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さっきまで聴いていたのは
グルダとアバドが共演したモーツァルトの最後のピアノコンチェルトだった。
その音楽に半身をひたしながら
ぼくはその日買ったばかりの文庫本の最初の数ページを読んでいた。
音楽が終わるまえに寝てしまったけれど。
モーツァルトの音楽は
こころの空虚にしみてくる。
上質なうま酒のように。
砂漠に年一回だけ降って
たちまちあたりを緑に変えてしまう雨のように。
闇夜のなかにぽつんと灯った 遠い山際の明りのように。
聴きたくて聴くこともあるし
大きな書店の天井から聞こえてくることもある。
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県立の「ばら園」が近いせもあって、このところ、薔薇にはまっている。
ほとんどの薔薇は、人間が作り出した人工的な花。
ばら園の花の根元付近には、プレートが立てられていて、
薔薇の名前とならび、制作者の名前、作出年代が必ず書かれている。
それを手がかりに、苗木などを買うのである。
園内では、切り花、苗木の展示即売会などが、同時開催され、訪れた人びとが買っていく。
薔薇にはいい値段がつくから、ビニール、またはガラスのハウスでこれを栽培する農家がある。
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