の会場を包む余韻も
とても美しいものに感じられました。

昨日、レッスン用CDの倍はあろうかという
最後のクライマックスのスピードに付いて行けなくて
各パートが、バラバラ総崩れになったところも
みんなが力の限りにスピードに乗っていくのを感じつつ
わたしも本当に、魂の限りに歌いました。
今までで一番の、最高のクライマックス。
まだまだ不完全ところは一杯あるだろうけど
今のわたしの、わたしたちの、
最高のFREUDEだったと、それだけは胸を張って言える。

歌い終わった瞬間、万感が胸に迫ってきちゃって
涙が次々と頬を流れ落ちてきて
気が付くと何度も何度も「ありがとう」と
小さな声で泣きながら繰り返しつつ
自分も一生懸命拍手していました。

ありがとう、ありがとう、ありがとう。

今自分が持っているものを、全部出し切れたことに。
そこにいた人たち全員と、この時間を共有できたことに。
歌を通して見知らぬ1万人の人たちと一つになれたことに。
素人のわたしたちを、根気良く指導してくださった先生に。
音楽のすばらしさを全身で伝えてくれた、佐渡さんに。
その佐渡さんの指揮で第九を歌うという、夢がかなったことに。

最後まで一緒に参加してくれた、友だちに。
応援してくれた、職場の同僚や友だちに。
わたしたちが参加したせいで、出られなかった人たちに。
父が寝たきりの状態なのに、参加させてくれた家族に。
今日までと今日のこの舞台を支えてくれた多くの人々に。

音楽の喜びを改めて味わわせてくれた第九に。
万全の体調で、この舞台に立てたことに。
ここまでがんばった、自分自身に。
大変だったけど、楽しかった5ヶ月に。
昨日の、大失敗に。
そして何より、今日のこのすばらしい感動に。

コメント (4)
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