夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』

2003年12月22日 | 映画(ら行)
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』(原題:The Life of David Gale)
監督:アラン・パーカー
出演:ケヴィン・スペイシー,ケイト・ウィンスレット,ローラ・リニー,
   ガブリエル・マン,ローナ・ミトラ他

テキサス大学の人気哲学教授デビッド・ゲイルは、
死刑廃止論の活動家としても有名。

事件は7年前にさかのぼる。
ある日、彼の同僚の女性で、志を共にしてきたコンスタンスがレイプ後、殺害される。
デビッドは逮捕され、死刑判決を受ける。

時は経ち、刑の執行が3日後と迫った日、
デビッドの弁護士からニュース・マガジン社へ電話が入る。
刑執行を目前に控えた日から3日間、
1日2時間の独占インタビューにデビッドが応じると言う。
高額の報酬がまず条件。
さらにはそのインタビュアーとして、
ニュース社のジャーナリストであるビッツィーを指名してきたのだ。

なぜ面識もない自分が指名されたのかわからないまま、
ビッツィーはデビッドの収監されている刑務所へと出向く。
わずかな時間のなかで明かされていく真相。
はたしてデビッドは本当にレイプ犯なのか。

『13階段』(2003)では、
「死刑反対と言いたいけど正面きっては言えない」みたいなあざとさを感じた私ですが、
こちらはなんともリベラルなアメリカ、
「死刑反対」をストレートに唱えた作品だと思いました。

軽い気持ちで見はじめたらかなりヘヴィー。
しかし、デビッド役のケヴィン・スペイシーのちょっと抑えた演技もよかったし、
ビッツィー役のケイト・ウィンスレットも『タイタニック』(1997)より格段に○。

この作品についてはネタバラシしないでおきますが、
サスペンスだけとしてはこの作品は観られませんでした。
デビッドの無実を信じはじめて、なんとか刑の執行を阻止するべく奔走するビッツィーに対し、
自分の命はどうでもよいと話すデビッド。
「それよりも、父親の生き方を息子に伝えることのほうが大事だ」
というデビッドの言葉に重みを感じます。

アメリカの精神分析医キューブラー・ロスが発表したという
「死に至る段階」というのも興味深いですね。
死期を知った患者の意識の変化について述べられたもので、
怒り→拒否→駆け引き→落ち込み→受容と変化するそうです。
この「死へのプロセス」は、『オール・ザット・ジャズ』(1979)などほかの映画にも登場します。

本作品は、元哲学教授による脚本だそうです。
社会派ドラマであり、サスペンスであり、娯楽味もあるこの作品。
冬休みにいかが。

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やっとのことで『マト・レボ』(続)

2003年12月18日 | 映画(ま行)
そんなわけで、『マトリックス・レボリューションズ』、
戦闘シーン満開ですが、見どころはいっぱい。
ネタバレしまくりですからご注意を。

ジワ~ンときたのはインド人のおっちゃんのセリフ。
彼と彼の妻子は仮想世界のプログラムだけど、
妻子をこよなく愛しているのです。
「プログラムが愛という感情を持つわけがない」信じるネオに対し、
彼は「愛なんてただの言葉です」というわけです。
誰かを、何かを愛するのに、
人間だから、プログラムだからなんて関係ないわけですね。

前作では日本刀まで振り回して大活躍だったモーフィアスですが、
『レボリューションズ』では気の毒に、完全なパシリ扱い。
代わって活躍するのが前作では不要かとすら思われたナイオビ船長。
彼女の船の操縦術はピカイチという設定なので、
ザイオンに向かう船は彼女の独壇場。
居所のなくなったモーフィアスは彼女の隣で言われるがまま。
最後にザイオンに平和がもたらされたとき、
「戦争が終わったぜ!万歳!」とみんなに知らせる役ぐらいは
彼が仰せつかってもいいものを、
ただのガキンチョにそのオイシイ役までも持っていかれる始末。

メロンビジアンの妻役のモニカ・ベルッチは
とってもいい女優さんなのに、まるでオッパイ要員。
出番はほんの一瞬だけ。
添え物的に座らされ、谷間のガバっと見える服でどうだ!と言わんばかりに胸を強調。

ザイオンでマシーンと戦うロボットたちの動きも笑える。
それじゃ動くのたいへんやろ!と思わずツッコミたくなります。
それを操縦するキャプテンの名前がミフネ。
余談ですが、『ミフネ』(1999)というデンマークの映画は私の大好きな作品。
これももちろん三船敏郎からついたタイトルです。

トリニティーが死んでしまうのには驚いた。
ネオとトリニティーの愛は当然ハッピーエンドかと思っていた観客の期待を
みごとに裏切ってくれました。

予言者オラクルは前作までとはちがう女優さんが演じています。
なんでちがう外見になったのかを説明するシーンがあり、
「とてもむずかしい状況があって……」などともっともらしく話してるけど、
実は前作までの女優さんがお亡くなりになったという、とってもわかりやすい理由。
『ハリー・ポッター』の校長先生役といい、
続編もので役者が突然お亡くなりになるとたいへんやなぁ。

あれ?
もっとマジメに解釈を書くつもりだったのに。
でも、ほら、こうして泣けて、笑えて、つっこめて、
とっても愛すべき作品でしょ?

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やっとのことで『マト・レボ』

2003年12月18日 | 映画(ま行)
観てから1週間経ってしまいましたが、
やっと『マトリックス・レボリューションズ』。

世間では悪い評価のほうが多数派のようでしたので、
ほとんど義務的に、最期を見届けるだけのつもりで観に行きました。
そしたら!!オモロイじゃないですか。
っちゅうのか、「これ以外にどんなオチをつけろっちゅうねん」
と思ったんですけど、ちゃいます?

あらすじはいらんかと思いつつ、一応書いてみましょう。

仮想世界と現実世界の間で目覚めたネオ。
現実世界には戻れないままなのか?
トリニティーはネオを現実に引き戻すべく、
セラフ、モーフィアスとともに、仮想世界をとりしきるメロンビジアンのもとを訪ねる。
メロンビジアンに銃をつきつけたトリニティーは、ネオを連れ戻すことに成功。

一方、マシーン軍団の襲来を防ぐため、
前作で有志を募って人類最後の都ザイオンから出発した2隻の船は
ザイオンに戻ることを余儀なくされる。
しかし、みずからの使命を果たすべくマシーンシティに向かうことを決めたネオは
2隻の船のうちの1隻を自分に譲ってほしいと申し出る。
ひとりの船長はそれを断るが、もうひとりの船長ナイオビは自分の船をネオに渡す。

かくして、ネオとトリニティーはマシーンシティへ。
ナイオビやモーフィアスはザイオンへの帰途につく。
ザイオンではすでに人類とマシーンとの壮絶な闘いが始まっていた。
そんななか、マシーンの核へと突き進むネオ。
いったい何をしようというのか。

核にたどりついたネオは、こんな直訴を試みる。
マシーンが世界制覇のために創造したエージェント・スミスは
いまやマシーンの制御の範囲を超える力を持っている。
スミスを必ず倒してみせるから、それとひきかえにザイオンに平和をもたらしてほしいと。

そして、ネオとスミスの決戦が幕を開ける。
感想はに。

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『ディーバ』

2003年12月15日 | 映画(た行)
『ディーバ』(原題:Diva)
監督:ジャン=ジャック・ベネックス
出演:フレデリック・アンドレイ,ウィルヘルメニア・フェルナンデス,
   リシャール・ボーランジェ,チュイ・アン・リュー他

先週やっと観た『マトリックス・レボリューションズ』について
書きたいところですが、
せっかくなので『ディーバ』を先にご紹介。

郵便配達人のジュールは熱狂的なオペラファン。
なかでも、レコードを出さないことで有名な
シンシア・ホーキンスに陶酔している。

コンサート会場にテープレコーダーを持ち込んだ彼は録音に成功。
自宅でシンシアの歌声に聴き入るジュールだったが、
ひょんなことから海賊版レコードのブローカーに
そのテープの存在を知られ、追われるはめに。

一方、国際的な麻薬・売春組織の内幕を暴いた証拠品のテープをある娼婦が持っていた。
彼女は組織に抹殺される寸前に、ジュールのかばんにテープをしのばせる。

かくしてコワイ人たちから追われることとなったジュールは
モペットでパリを駆け巡る。

ジャン=ジャック・ベネックス監督の劇場デビュー作で、1981年の作品です。
タイトルの「ディーバ」とは「歌姫」のこと。
黒人のオペラ歌手、シンシアの歌声は本当にすばらしく、
選曲もマニア泣かせだそうです。
私はその筋には詳しくないのでわからんのですが。

また、もひとつ有名なのが、この作品に出てくるオーディオのマニアックさ。
ジュールがかばんの中に隠し持つテープレコーダーは、ナグラのオープンテレコ。
また登場人物たちの部屋に出てくるのは、ナカミチとルボックス。
これもまたマニアなら泣いて喜ぶことでしょう。

フランス映画はソリが合わんという人にはやっぱりダメな作品かもしれませんが、
サスペンスとしてもおもしろいし、サントラとしてもすばらしいし、
また、ジュールとシンシアのデートのシーンなど、
どこか野暮でありながらおしゃれな雰囲気がいっぱい。
パリを満喫できます。←行ったことないけど。

フランス料理店『DIVA』のシェフがぞっこんなのはこんな作品です。
やっぱり似合わんと思う。(^^;

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〈めっちゃ番外編〉映画の名前のついたお店

2003年12月10日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
かねてから行きたいと思っていたお店がありました。
ジャン=ジャック・ベネックスの名作、
『ディーバ』(1981)を店名にしちゃったフランス料理屋さんです。
名前を聞いただけで行ってみたくなるっちゅうもんです。

そして、先日、やっと念願かなってその店へ。
大阪の天神橋筋商店街にあるのですが、まぁ、その場所のわかりにくさ!
笑ってしまうぐらいです。

平日は人でにぎわう商店街ですが、
本筋から少し離れたその通りは、日曜日は休業の店ばかり。
薄暗い通りを不安になりながらも進むと、らせん階段のある怪しげなビルが。
その2階に『DIVA』はあります。

足を踏み入れると意外や意外、店内には明るい日射しが入り込み、
赤と白のギンガムチェックのクロスを掛けたテーブルが。
そしてその可愛らしさにはまったく似合わない、愛想のない巨漢のシェフ。
このシェフが『DIVA』をこよなく愛しているのかと思うとそれがまた笑えます。
壁にはもちろん『DIVA』のポスター。
ちょっとしわの寄りかけたそのポスターがずっと大事にされてきたのがわかります。

お昼の料理はコースが3種類。
いちばん高い3,000円のコースを頼むと、
前菜、メイン、パン、デザートに、小ぶりのカラフェにたっぷり入ったワインがつきます。
2人で行ったので、それぞれ別の前菜とメインを頼みました。
前菜のアンキモのコンフィが絶品。
赤足エビとホタテのテリーヌもすばらしい。
メインには鹿と鴨を。
鹿肉はいままで食べたどこの鹿よりもおいしく、またボリュームもただならない。
デザートはチーズを選ぶこともできますが、
なめらかなことこのうえないカシスのジェラートや、外さっくり、中しっとりのガトーショコラなど、
4種類も盛られたお皿はやはり捨てがたし。

おそらくあの体つきから想像して、小さいものは作れないんじゃないかと思います。
パンだって切り方がでっかいし。
でも、味には繊細な部分もしっかりあって、
映画『DIVA』をかいま感じることができるのです。

近所のおっちゃんとおぼしき人が
ワインをあけながらチーズを召しあがっていたのがええ感じでした。
こんな店が近所にあったら、私も通いたいなぁ。

最近でもっとも幸せな「外でのお昼ごはん」に、
その日1日ほわ~んとした気分になれたのでした。
好きだなぁ、あのシェフ。

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