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『青いカフタンの仕立て屋』

2023年06月19日 | 映画(あ行)
『青いカフタンの仕立て屋』(原題:Le Bleu du Caftan)
監督:マリヤム・トゥザニ
出演:ルブナ・アザバル,サレ・バクリ,アイユーブ・ミシウィ他
 
六甲で晩ごはんの前にシネ・リーブル神戸で3本ハシゴの2本目。
 
フランス/モロッコ/ベルギー/デンマーク作品。
 
マリヤム・トゥザニ監督によるこれが長編2本目。
長編デビュー作の『モロッコ、彼女たちの朝』(2019)は昨年DVDで観ましたが、
パン屋という舞台にも惹かれ、心に残る作品でした。
トゥザニ監督は美人女優でありながら脚本も自分で執筆。天は二物を与える。
 
モロッコの古都サレの旧市街で仕立て屋を営む中年夫婦。
職人気質のハリムと主に接客を担当するミナは結婚して25年、子どもはいない。
 
手縫いにこだわり、決してミシンを使おうとしないハリムの腕は確かだが、
注文を捌ききれずに客が逃げてしまいそうになることもしばしば。
助手を務める者が必要だと考え、若手職人ユーセフを雇うことに。
 
真面目で筋も良いユーセフは期待以上の働きを見せ、仕事も上手く回り出す。
しかし、ハリムとユーセフの間に師弟関係を超えた感情があるのをミナは察知し……。
 
説明は多すぎることなく、だからといって難しい作品でもありません。
 
寡黙なハリムが公衆浴場に通う様子から、彼はゲイであることがわかります。
彼だけが特別なわけではなくて、公衆浴場はいわゆる「ハッテン場」として利用されているらしい。
妻にそれを話すことはできないけれど、ミナはおそらくずっと前から気づいています。
 
ミナは同性から見て素晴らしい女性とは言い難い。
生地がなくなった折にはユーセフを疑って責め、それが自分のミスだとわかったときには隠す。
ずいぶん気も強くて難儀な部分があるのに、ミナといるときのハリムが意外にも幸せそうで不思議。
その理由がわかったときには胸にジーンと来ました。
 
恋とは別の愛情がこの夫婦の間にはある。
癌を患うミナの余命がわずかとなったときには、ハリムは献身的に介護し、
ミナもユーセフにならハリムを託したいと思っていることが感じられます。
 
ユーセフ役のアイユーブ・ミシウィがまたイケメンで、
そりゃ夫の前にこんなイケメンの若くて善人の男が出てきたら、妻は心配でたまらんだろうと思う。
でも張り合ったって仕方がない。妻は恋の相手にはなれないわけですから。
3人で踊る姿がとてもよかった。
 
じんわりと、良作。
カフタンを仕立てる一刺し一刺しからも目が離せません。

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