二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

青空のかけら ほか3編の短詩(ポエムNO.3-58)

2020年05月10日 | 俳句・短歌・詩集
   (2014年10月撮影 前橋市)



1 青空のかけら

友達が突然涙ぐむ。
「青空のかけらが目に入ってしまってね」
そういいわけし 足早に横断歩道を渡っていった。
「ああ そういうこともあるんだね」
返事をしそびれ さよならもいわなかった。

春風のピアニシモ。
それに乗っていってしまった
タンポポの綿毛みたいに。
いっしょに飛び立てばよかった
この地球の外側へ。



2 哲学者

哲学者がくしゃみする。
唾が飛び散る ことばじゃなくて。

その唾を集めれば本ができるだろう。
本人以外には読むことができない本が。



3 集まってきたもの

グランドのはずれ
ひとりで弾んでいるテニスボール。

利根川の中洲
黄色い菜の花の絵本。

教会の壊れかけた椅子の上
ガタゴトうるさい ガラスでできた鳩の羽。

柱時計の裏側で忘れられた
吹くことができないサックス 四分音符そっくりの。

外出禁止でヒマしていたら 耳のうしろに
そんなへんなものばかり集まってきた。



4 朔太郎さん

朔太郎さんが文庫本の中で
おしっこをし
そのまま黙って書棚の向こうへいってしまう。

おっと それっきり姿を見かけない。
もう半世紀以上たつというのに。
お訊きしたいことがあったのだ。

亀や蛸と友達づきあいしていたようだけど
話しかけたら返事をしてくれたのかな?
たとえば詩の どこかの一行で。

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