夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アメリカン・スプレンダー』

2005年02月04日 | 映画(あ行)
『アメリカン・スプレンダー』(原題:American Splendor)
監督:シャリ・スプリンガー・バーマン,ロバート・プルチーニ
出演:ポール・ジアマッティ,ホープ・デイヴィス,ジェームズ・アーバニアク,
   ジュダ・フリードランダー,マディリン・スウィーテン他

病院事務員のさえない男がどうやって有名になることができたか。
オタクに人気のコミック「アメリカン・スプレンダー」の原作者、
ハービー・ピーカーに注目した低予算映画。

オハイオ州、クリーブランド。
病院の書類係のハービー・ピーカーは風采も上がらず、性格も暗い。
ここ一番というときにはいつも声がかすれて出なくなる。
そのせいで、別れ話もろくにできないまま、妻には離縁を言い渡される。

独り身となったハービーの趣味は、ジャズのレコード収集。
買っても買っても気が済まず、買わずにいると不安になる強迫観念症。
掘り出し物を求めては買いあさる。

とあるガレージセールで、コミック作家のロバート・クラムと出会う。
ロバートになんとなく興味を持ったハービーは、
ロバートのもとへ頻繁に通うようになる。

ロバートとつきあううち、日々の出来事をコミックにすることをハービーは思いつく。
自分では絵が描けないので、このアイデアをロバートに話してみると、
当時、すでに売れっ子となっていたロバートは大絶賛。
彼が作画を引き受けてくれることに。
こうして「アメリカン・スプレンダー」が生まれ、巷で大人気となる。

ある日、コミック店を営むジョイスという女性から
ハービーにファンレターが届く。
やがて、気むずかし屋のハービーと変わり者のジョイスとの結婚生活が始まり……。

低予算だけあって、派手さはかけらもなし。
地味におかしく、「ある、ある、そんなこと!」の連続。
ハービーや同僚たち、本人も登場。
それぞれを演じる役者もいて、ときにはコミック中の人物にも台詞を言わせます。
同人物を3人が演じる、こんな方法もあったんだと感心。

ハービーがコミックを考えるきっかけとなったのは、
スーパーのレジで前に並んでいた老婦人。
店員に文句を垂れる姿を見て、口には出さないけど、
オバハンに言うてやりたいこの台詞、それを漫画に。
途中、癌に冒されたハービーは、その闘病生活すらネタにして出版。

「平凡な暮らしこそが複雑」というキャッチコピーどおり、
ふだんの生活こそネタの宝庫だと感じさせてくれます。
退屈だとぼやいていても仕方がない。
なんでもネタにするべし。

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『ぼくセザール 10歳半 1m39cm』

2005年02月01日 | 映画(は行)
『ぼくセザール 10歳半 1m39cm』(原題:Moi Cesar 10ans1/2 1m39)
監督:リシャール・ベリ
出演:ジュール・シトリュク,マリア・ド・メディイルシュ,ジャン=フィリプ・エコフェ,
   ジョゼフィーヌ・ベリ,マボ・クヤテ,アンナ・カリーナ他

パリ、石畳の路地が残るモンマルトル。
セザール・プチは10歳半、身長1m39cm。
大の甘党で、ちょっとポッチャリ系。
パン屋のショーケースに並んだケーキを眺めるのが大好き。

学校では極力控えめに。
目立たないでいるほうが楽。
だけど、転校してきたばかりの美少女サラのことが気になって仕方がない。
サラを振り向かせたいけれど、太めでチビで目立たないセザールには夢の夢。

そんなセザールの親友は、格好よくて、成績優秀、運動も得意なモルガン。
看護婦の母と暮らすモルガンは、なんでもひとりでできる超優等生。
サラとモルガンが仲良く話しているのを見ると、
セザールはいたたまれなくなる。

ある日、会社を営むセザールの父親が警察から事情聴取を受ける。
数日後、「出張だ」と出かける父を見て、
セザールはてっきり刑務所に連れていかれたのだと思う。
それを口にしてしまったために、たちまち学校中の噂に。
一躍悲劇のヒーローとなったセザールに、
あのサラまでもが温かい言葉をかけてくれる。

やがて父親が出張から戻り、セザールの勘違いだと判明。
同級生にはからかわれ、両親や先生からこっぴどく叱られるが、
サラとモルガンだけは優しかった。

親しくなった3人は、モルガンの生き別れた父親を探すため、
ロンドンへ行く計画を立てる。
なんとかお金を工面した3人は……。

日本では10歳で身長1m39cmというと平均ですが、
欧州ではチビの部類なのでしょう。
彼の視点、視界に徹底的にこだわり、
カメラ・ポジションを1m39cmに設定したというところからしておもしろい試み。
セザールのモノローグを織り交ぜて、一貫して彼の視点で語られます。

登場する子役3人がめちゃキュート。
子どもだと自覚しつつ、子ども扱いされたくない、
とても微妙な気持ちが細やかに描かれています。

ファンキーな体育教師や、サラの明るすぎる父親、
ロンドンで3人の救世主になるカフェの女店主など、
魅力的な大人もいっぱい。

セザールのつぶやきはいつもクスッと笑えます。
「デブのぼくには羞恥心がある。
 スタイルのいい人にははじらいがない。
 デブが考えた美点なのかも」
って、いいなぁ。

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