「キリマンジャロの雪」チラシ
岩波ホールで上映中の「キリマンジャロの雪」を夫と見に行ってきました。
ストーリー:
主人公ミシェルが働く会社がリストラを余儀なくされ、労使間の協議で20名の退職者をクジで選ぶことになる。クジで選ばれた中に、組合委員長のミシェルも入っていた。委員長という地位から考えれば、自分はクジの対象から外すこともできたのに、ミシェルは自らの矜持としてそれをしなかったのだ。
「ヒーローを夫に持つと大変だわ」と言いつつそんな夫の生き方を理解し受け入れる妻。仕事ができない物足りなさと、愛する家族に囲まれて過ごす幸せに、複雑な思いを抱くミシェル。
そんなある日、夫婦の結婚30周年を祝って元同僚と家族がパーティを開いてくれる。「キリマンジャロの雪」の歌と共に家族から夫妻に贈られたのは、キリマンジャロ行きのチケットと旅行のための費用だった。
ところが、ある晩ミシェル夫婦と妻マリ=クレールの妹夫婦が一緒にトランプをして過ごしている時に、強盗が押し入り4人を縛り上げて、キリマンジャロ行きのチケットや現金、4人が持っているクレジット・カードなど、全てを奪っていく。その犯人は、実は、ミシェルと共にリストラされた若い労働者だったのだ。
襲われた4人は心に深い傷を負うが、一方、幼い2人の弟を養う青年が生活の糧を失ったことで犯行に及んだことを知り、ミシェルはショックを受け、何とか彼らを援助する方法はないかと考える。しかし、先に行動を起していたのは妻だった。
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http://www.kilimanjaronoyuki.jp/index.html
労働者の権利を守ることに人生を捧げてきたミシェルとその妻の会話の中に時々「ジョレス」の名前が出てきて、彼らの根っからの温かさ、人に対する思いやりは、フランスの穏健な社会主義リーダー、あの(懐かしの)ジャン・ジョレスの系譜を引き継いでいることを思わせます。
思えば、今年のフランス大統領選で社会党のオランド氏が勝利し、投票に託した国民の期待に応えてしっかり歩みを始めているのも、ジャン・ジョレスに対するフランス国民の愛着、ジャン・ジョレスに象徴される「社会主義」への信頼の大きさが裏づけとなっているような気がします。日本とは何と違うこと!羨ましい~。
閑話休題。マルセイユのきらめく海と白い建物の景色は美しく、人々の姿は繊細で温かく、エンドロールで流れる「キリマンジャロの雪」の歌は切なく優しく、とても感動的で幸せな後味の残る、心地よい映画でした。(三女)