夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『22年目の告白 私が殺人犯です』

2017年06月17日 | 映画(な行)
『22年目の告白 私が殺人犯です』
監督:入江悠
出演:藤原竜也,伊藤英明,夏帆,野村周平,石橋杏奈,竜星涼,
   早乙女太一,平田満,岩松了,岩城滉一,仲村トオル他

つい最近までは、土曜日にいっぱいお酒を飲んでも、
日曜日の朝に早起きして映画に行くことがさほど難しくはありませんでした。
さすがに京都や神戸まではよう行かんけれど、
―行ったとしても16時に晩ごはんができるように帰らなあかんし(笑)―
なんばや西宮まで行くことは全然大変じゃなかった。

なのにここ数カ月、あきらかにそれが無理になっています。
とにかくしんどくて、ついつい箕面やせいぜい伊丹で手を打ってしまう。
この日も梅田まで行けば8時に上映開始の映画があり、
14時半までに3本ハシゴすることもじゅうぶん可能だったのに挫折。
TOHOシネマズ伊丹で2本観るだけにとどめました。体力がめっちゃ落ちています(泣)。

韓国の作品『殺人の告白』(2012)を入江悠監督がリメイク。
ノベライズされた本は先月末に読みました。
そのとき“ブクログ”にUPしたレビューはこちら

ノベライズなのに、ノベライズの主人公だった女性編集者は映画版にほぼ出番なし。
彼女がいなくても話はじゅうぶん成立するのですが、
読書することが心に与える影響や、ものを書く力が培われた理由については、
映画版ではバッサリ切られてしまったように思えます。
監督は「読書」にはあまり興味がないのかもしれないなぁなんて思ったりもして。

1995(平成7)年。東京で連続絞殺事件が発生、5人の命が奪われる。
担当刑事だった牧村航(伊藤英明)は、その事件で上司の滝幸宏(平田満)を亡くした。
そればかりか、阪神・淡路大震災から逃れてきた妹の里香(石橋杏奈)が
事件後にどこに連れ去られたのか行方不明のまま。
なんとか犯人を捕まえるべく奔走するが、未解決のまま時効を迎える
里香と一緒に上京した婚約者の小野寺拓巳(野村周平)の姿が痛々しい。

ある日、牧村と後輩刑事の春日部信司(竜星涼)がチンピラ(早乙女太一)を追跡中、
一大事が起きたので署にすぐに戻るようにと連絡が入る。
テレビに映し出されたワイドショーを見て愕然。
曾根崎雅人(藤原竜也)という男が、自分があの事件の犯人だと名乗り出て、
その手記を告白本として出版するというのだ。
美しい殺人犯は人気者となり、本は瞬く間にベストセラーに。

事件の遺族である岸美晴(夏帆)は、犯人のことが憎くてたまらない。
書店員ゆえ、毎日仕事で目にせざるを得ない告白本に苦しむ。
愛人を殺されたヤクザの組長・橘大祐(岩城滉一)も同じ思いを持ち、
曾根崎によるサイン会の会場に鉄砲玉を送り込む。
妻を殺された医者・山縣明寛(岩松了)のもとへは、
曾根崎がマスコミを引き連れてぬけぬけと謝罪に。
ちょうど山縣を訪ねて居合わせた牧村ともみ合いになる。

告白本の出版部数にこだわる曾根崎は、テレビ出演を強く希望。
さすがに殺人犯を出演させるわけにはいかないと各局が尻込みするなか、
人気ジャーナリストでキャスターを務める仙堂俊雄(仲村トオル)から
ぜひ自分の番組に生出演してほしいと要請があるのだが……。

ご希望の方には全部話してしまいたい気もしますが(笑)、
これはネタバレするわけにはいかないでしょう。

仲村トオルの演技が少々大げさなのが気になります。
しかしノベライズの中でも仙堂はそんなふうでしたから、まぁええか。
個人的にはいつもどこかおちゃらけた印象の岩松了がとても真面目。
こんな役もさまになっているのが意外でした。すみません。(^^;
岩城滉一の滑舌が悪くなっています。長生きしてくださいよ!

ノベライズは、映像化向きの感動あおり目のラストだったのに、
それは監督好みではなかったと見えて、それよりはあっさり目、
しかもエンドロールにさらなるオチが挟み込まれています。
ほろりと来たまま終わりたい人にはノベライズを読むことをお勧めします。

普通に面白いですよん。

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『ちょっと今から仕事やめてくる』

2017年06月15日 | 映画(た行)
『ちょっと今から仕事やめてくる』
監督:成島出
出演:福士蒼汰,工藤阿須加,黒木華,森口瑤子,池田成志,小池栄子,吉田鋼太郎他

TOHOシネマズ伊丹にて2本ハシゴの2本目。
前述の『花戦さ』の次に。

どんな題材であっても、わかりやすくエンターテインメント性の高い作品に仕上げるのが得意な成島出監督。
原作は北川恵海の同名ベストセラー小説。
最近できるだけ映画を観る前に原作を読むように心がけてきましたが、これは未読。
いま頁数を確かめたら258頁。薄い!これはすぐ読めそうだから買わなくちゃ。

ちなみに、私が「普通」だと感じる頁数は320頁前後。
晩ごはん後に読む時間が2日間あれば読めるかなという頁数です。
400頁だとまぁまぁ分厚い。700頁だったりすると「アンタは京極夏彦か」
200頁以下だと極薄で、数時間で読める。だから258頁もお手頃です。
どうでもいい話をすみません。(^^;

就活に失敗した青山隆(工藤阿須加)は、とにかく正社員で就職したくて、
いわゆるブラック企業に入社する。
有休を取ることは許されず、ミスをすれば給料から引かれる。
上司の山上守(吉田鋼太郎)からは罵倒され、足蹴にされることも日常的。
そんな会社でもしがみついているよりほかはない。

一人暮らしのマンションの部屋はまるでゴミ屋敷。
田舎の両親(池田成志森口瑤子)から送られてくる野菜や果物も腐らせたまま。
眠りたいのに眠れず、心身共に疲労が積み上げられてゆく。

ある晩、意識が朦朧とするなか、駅のホームから飛び込もうとする。
電車が通る寸前、隆を後ろから引き倒した男がいた。

男はヤマモト(福士蒼汰)と名乗り、親しげに隆に微笑みかける。
小学校3年生の途中でヤマモトが引っ越すまで隆と同級生だったというが、
隆はどうしても思い出せないまま、ヤマモトに強引に誘われて飲みに。

陽気なヤマモトと話すうち、隆は明るさを少し取り戻す。
営業の極意などもヤマモトから教わり、連絡先を交換して解散。
ヤマモトの教えにならって営業先に行き、顧客獲得に成功する。

ところが、隆の発注ミスが発覚。
隆は担当から外され、営業成績トップの五十嵐美紀(黒木華)が引き継ぐことに。
山上からひどいパワハラを受けている隆に、
ヤマモトは仕事を辞めるあるいは変えることを勧めるが、
隆は言う、「そんなに簡単には辞められないよ」。

じゃあ、おまえにとって仕事を辞めるより簡単なことって何?
そうヤマモトは問いかけるのだが……。

ヤマモトについて調べてみれば、数年前に自殺したという記事が出てきて、
俺の目の前にいるこいつはいったい誰なんだと、隆がとまどうという過程があります。

さもありなんな展開で、特にラストは海外ロケのありがちなパターン。
それでもずいぶん泣きました。
だいたい泣かされるんですよねぇ、成島監督には。

お人好しすぎる隆に時折イライラ。
だけど、追い詰められた人間はこんなふうに思うものかもしれません。
これに共感したからって、仕事を簡単に辞めていいことにはならないと思うけど、
だけどこんな人間の尊厳を無視した会社は辞めるべき。

希望はなくなったりしない。見えなくなることがあるだけ。
一瞬見えなくなっても、またしっかりと見ることができますように。

ところで本作でいちばん驚いたのは、福士くんの関西弁の完璧さ。
『セトウツミ』(2016)のときの池松くんは、がんばって喋っている感満載で、
ところどころイントネーションがおかしいけど
ケナゲだからまぁ許そうみたいな感じでしたが(笑)、
福士くんはなんで関西人でないのにこんなにちゃんと喋れる!?とビックリ。
『後妻妻の女』(2016)の大竹しのぶよりずっと上手です。スバラシイ。

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『花戦さ』

2017年06月13日 | 映画(は行)
『花戦さ』
監督:篠原哲雄
出演:野村萬斎,市川猿之助,中井貴一,佐々木蔵之介,佐藤浩市,
   高橋克実,山内圭哉,和田正人,森川葵,吉田栄作,竹下景子他

日曜日にTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴの1本目。

原作は、戦国時代に実在した花僧・池坊専好を主人公にした時代小説『花いくさ』。
監督は『地下鉄(メトロ)に乗って』(2006)や『起終点駅 ターミナル』(2015)の篠原哲雄

頂法寺(通称=六角堂)の変わり者の花僧・池坊専好(野村萬斎)。
織田信長(中井貴一)の前でいけばなを披露することになり、
もしもお眼鏡に適わなければ斬首もあるところ、みごと気に入られる。
それを目の前で見ていたのが千利休(佐藤浩市)と豊臣秀吉(市川猿之助)。

十数年後、信長は本能寺の変ですでに他界。
秀吉が天下人として世に君臨し、利休はその茶頭に。
六角堂の執行(しぎょう)(諸務を取り扱う僧の長)となっていた専好は、
多忙ゆえ楽しんで花をいけることがなかなかできず、悩んでいた。

そんな折り、幼なじみの吉右衛門(高橋克実)から店頭に飾る花を頼まれ、
久しぶりにいけばなを楽しむ。通りすがりにその花を見たのが利休。
利休はさっそく専好を茶室に招待する。
以降、花と茶というちがいはあれど、親交を深める専好と利休。

一方、秀吉はわがままを言いたい放題。
金の茶室をつくるように命じられた利休は、断りはできなかったものの、
庶民を招いて野点(のだて)を企画。
金の茶室では秀吉本人が茶を点ててくれるのだという。

最初のうちはそれが評判となり、庶民が行列をなすが、
専好がいけた花で飾られた木の下、利休が茶を点てはじめたところ、
誰も秀吉の茶室に見向きもしなくなる。
秀吉は利休に怒りの矛先を向けるのだが……。

そのほかのキャストは、前田利家役に佐々木蔵之介、石田三成役に吉田栄作
河原に倒れていた少女おれん役に森川葵、その葵を預かる浄椿尼役に竹下景子

花をもって暴君の心を変えられるか。
感動的ではあるのですが、気になるところいろいろ。

実在の人物なので、これは本当にそうだったのでしょうが、
専好は人の顔と名前が覚えられません。
病としては「相貌失認」という名前があるそうです。
専好の症状が病として認識されるぐらいのものだったのかどうかは知りません。
この描き方がものすごく微妙で、本作に果たしてそれが必要だったかどうか。

また、秀吉の描き方がアンマリ。
これでは傍若無人なだけのようで、もうちょっと名将としての敬意を払ってもよかったのでは。

いちばんびっくりしたのは、終盤の読経のさいの野村萬斎の声の良さ。
こんな声でお経を読まれたら、みんな惚れてしまうでしょうね(笑)。

万人受けはすると思います。

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『猫忍』

2017年06月11日 | 映画(な行)
『猫忍』
監督:渡辺武
出演:大野拓朗,佐藤江梨子,藤本泉,渋川清彦,鈴木福,
   ふせえり,永澤俊矢,柄本明,麿赤兒,船越英一郎他

『LOGAN/ローガン』を観た翌日、有休を取って夙川でランチ
その前に観られそうな時間帯だったのが本作。
上映終了間近で観られないかと思っていた1本だったので嬉しい。

知りませんでした、「東名阪ネット6」と「5いっしょ3ちゃんねる」。
どちらも全国独立放送協議会の加盟局による共同制作機構。
阪神ファンならばなくなると困るサンテレビも前者の参加局だそうで。

で、本作はその両者で放映されていたTVドラマの劇場版。
猫好きにはたまらんでしょう。

霧生の里に生まれ育った忍者・久世陽炎太(大野拓朗)。
幼き日の陽炎太(鈴木福)の目の前で、父親の久世剣山(船越英一郎)が消える。
陽炎太は父親が「変化(へんげ)の術」を使って猫に化けたにちがいないと考える。

十数年が経ち、抜け忍(所属する集団を脱退した忍者)となった陽炎太は、
たまたま見かけた猫に父親の面影を感じ取り、これは父親だと確信。
その猫に「父上」と名付けて片時も離れぬようになる。

一方、霧生の当主・桂木(麿赤兒)は、
陽炎太の幼なじみの忍者・燕(藤本泉)を呼びつけると、
昔、剣山によって秘伝の巻物が奪われたことを明かす。
剣山が巻物に書かれた秘術を使えば、何が起こるかわからない。
陽炎太を捕らえて剣山の居場所を突き止めるよう、燕に言い渡す。

桂木の命令は燕以外の者にも下され、
陽炎太は青目(渋川清彦)が率いる忍者一行から追われ、なんとか逃げおおせる。
ところが、身を寄せた宿には、仲居になりすました女忍者・紅葉(佐藤江梨子)が。
紅葉は陽炎太から剣山の居場所を聞き出すため、猫好きを装って近づくのだが……

ローカルなTVドラマだと思っていたら、なかなかに豪勢なキャスト。
笑ったのは麿赤兒。この人、後ろから見ても麿赤兒だとすぐにわかりますね(笑)。
猫グッズを売る店「猫見屋」のうさんくさい店主役に柄本明
紅葉が勤める旅館の仲居役にふせえり、剣山の級友役には永澤俊矢

ぼてっとしていて、美しいとはいえない猫なのに、可愛い。
いろいろと合成っぽかった『メン・イン・キャット』(2016)と比較して、
猫の動きが普通なのも嬉しいです。

スベリ気味のギャグは気になるけれど、笑えないこともない。
オッサンたちが頑張って笑わそうとしてくれているのもなんだかケナゲで、
好感度は高い作品です。猫好きならば観て損はありません。

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『LOGAN/ローガン』

2017年06月09日 | 映画(ら行)
『LOGAN/ローガン』(原題:Logan)
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン,パトリック・スチュワート,リチャード・E・グラント,
   ボイド・ホルブルック,スティーヴン・マーチャント,ダフネ・キーン他

ちょうどファーストデーにダンナが飲み会。
本作公開もこの日だったから、チャンスを逃してなるものかと、
仕事帰りに109シネマズ箕面にて。

“X-MEN”シリーズでヒュー・ジャックマンが17年間演じてきたウルヴァリン。
もうどないしても続編は無理なラストだから、「完結編」に偽りなし。

ウルヴァリンことローガンは、指先に出し入れ可能な鋭い爪を持つミュータント
高い治癒能力も持ち、自分が負ったどんな傷も治すことができる。

しかし、新たなミュータントが生まれなくなり、絶滅の危機に。
かつてミュータント専門学校を率いていたプロフェッサーXことチャールズは
もはや自分の能力を制御することが困難に。
そのチャールズを匿うローガンも治癒能力が衰えてヨレヨレ。
非ミュータントだが特殊能力を持つキャリバンの手を借り、チャールズを介護している。

素性を隠してタクシー運転手としてひっそり暮らすローガンのもとへ、
どこで聞いたか元看護師のガブリエラという女性が会いにやってくる。
彼女は11歳の少女ローラをノースダコタ州の「エデン」まで送り届けてほしいと言う。
前後してピアースという男がガブリエラとローラの所在を尋ねてくる。

ガブリエラの頼みなど断るつもりだったローガンだが、
嫌な予感にふたりを迎えに行ってみると、ガブリエラは何者かに殺害されていた。
やむをえずローガンはローラとチャールズを連れ、逃避行を始めるのだが……。

全編、絶望感と悲哀に満ちています。
マーベル・コミックが誇るヒーローが終始ズタぼろ。
ズタぼろなのにローラのために力を振り絞るローガン。
らしくないヒーローの姿が人間的で涙を誘います。

序盤はいっさい台詞なしのローラ。
目の動きと表情による演技がお見事です。
最後は彼女に泣かされる。

『X-MEN』や『ウルヴァリン』未見の人でもおそらく話についていけます。
中年層以上がターゲットとおぼしき大人のヒーローもの。
泣いてください。

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