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『エリザベート1878』

2023年09月03日 | 映画(あ行)
『エリザベート1878』(原題:Corsage)
監督:マリー・クロイツァー
出演:ヴィッキー・クリープス,フローリアン・タイヒトマイスター,カタリーナ・ローレンツ,ジャンヌ・ヴェルナー,
   アルマ・ハズン,マヌエル・ルバイ,フィネガン・オールドフィールド,アーロン・フリース,コリン・モーガン他
 
無知でお恥ずかしいことなのですが、“エリザベート”がどこの国のどういう人なのか知りませんでした。
あちこちに同じ名前の王女やら皇后やらがいるのですよね。
その中でも特に有名なのが本作の人、もとはバイエルン王国の次女として生まれた自由奔放なお姫様で、
姉の見合い相手だったオーストリア=ハンガリー帝国の皇帝に見初められてしまい、嫁ぐことになったらしい。
宝塚歌劇で上演されたのもこの皇后エリザベートのことなのか。へ~と今さらですみません。
 
本作の監督はオーストリア出身の女性マリー・クロイツァー。
先日観た『アウシュヴィッツの生還者』で印象に残った女優ヴィッキー・クリープス主演と知り、
こりゃ観なくちゃとイオンシネマ茨木へ走りました。

オーストリア皇妃エリザベートは、クリスマスイブが誕生日。1877年のその日、40歳になった。
*余談ですが、皇后と皇妃って別物なのかと調べたら、日本人は皇后、外国人は皇妃と、日本人が呼ぶみたい。
 
平民女性なら40歳が寿命と言われた時代。
16歳でフランス・ヨーゼフ一世のもとへ嫁いだ彼女は、老いの恐怖と闘っている。
世間が彼女に求めるイメージを何が何でも維持しなければならない暮らしが続く。
お飾りでしかない自分自身に嫌気が差して、次第に不満を募らせて行き……。
 
幼少時代をどんなふうに過ごした人で、どんな人物だったのかを全然知らなかったので、
鑑賞後にウィキペディアなどを見て、劇中の彼女のふるまいに合点が行く。
しかしそんなことを知らなくても、ヴィッキー・クリープスの演技を見れば、
窮屈な毎日に辟易としていることがわかります。
 
世間も夫も、まだ幼い娘すら、エリザベートに良いイメージを求める。美貌の良妻賢母。
慰問先の病院で瀕死の患者が吸いたがっているタバコを与えて一緒に吸えば、娘から嫌な顔をされる。
すべてにうんざりしているエリザベートは、他人の目のあるところで男といちゃついてみたりする。
夫に何を言われようが気にしない風なのに、その夫が18歳の小娘に好意を抱いていると知ると嫉妬する。
 
何もかも縛られて生きてきた彼女が黙って従っていたわけではないのはいいけれど、
面白くないことがあるたびに八つ当たりされる侍女たちは本当に気の毒。
なのに、エリザベートは側を離れてほしくないから、侍女の結婚を認めようとしません。
 
わがままな皇妃に観ているこちらも振り回されますが、
彼女が感じていた息苦しさはダイアナ妃に通じるところがあるように思います。
皇帝に見初められることがなかったなら、彼女の生涯はどうなっていたのか。
体調が悪いと言えば、まったく害のない薬だとしてヘロインを処方される彼女のことを見るに忍びない。
 
40歳になった彼女の1年弱を描いています。
いちばん生き生きとして見えるのは、ルイ・ル・プランスのフィルムの中。
ルイ・ル・プランスは紙フィルムを使って映像を撮影することに成功した“映画の父”と言われる人で、
これはリュミエール兄弟トーマス・エジソンより先だったとか。
誰もが彼の発明を笑い飛ばしていた頃、革新的だったエリザベートはそれを信じた。
彼女がおどけてみせるフィルムはまだ残っているのでしょうか。

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