二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

電線に止まっているもの ほか短詩3編(ポエムNO.3-73)

2020年06月09日 | 俳句・短歌・詩集


1 電線に止まっているもの

たまたま乗り合わせた
この世のバスからいずれ降りなければならない。
おや キジバトが鳴いている。
あの鳩の隣り
電線になにかが止まって
こっちを見ている。

この世から退散してまもない
何者かの魂ででもあるかのように。



2 明日の風

釣れたばかりの小魚のように
ことばがピチピチ跳ねまわる。

時代の転換期といわれる時期をかいくぐり
かいくぐりしているあいだに

それらのことばはぐったりして
ほとんど死にかけている。

夢とか未来とか金メダルとか・・・えーとえーと
少年時代には活きのよいことばがたくさんあった。

海にもどしたとしても
ことばは生き返らない。

真っ白いYシャツや生まれながらの黒髪も
この国ではてんではやらなくなった。

明日は明日の風が吹くというけれど
明日の風はどんな風?



3 漫画の登場人物

黄色信号が点滅しているね。
危険がせまっているのだ。
ウルトラマンのカラータイマーみたいにピコピコと
漫画チックな危険信号。

あの人もこの人も
漫画の登場人物みたい。
スピーチバルーンに書き込まれたセリフを
読みあって苦笑いしている お互いに。

池下くんだの川島さんだの野田ちゃんだの。
皆さん漫画のキャラほどの存在感もないなあ。
原作者はどこへいったのだ。
責任者 出てこーい!



4 置いてきぼり

世界はあなたを待ってはいない。
ぼくを 待ってはいない。
いつだって 置いてきぼり。
「普通に 快適に暮らしている」と錯覚するのは
そう感じる者の自由だけど。

世界はあなたやぼくを置いてきぼりにしたまま
ドンドコさきへ さきへすすんでいく。
急行列車のようだったり
特急列車のようだったり。
世界は「目の前を通り過ぎるもの」でできている。
だから置いてきぼりなのさ。

あなたやわたしという荷物の引き取り手はいない。

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