<7日目(最終日):イスタンブール⇒成田>
本来空港に向かうまでの午前中はフリータイムの予定が、前日消化できなかったグランドバザール見物に費やされることになりました。
オスマン帝国初期に原型が造られ、イスタンブールの商業の中心となってきたグランドバザールも、今はもっぱら観光客用の土産物を並べた店ばかりとか。後でクレームがつくことがあるようで“場所代が非常に高いため商品の値段が割高になっていたり、中には粗悪品も混じっていることがある”という内容のことを婉曲に言って、「だから買物をするのならばそれを承知の上で、値切ることを含めてここで買物をすること自体を楽しんで下さい」と現地ガイドさん。
また、拡張を続けた結果、今は3万㎡の広さに4千軒以上の店が軒を並べ、22もある出口につながる通路は入り組んでいて迷路のよう。“出口に名前がついているので写真を撮っておく”など迷子にならない方法を念入りに教わりましたが・・・、それでも迷子になりかけました^^;。
店の人も歩いている人も殆どが普通の洋服姿で、観光客が少ない時期のせいもあるのか、グランドバザールが、勝手にイメージしていたようなエキゾチックで混沌とした世界で無くて、ちょっと拍子抜けでした。(帰国してから調べたところ、エジプシャンバザールや問屋街の方がイメージ的に近かったようです。)
予定の1時間で、私は水差しとクッションカバーを、友人達は小皿や石鹸、お菓子などをここまでの経験を活かして値切りに値切って購入しました。友人達が購入したものは他でも見てきたので相場がある程度分かっていたのですが、特に水差しは品質も適正価格も分からないため、自分にとっての商品の価値に見合う金額になったところで手を打ちました。時間に追われながらも結構良い値段まで下げられたと思うのですが、店主が機嫌よく送り出してくれたところをみると、多分まだまだ甘かったということなのでしょうね。
昨年6月に大規模な反政府デモの中心となったタクシム広場。中央にアタチュルクの像などが飾られている共和国記念碑の周りを“Police”のベストを着た私服警官が囲んで、私達のように明らかな観光客も含め、一般人の立ち入りを禁止していました。数日前に小規模なデモがあったので警戒していたのでしょうか。ガイドさんがこの時は少し緊張して、そそくさとその場を離れたのが印象的でした。
<沿道の風景>
今回バスでの移動は多くはなかったのですが、それでも4日目はパムッカレからコンヤへ6時間、コンヤからカッパドキアまで3時間と長時間乗り続けました。バスでの長時間移動は疲れますがその分沿道の景色を見る楽しみがあって、特に初めての国では嫌いではありません。
今回沿道でもっとも目についたのは、まずモスクのある村の風景。ヨーロッパを旅するとよく目にする教会の塔の代わりに、モスクのミナレットが村に聳えているという趣きです。次は、建物の屋上についている太陽熱温水器。パネル型の集熱器と貯水タンクが一対になっているもので、あらゆる地域の建物の屋上で本当によく目にしました。私は今まで見た覚えが無いのですが、日本でも70年代の石油ショック以降に注目された時期があり、今また「太陽エネルギー利用拡大」の一環として脚光を浴びているそうです。(環境ビジネスオンライン)
トルコは食料自給率が90%以上で、果物や野菜の殆ど全てが国内産。中部地域は小麦の一大産地で、オリーブ畑、ザクロ畑地帯を過ぎると平原地帯がはるか彼方まで続いています。肉は羊が主で、所々に羊の群れを見かけました。魚も特に地中海沿岸ではよくとれるとのことで、イスタンブールの鯖サンドは有名ですが、レストランでドンとでてきた30センチもありそうな魚の丸焼きは迫力がありました。
食べ物に関して豊かな国という印象ですが、産業としての農業の占める割合は8%(2012年トルコ国家統計局)で、農民は貧しく下に見られているというのが、ガイドさんの口ぶりから感じられました。ちなみにサービス業は57.7%で、観光の占める割合が大きいのでしょうか。
<食事>
文句無く美味しかったのはチェリージュースとザクロジュース。チェリージュースは機内やホテル、レストランに必ず置いてある最もポピュラーなジュースで、甘みも酸味もすっきりとして美味。ザクロジュースは町でよく見かけるジュースコーナーで出してくれるものが新鮮で意外なほど美味しく、小さい頃実家にあったザクロの木の実が種ばかりで食べにくくて、食べるよりも見て楽しむものと思っていただけに、絞ってジュースとして飲めばよかったと今更ながらに悔やんでいます。
パンやヨーグルトも種類が多くて美味しく、バイキング形式のホテルの朝食はいずれも文句無しでした。(ホテルが全てデラックスクラスだったせいでしょうか?)
でも肝心の昼、夜の食事となるとやっぱり団体用の残念なもの。ヤフラック・ドルマス(ブドウの葉のピラフ詰め)、ピデ(ピザ)、チョップシシ(小さな羊肉の串焼き)などはそれなりに美味しかったのですが、全体にトルコ料理の実力はこんなものではないはずと思われて。
ツアーで海外を旅行すると常に感じるのが食事の貧しさです。勿論いつも格安ツアーばかりなので文句をいうなと言われればそれまでですが、食事は旅行の楽しみの大きな要素。特に今回は世界3大料理の1つといわれるトルコ料理だったので、例えばツアーの料金を1万円高くしてでも、もうちょっと美味しいものを食べさせてもらいたかったというのが偽らぬ感想です。
<買物>
こんなに買物をした旅行は初めて。トルコには名産品が名前を上げるときりがないほどあって、その中にはナッツ、ドライフルーツ、香辛料、蜂蜜、化粧品、陶器など気軽に買える値段のものが沢山。そこにもってきて売り手の日本語の上手さと売り込みの熱心さは、今まで少なからず海外を旅行して来た経験に照らしてダントツです。
トルコリラ、円、ドル、ユーロ何でもありで、ぐんぐん押してきます。観光地では「3個千円」「5個買うと1個オマケね」なんて当たり前。
特に日本円の場合は両替がしにくい小銭は避けたいらしく、何でも量を増やすことで千円にもっていこうとします。有名な魔よけの目玉「ナザール・ボンジュウ」などは余りにも大量の束をじゃらじゃらさせて「全部で千円」というので思わず笑ってしまいました。添乗員さんが「千円札を沢山用意しておくと良いですよ」と言っていた意味が良くわかりました。
ツアーに組み込まれている絨毯屋、宝石店(トルコ石)、陶器屋、皮専門店のような高価な商品を扱う店には、日本語が達者な店員が何人もいて、ちょっと興味を示そうものなら食いついてきて離してくれません。しかも値段交渉の最終段階には “社長”まで出てきたりして。その社長の肩を抱くようにして甘言をつくす優雅な強引さは苦笑してしまう程でした。
私も始めは冷やかしのつもりで見ていたのですが、百戦錬磨の彼らに勝てるわけがありません。分かっているのにいつの間にか相手のペースにはまって、衝動買いにしては高い買物をしていました。すごく気に入っているので買ったことを後悔はしていませんが、買う気がないのなら冷やかしの値段交渉はここでは止めたほうが賢明だとよくわかりました。
半値以下になったもの、うまく値切りそこなったものなど様々だし、幾らが適正価格かなんて結局分からないのですが、全て納得済みでの買物。買物を終えての感想は「あ~面白かった!」でした。
<ガイドさんから聞いたトルコ事情>
今回現地ガイドを務めてくれたOさんはとても話し好き。観光地での詳しい説明は勿論のこと、移動中のバスの中で、トルコに対する愛情とプライド、そして多少の忸怩たる思いを込めて、トルコについていろいろと熱く話してくれました。以下はその内の2点です。(ご存知の方も多いと思いますが)
1.親日的なトルコ人
トルコの人々は親日的だという話をよく聞きます。観光地や土産物屋では片言の日本語で親しげによってくるし・・・というのはともかく、実際この旅行中、欧米を旅行する時に稀に感じてしまう差別感などは全く感じず、とても心地よく違和感なく過ごすことができました。
ガイドさんが説明してくれたその理由とは、「明治時代に紀伊半島沖で難破したトルコの軍艦エルトゥール号の乗組員を村民が助け、更に“山田寅次郎”が義援金を集めてトルコに渡り、20年間の滞在期間中に両国間の友好関係を築いたこと」で、エルトゥール号の話はトルコでは小学校の教科書にも乗っているほど有名なのだそうです。
「だからトルコの人は日本人が大好きなんです。でもそれに対して、日本の方々のトルコへの関心は・・・」ちょっとつらいものがありました。
2.EU加盟
アタチュルクがトルコ共和国設立時に政教分離政策をとり、表記をアルファベットに変更するなど様々な面で西洋化を推し進めてきましたが、1987年から申請しているEU加盟が未だに実現していないということを憂いて、「侵略された歴史が残る上に宗教が異なるヨーロッパでは、トルコをヨーロッパの一員としてはなかなか受入れ難いのでしょう」だから「EU加盟は無理だと思うので、独自に経済発展を目指すべきです」。
学校教育のもたらす影響の大きさ、歴史に左右される国家間のありよう。普遍的な課題なのですね。
ちなみに現在トルコでは、アタチュルク空港を拡張してヨーロッパのハブ空港を目指すなど、「多角的な平和外交を基調としながら、2023年(共和国建国100周年)には世界第10位の経済大国をめざしている」(外務省の基礎データから)とのことです。
イスタンブールに行くことがメインの目的だった今回の旅行。ついでのつもりで巡ったパムッカレとカッパドキアの想像を超える自然の造形や、エフェソス遺跡の長大な歴史の跡を間近に見ることができ、東西文化の融合地域という以外にもトルコがいろいろな表情を持った魅力溢れる国だということを実感した旅となりました。ただ、肝心のイスタンブールに関してはどうしても物足り無くて、次は数日滞在する形で再訪したいと友人と話しています。果たして次がありますかどうか。(四女)