
1 電線に止まっているもの
たまたま乗り合わせた
この世のバスからいずれ降りなければならない。
おや キジバトが鳴いている。
あの鳩の隣り
電線になにかが止まって
こっちを見ている。
この世から退散してまもない
何者かの魂ででもあるかのように。
2 明日の風
釣れたばかりの小魚のように
ことばがピチピチ跳ねまわる。
時代の転換期といわれる時期をかいくぐり
かいくぐりしているあいだに
それらのことばはぐったりして
ほとんど死にかけている。
夢とか未来とか金メダルとか・・・えーとえーと
少年時代には活きのよいことばがたくさんあった。
海にもどしたとしても
ことばは生き返らない。
真っ白いYシャツや生まれながらの黒髪も
この国ではてんではやらなくなった。
明日は明日の風が吹くというけれど
明日の風はどんな風?
3 漫画の登場人物
黄色信号が点滅しているね。
危険がせまっているのだ。
ウルトラマンのカラータイマーみたいにピコピコと
漫画チックな危険信号。
あの人もこの人も
漫画の登場人物みたい。
スピーチバルーンに書き込まれたセリフを
読みあって苦笑いしている お互いに。
池下くんだの川島さんだの野田ちゃんだの。
皆さん漫画のキャラほどの存在感もないなあ。
原作者はどこへいったのだ。
責任者 出てこーい!
4 置いてきぼり
世界はあなたを待ってはいない。
ぼくを 待ってはいない。
いつだって 置いてきぼり。
「普通に 快適に暮らしている」と錯覚するのは
そう感じる者の自由だけど。
世界はあなたやぼくを置いてきぼりにしたまま
ドンドコさきへ さきへすすんでいく。
急行列車のようだったり
特急列車のようだったり。
世界は「目の前を通り過ぎるもの」でできている。
だから置いてきぼりなのさ。
あなたやわたしという荷物の引き取り手はいない。