昨日の午前中、上野の東京都美術館で開催中の「デ・キリコ展」を、夫と観に行ってきました。
『イタリア人の両親のもとギリシャで生を受けたジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。1910年頃から、簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながらも、歪んだ遠近法、脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって、日常の奥に潜む非日常を表した絵画を描き始めます。後に「形而上絵画」と名付けた1910年代の作品は、サルバドール・ダリやルネ・マグリットといったシュルレアリスムの画家をはじめ、数多くの芸術家に衝撃を与えました。1919年以降は伝統的な絵画技法に興味を抱くようになり、古典絵画の様式へと回帰していきます。それと同時に以前の形而上絵画の題材を取り上げた作品も頻繁に制作するなど、90歳で亡くなるまで創作を続けました。・・・』(『デ・キリコ展』公式サイトより)
作品は、
「1.自画像・肖像画」
「2.形而上絵画(2-1イタリア広場・2-2形而上的室内・2-3マヌカン」
「3.1920年代の展開」
「4.伝統的な絵画への回帰ー「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ」
「5.新形而上絵画」の5つのセクションと、
「挿絵(神秘的な水浴」「彫刻」「舞台美術」の3つのトピックに分けて展示されています。
左は<バラ色の塔のあるイタリア広場(1934)>(セクション2-1)、
右は<イタリア広場(詩人の記念碑)(1969)>(セクション2-1)
大胆な構図の奥に、街の家並みや人や銅像が小さく描き込まれていて、発見の楽しさのある、見飽きることのない作品群でした。
左は<横向きの彫像のある形而上的室内(1962)>(セクション2-2)、
右は<孤独のハーモニー(1976)>(セクション2-2)
複雑な構成とクッキリと明快な色合いで、何とも不思議な魅力を醸し出しています。
<詩人と画家(1975)>(セクション2-3)
キリコの代表的モチーフとされる「マヌカンヌ像」は不穏さ、冷たさが感じられて、元々苦手だったのですが、第一次世界大戦に遭遇したキリコが「理性的な意識を奪われた人間」を表そうと描き始めたと知って、成程!と納得させられました。
1910年代から1970年代まで、途中でいくつかのバリエーションを交えながらも、明確な個性を保って描き続けたキリコのエネルギーは、力強く圧倒的で、今回こうした作品たちに直接接することができて本当に良かった!との感想を持ちました。
昨日は晴れて青空も見え、湿度もそれほど高くなく、上野公園は穏やかな休日を楽しむ人たちでいっぱいでした。(三女)